乙 まみこ

がんばらないごはんと短いはなしとか詩、 私に見えた風景の私訳、 言葉にできない感触をた…

乙 まみこ

がんばらないごはんと短いはなしとか詩、 私に見えた風景の私訳、 言葉にできない感触をたとえる言葉をさがしています。 時々鞄を作ったり、あるだけでうれしくなる本を売ったりしています。 本と鞄のオンラインショップ  https://55moon.base.shop

マガジン

  • 役に立たない野の花ずかん

    恋をしよう!キスをしよう!愛し合おう! さんぽ中に見かけた花についての妄想です。

  • 美味しいおつまみがあれば…

    うっかり美味しいおつまみができた日はニヤニヤしています。

  • レシピとはなし

    食べ物や飲み物と短い話

  • 短いはなし

最近の記事

季節になれば目を覚まし、 あちらにもこちらにも咲くだけの花が 今は無きただ一つの風景を呼び起こす。 どこにでもあるけれど、 そこにしかなかった、風景。

    • 運命の人

      「初めて会った日に背中を見て運命の人だと思った」と言った友達はプロポーズされた直後に別れた。 そりゃね、別れ話が出ていたタイミングで2,30人集まってのクリスマス会で公開プロポーズするなんてね。おい、こら、ちょっと待て、って思うよね。 まったく、惚れっぽい恋愛体質の女子の「運命の人!」なんてのはあてにならないったらありゃしない。 その点私はちょっと顔の造作がいいくらいじゃビビビのアンテナは微動だにしない。 だから一目でうっかり好きになんてたらない。 私にはもっともっと奥の方

      • ずっと

        「あなたの瞳に私が映ってる」 「前にいるからだろ」 「ずっとそうやって私を映しておきたいと思わない?」 「ずっと正面にいたら邪魔だろ」 「そうじゃない…。 ずっとお前の瞳に映っててやろうか」 「なんかどっかの悪魔っぽいな」

        • おしゃれ

          「東京の人はおしゃれだと思うかもしれないけれど、ベージュのコートが流行るとみんなベージュのコートを着てて、グレーが流行れば笑っちゃうくらいにみんなグレーを着てるんだよ。そうじゃないと不安みたい」 と誰かが言っていた。 おしゃれってなんだろな。

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        • 66本
        • 役に立たない野の花ずかん
          21本
        • 美味しいおつまみがあれば…
          19本
        • レシピとはなし
          67本
        • 短いはなし
          117本
        • なんとなく
          1本

        記事

          アール・ブリュット

          たまたまInstagramでみかけて「これは絶対に見ておきたい」と感じた“鶴舞高架下ART ZOO”。 その入り口はアートディレクターの方が手掛けたデザインではあった。 それに惹かれて現地で作品(無人展示のため全て印刷物での展示)を見ていたらいつになく心の奥の方を揺さぶられる感覚を覚えた。 なんだろう…この心に入り込んでくるかたまりは、いったいなんだろうと一枚一枚作品と向かい合った。 どんな描き手がどういう気持ちで描いたのかは実際にはわからないけれど、それぞれの個人的な気持

          アール・ブリュット

          つま先立ち

          好きな理由はまだわからない。 ただ吸い込まれていく感覚に もあもあと浮き立った心が つま先立ちする。

          つま先立ち

          見たいものがあって久しぶりに鶴舞駅へ行った。 中学生の時に彼に連れられて子供ばんどのライブを見るために降りた駅。 会社員だった20代の時には実家から通っていた1年ほどの間、そこは地下鉄へと乗り換える場所だった。 桜の名所でもある鶴舞公園は毎春恒例の会社の花見の場所でもあった。花見の日には午後になると2,3人でひと足先に公園へ行き、ブルーシートを広げみんなのために場所取りをした。 25、6の頃、 「ヨシヒロさんが入院してて多分もう年は越せないだろうって。会いたがってるけどどう

          つい…

          もう、 飽きるほど見てるのに いつだって ついニヤニヤしてしまうの、 なんだろね。

          時間

          つぼみが開く 空から雨が落ちてくる 今鳴いた鳥が飛び立った 次から次へとスピーカーから 音楽が流れ出す 雲が形を変えてゆく 車は瞬間移動 コツコツ地面を蹴って ブーツが移動 止まる事を知らずに 流れ続ける時間のスピードは 思っているよりずっと速い。 こころのスピードはお構い無しに。

          シャガ

          光の下で凛として たたずむ誰かとは違うけれど あの子が夕闇にまぎれる頃、 ほのかに私はひかりを放つ。 家路を急ぐ人たちは 気付きもしないけれど。 いつもここにいて、 ただ宵の風に吹かれて 私は私の春をむかえる4月、 ぬるい風がほほを撫で 明日の方向へ流れていった。 なんで今まで気付かなかったのだろうと驚くほど妖艶な白い花が夕闇の中で青白く光っていました。

          春の夕

          風で前髪がみだれたら気になる。 靴の色は正解だったか気になる。 春に空けたばかりのピアスの穴は まだ少しジンジンするけれど、 うれしいから気にしない。 髪と一緒にゆれる お気に入りのコンディショナーの匂い。 雑貨屋さんで買ったリングに お母さんから借りたネックレス。 きのうまでの自分よりも 少しおとなになったような気分の春。 さぁ、どこへ行こうか…

          春は夕暮れ

          春は夕暮れも。 今の今まで明るかった景色を じわりじわりと夕闇が包んでゆく。 白い花は青白くひかり、 白猫も黒猫も茶トラもキジトラも サバトラもサビもミケも のらりのらりと歩く みんなただの猫になる。 昼間に見えていたものたちは そろりそろりと気配を消して 夜のものたちにバトンを渡す。 ほどよいぬるさの風がほほを さらりと撫でながら過ぎてく 春は夕暮れも、すごくいい。

          春は夕暮れ

          後ろ姿

          「初めて出会った日に後ろ姿を見た時、この人とはずっと一緒にいるような気がした」 出会って1ヶ月後に付き合い始めた彼のことを真波がにこにこしながらそう言った。 次の年のクリスマス会の時に、途中からなにやらそわそわしだした幹事のゆりが大きな花束をこそこそと裏で準備をしていた。 クリスマス会が盛り上がってみんなのお腹がそこそこいっぱいになって食べたり飲んだりのスピードが落ち着いた頃、その花束がひとりの男性に手渡された。 「真波ちゃん、こんな僕だけれど、これからもずっと一緒にいて

          恋とス

          「2年に柴田恭兵さんそっくりな人がいるよ!」 ちび子がそう言った。 みんながアイドルに夢中な頃、私は小学生の時から柴田恭兵さんが大好きだった。 「ほら、あの人!」 ちび子が指を指した先には、絶対に意識してるよね、と思える髪型にキメた1学年上の名前も知らない先輩がいた。 「わぁーあはは」 私は思わず声を出して笑った。 その人は目元といい、体型といい、意識しているであろう髪型といい確かに柴田恭兵さんに似ていた。笑ってしまうくらいに、ちょっと似ていた。 でも、違うのだ。姿形が似て

          石ころ

          石ころがまるいというだけで、 鳥が鳴いたというだけで、 ジュースの王冠の色がきれいというだけで、 庭で拾った小さな卵、 四葉のクローバーをみつけただとか 小さな花が道端に咲いたというだけで、 西に沈む太陽を見て、 東からのぼることを知ったというだけで なんでも楽しかったのは 目に映るものをぜんぶ、 ぜんぶきっと受け取っていたんだよね。

          意味

          それはなぜか、なんて 意味を求めないようなことが 好きだけれど 本当は、 自然物でも人工物でも 誰かや何かにとっては 必ず意味があるんだな 形も色も音も花も雲も みんなみんな 誰かが、誰かのために…