ていねいな老後/やさしさと欺瞞の手招き
「ねぇ。そろそろお義母さんのこと、考えたら?」
「うーん」
「この前、言ったときも足腰が弱ってきたといっていたし、一人だと暮らすのも大変そうよ」
「そうだな。そろそろ提案してもいいかもな」
夫婦で話し合い、週末に実家に訪れた。
「母さん、どうかな?」
「そうねぇ」
「親父も先にいっているし、一人だとなにかと大変じゃないか?」
「私は大丈夫よ」
「そうはいっても結構心配なんだよ。もういい年だしさ」
「心配してくれるの?」
「そりゃ一人息子だからさ。妻も心配していたよ」
「ありがとう」
「向こうの親御さんはウチより高齢だったからさ。身体も不自由になって、結構最後大変だったらしいからさ。いろいろ心配してくれているんだよ」
「でも、お金もかかるでしょう?」
「多少はね。でも助成金もあるし、俺も出すよ」
「悪いわよ」
「いったろ、一人息子だって。自分もいい年なんだ。親のためにお金を使わせてくれてもいいだろ?」
「・・・そこまでいうなら。ありがとう」
話し合い、翌月にはもう手続きを済ませることができた。
そして、当日。母を施設に送っていった。
「じゃあ、よろしくおねがいします」
「任せてください。お母さんも安心してくださいね」
優しいそうな施設の人が出迎え、施設へ迎えてくれた。
建物の入口には大きく施設名が書かれている。
【○○市立✗✗中央 安楽死センター】