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運命の人

「初めて会った日に背中を見て運命の人だと思った」と言った友達はプロポーズされた直後に別れた。

そりゃね、別れ話が出ていたタイミングで2,30人集まってのクリスマス会で公開プロポーズするなんてね。おい、こら、ちょっと待て、って思うよね。
まったく、惚れっぽい恋愛体質の女子の「運命の人!」なんてのはあてにならないったらありゃしない。
その点私はちょっと顔の造作がいいくらいじゃビビビのアンテナは微動だにしない。
だから一目でうっかり好きになんてたらない。
私にはもっともっと奥の方からそれを嗅ぎ分けられる方法がある。それはにおい。
どんなに見た目がカッコよかろうと、私の鼻に合わないにおいがしたらそれまで、で、ここ10年くらいは恋のコの字も見てやしない。
が、しかし!ついに来たかも、これは!
やさしいその人のにおいは、まるでずっとずっと遥か遠いむかしから知っていたかのように心地よく私を包み込んだ。
そのにおいを感じながら眠りにつき、目覚めたら隣りにそのにおいがある。そんな風景が頭の中にくっきりと浮かんだ。
これだ、ついに来た、これが運命の人だ!って思ったあの人のにおいがホームセンターで298円で売っていた。
ピーヒョローロ ピーヒョローロ ピヨピヨピヨヨと完了の合図を鳴らした洗濯機から洗濯物を引っ張り上げると懐かしいあの人のにおいがした。

運命じゃなかったな、また。

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