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2022年7月の記事一覧

目

サイの目の夢は サイになる夢
自分がナニモノかもわからず
コロコロ転がる夢の中

サイの目の夢は サイになる夢
カドで立ったらどっちへ行こうか

コロコロ転がる夢の中

サイの目は 何を見る目
サイの目は 明日を見る目
サイの目は 運を天に任せるような
サイの目は 何も気づいてないような

自分がナニモノかもわからず、
コロコロ コロコロ夢の中
コロコロ 夢の中

サイの目の夢は サイになる夢

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みつける。

みつける。

「ミイちゃんはみつけるのがじょうずだね」
未菜子なぜか子供の頃からよくそう言われていた。

父親が結婚指輪をなくした時、ふと頭の中に映像が浮かび、
「お父さんのズボンのポケットにあるよ」
と言い、母親がクローゼットに掛けてあった父親のズボンのポケットの中に手を入れたらそこに指輪はあった。
祖父の入れ歯がなくなった時は
「おじいちゃんの入れ歯、冷凍庫の中で凍ってるよ」
そしてやはりそこからキンキンに

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フレーム

フレーム

何かの気配に見上げた窓の向こうにその子は佇んでいた。白くひかる壁の家で。

同じ町内で同じような年頃に見えるけれど、学校でも公園でも、近所のコンビニでもその子を見たことがなかった。
見かけるのはその窓際だけだった。
さみしげなというふうでもないけれど、笑顔でもなく、ただいつも外を見ていた。
気配に気付いてからはなんとなく気になって、道を通るたびに窓を見上げた。

雨の日は窓際のその子も空を見上げて

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HERE

HERE

「ねぇ美沙ちゃん、みんな元気にしてるかなぁ。今年は何人集まれるかなぁ」

「この歳になると、もういつ誰がいっちゃってもおかしくないよね」
「そうだよなぁ。俺たちもそんな歳になったなぁ」
美人ママ(家族的な意味と職業として)のあとを継いでスナック来夢を切り盛りしている瑠美のところには夜になると誰かしら同級生が来ていた。
「ねぇケンちゃん、そろそろ本当に同窓会しない?」
「そうだなぁ。そのうちそのうち

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目撃

目撃

「見ちゃったよ。見ちゃったんだよ。どうしよう…」

その声にビクッとなってすぐには振り向くことができず、男は二度瞬きをしてからうつむき加減にゆっくりと振り向いた。
携帯電話で誰かと話しながら足早に自分から離れてゆく背中をみつけて後を追った。追跡から逃れるようにスピードを上げてその背中はどんどん小さくなり、人混みに消えていった。
「だめだ。もう終わりだ。僕の人生は。今ここで見られたことをきっと警察に

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窓

何もかもが急にイヤになって私はその部屋を飛び出した。

あんなにお気に入りだった水色のコートも、赤いデッキシューズも蚤の市で一目惚れしたスカーフも、全部、全部どうでもいいものに変わってしまった。

不器用な私の身体の凹凸にすっかり慣らされて、やる気の抜けたブルーデニムにそろそろ二軍落ちするはずだった泥水の滲んだスニーカー。着の身着のままをわざとやってみせたような服装で、そのくせなぜだか右手には小さ

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秘密

秘密

その人と会っていることは秘密だった。

法に触れるだとか、別に何か問題があったわけではないけれど、きっと母はあまりいい顔はしないだろうと判断をして私はずっと秘密にしていた。

電話が二度鳴って切れたらその夜はその人がやってくる合図だった。
私は大袈裟に眠いふりをして早めにベッドに潜り込んだ。うっかり本当に眠ってしまわないように布団をかぶってその中で瞬きもせず家族が寝静まるのを待った。母の足音が家の

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