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春から薬学部の “貴方” へ


本来ならば、今日から前期の講義が始まる予定でした。しかし私といえば見事に風邪を引いてしまい、初っ端から欠席する始末。なんなら昨日行くはずだったバンドのライブだって泣く泣く諦めた。どうにも不運が続いている。今年って厄年じゃなかったよね?

そんなわけで、スロースタートになった学生生活ラストイヤー。思いがけず時間ができたので、良い機会だと思って入学から5年間のことを書いてみます。

所謂 ストレートに進級して、実習を受けて国家試験を受けて、卒論を書いて、薬剤師として働く。そう信じ込んでいた過去の私が聞いたら、ありえないと思うようなことばかりの5年間。
“貴方” という名の、あの頃の私に向けて、伝えたいことが沢山あります。だから、手紙を書きます。

この記事に辿り着いてくれた人は、もしかしたら何かしらの不安や悩みを抱えているのかもしれません。
先に言っておきます、ごめんね。これから私は自分のために文章をつづるので、あまり役には立たないと思います。
でも、それだとあんまりなので、私のことを掬い出してくれた場所や人々のことを書いておきます。

・心療内科
 初診は1ヶ月待ちとか全然あります。
 限界を迎える前に、早めに早めに。

・大学の学生相談室 (カウンセリング)
 私の場合はたまたまカウンセラーさんとの相性が
 良く、休学/復学の面でかなり助けてもらいました。
 友人(他大学)は、相談室から心療内科を紹介してもら
 ったそう。病院に比べて予約が取りやすいし、対面
 や電話が難しくてもメールで相談できるので、何か
 あった時の選択肢に入れておくと少しでも安心でき
 ます。

・家族や友人
 こればっかりはカウンセラー以上に相性だな、と。
 感謝してもしきれないぐらい助けてもらいました。
 この場をかりて、本当にありがとう。

あんまり大声では言えないですが...
上記の場所に頼りたいけど頼れない人、頼り方が分からない人など、もし私でも役に立てそうなことがあればコメントやインスタのDMなどでメッセージをください。役に立つよ!とは言えないけど、全く何もできないよ!とも言い切れないので。(2024/04/08 暫定)


では、遅くなりましたが本編に入りますね。
この記事は以下の事柄を含みます↓

鬱病 (うつ状態) / 休学 / 転学科 / HSP

読むのがしんどくなったら、無理せずに。




春から薬学部の “貴方” へ


10歳のころ、2分の1成人式で「薬剤師になりたい」と発表したのを覚えていますか。
あれから8年と少しが経ち、見事夢への切符を掴んだ君は、今どんな気持ちですか。

思ったよりワクワクしていないでしょう?
「頑張らなきゃ」「ああしなきゃ、こうしなきゃ」
と思うばかりでなんだかソワソワしているでしょう?

うん、まだ気づいてないか。まあ私が数年かけて気づいたんだから、貴方が気づかなくても当たり前か。
昔から自分の感情には鈍感だったもんね。
他人の感情には敏感なくせして、自分のことになると途端にニブくなるもんね。大体あとになって「しんどかったんだな」って気づくタイプだもんね。


結果から言うと、
貴方は薬剤師にはなりません。

病気休学の1年間と、ポジティブ休学の1年間を経て、4年制薬学部に転学科します。
4年制の薬学部では薬剤師資格を取れないので、必然的に薬剤師以外の職につくことになります。

ふふ、どうだい?
びっくりしたかい?
それとも安心したかい?
「こんなに頑張ったのに」と思うかもしれないね。


大学受験期だけじゃなくて、遡れば小学生の頃から、よく勉強する子だったと思います。自覚はないだろうけどね。
「もっと頑張ってる人だっているし」と思っているでしょう? そうそう、それだよ。貴方が鈍感なのは、そういうところです。

中学生のころ通っていた塾で、こんなことを言われたのを覚えていますか。

勉強しすぎて死ぬ人はいない

大学3年生の夏、
貴方は勉強のしすぎで死にかけます。

起きている時間の殆ど全てを勉強に注ぎ、休憩時間を削り、睡眠を削り、食事を削り、勉強のことしか考えられなくなります。
夢のなかでも暗記をしていて、びっしょり汗をかきながら目が覚めて、何も喉を通らないけどカロリーは取らないと集中できないからゼリー飲料を飲んで、大学で22時まで勉強して、帰宅してからも3時ぐらいまで勉強してたよ。

もはや狂気って言えるほど勉強してたのは、別に3年生のときに限ったことではなかったけど。
5限終わりに19時から23時までバイトして、それからマックで終電まで勉強してたね。
まだ試験まで3ヶ月もあるのに、土日も大学にこもって勉強してたね。


大学3年生の夏、ついに限界がくることをよく覚えておいてください。あの頃のことは未だに思い出すと辛くなるから詳細は省くけど、冗談ではなく死にかけます。

9月の中ごろ、ようやく病院に行けることになりました。

「うつ病を、考えなければいけませんね」

優しそうなおじいちゃん先生の声が、あの日からずっと頭に残っています。隣で聞いていた母がどんな表情をしていたのか、怖くて見られませんでした。

「休学したい」と伝えられたのは、2回目の通院後でした。それまでは何とか大学に通って、夜中に泣きながら実験レポートを書いていたりしたけど、もう正直言って限界でした。自分が平常状態じゃないことは、主観的にも客観的にも明らかでした。

......余談ですが、
泣きながら書いていた実験レポートは、1年後に復学したときに単位として認められることとなります。だから、決して無駄じゃないよ。だいじょうぶ。

休学を決めてからの1年間については、実を言うとあまり覚えていません。

3ヶ月ほど経ってから本が読めるようになって、この機会にとハリーポッターを読破しました。
まだ本を読む気力がない時、横になって目を瞑ったままアニメを流していました。そこで出会った作品は、今でもつづく趣味の一部となっています。ハイキュー、映画が公開されたよ。

親しい何人かの友人には、事情を伝えて「今は連絡を返せません」と送りました。私から連絡するのを数ヶ月単位で待ってくれて、今でも仲良くしてくれています。
頼って大丈夫かな、と不安に思っているかもしれないけど、大丈夫です。大丈夫ですって私が言うことじゃないけど、大丈夫だと思います。
貴方の友達は、本当に本当にサイコーな人たちばかりです。

徐々に動けるようになってきたのは、春を迎えたころだったと記憶しています。
この辺りから徐々にカメラロールに思い出が残っているから、見返してみてください。それなりに楽しそうにやってます。


夏がきて、秋がきて。
貴方は3年後期から復学します。

ここからの半年間は、まあそれなりにボチボチやっていました。試験期間も今までほど不安定にならず、穏やかに過ごせていたと思います。


転機が訪れるのは、次の春です。
2023年4月、貴方は4年生に進級しました。

4年生になると、事前実習といって薬局/病院実習に行くための実習が始まります。
そこで感じたのは、猛烈な違和感です。
思い返してみれば、あのとき突然始まったものではありませんでした。入学した頃から感じていた居心地の悪さが爆発してしまったんだと思います。

今までの20数年間、
我慢すればなんとかなると思って生きてきました。

できないことは、できるように努力すれば良い。
やりたくないことは、堪えてやるしかない。
頑張れば出来ることを、何故やらないの?
できるように、やるんだよ。

負けず嫌いで完璧主義。
良く言えば真面目で、悪く言えば頑固。

薬学部に進んだのだって、使命感や正義感みたいなものなんじゃない? どう? 胸に手を当てて考えてみてください。推薦入試で流暢に志望動機を語っていたけれど、そんなの全てまやかしでしょう。心からの、まっさらな本心じゃないでしょう?

あー、分かった分かった。そうだよね。
貴方は「そんなことない!私は本気で薬剤師になりたいんだ!」って主張する人でしたね。

まあ、今はそれで良いと思います。だって説得しても無駄だしね。
別に今すぐ夢を考え直せなんて言わないけれど、もし貴方が心の隅っこで「あれ?」と感じることがあったら。その違和感を、どうか見過ごさないであげてください。貴方の勘は結構当たります。これは私が言うんだから間違いないです。これだけは覚えておいてください。



この時点で選択肢は3つありました。

・6年制のまま、あと3年通って卒業
・4年制に転学科して、1年通って卒業
・退学 / 他学部に編入

本当に、ほんとーーーーに沢山の人から助言をもらいました。よくよく感謝してください。私からのお願いです。

結果的に、私は転学科を選びました。
・大学は卒業したい
・薬学という学問に興味がなくなった訳ではない (むしろ好き)

という理由で、薬学部には残ることに。

高校3年のころ、受験期に6年制か4年制のどちらを受験するかで迷っていたのを覚えていますか?
医療系学部のなかでも薬学部を選んだのは、企業に就職する道があるからだったのを覚えていますか?

「最初から4年制に行けばよかったじゃん」
と言う人がいるかもしれないけど、なんせ私も貴方も負けず嫌いな性格ですからね。最初から薬剤師の夢を絶っていたら、諦められるものも諦められなかったでしょう。それこそ途中で薬学科に編入していたかもしれないよ?

だから、まあこれで良かったんだと
今なら思えています。


さて、転学科すると決めたは良いものの
すぐにハイ転学科!という訳にはいきませんでした。転学科をするためには4月より前に手続きする必要があったのです。

そこで、思い切って1年間休学。
この決断が本当に良かった。この先も続く長い人生におけるハイライトとも呼べるような、濃い1年間でした。

たくさんバイトして、たくさん旅行に行きました。勉強をして資格も取りました。大学に篭っていたままでは得られないような経験ができました。
本当に本当に、とにかく楽しかった。
学生という肩書きがあってこその楽しさだから、ずっと続くわけではないことは分かっていた。1年だけのモラトリアムだと分かっていた。だからこそ、思う存分に満喫することができました。



2024年4月、
先日正式に転学科手続きが受理されました。
大学生活もあと1年です。

ここまで読んでみて、どうですか?
想像とは全く違ったでしょう?
結果的に6年で卒業することになったけど、いま貴方が思い描いている6年間とは全然違うでしょう?

貴方は「自分はなんでも出来る!」と思っているでしょう。それはあながち間違いではないのかもしれません。これまでの20年弱、なんだかんだで何とかなっちゃったもんね。頑張れば、何とかなったもんね。
でも、貴方の「頑張れば、」は人とは少し度合いが違うようです。自分だけを軸にしないでください。貴方が思っている普通は、全人類の普通ではありません。努力でどうとでもなるほど、人間の身体は強くないようです。

あと、自惚れるのはやめましょう。
成績優秀者として表彰されることを目指して貴方は勉強するけれど、貴方より賢い人はいます。貴方が身体を壊すほど勉強しても辿り着けない領域があります。「努力の仕方を変えれば......?」とか言うのはやめてください。そういうところだからね

少し過去の話をしすぎました。

2024年4月の私は、結構いい感じです。
転学科をして研究室にも配属されましたが、毎日たのしく健康的に学んでいます。教授も同期も皆んな良い人たちです。
入学したばかりの貴方からしたら驚くような分野の研究だけど、結果的にここで良かったんだと思います。

数年前の私が頑張ってくれたおかげで、今年必要な単位も最低限で済みそうです。
泣きながら勉強した日々は、全てが未来に直結することはないかもしれないけど、でも全く繋がらないわけではないです。決して無駄ではありません。
学べて良かったと、心から思います。

ただ、うつ状態だった頃に関して言えば「あの頃があって良かった」とは、どうしても思えません。
結果的に良い方向に進んだけれど、それは結果論でしかなくて、あの出来事を避けて通れるならばそれに越したことはありません。十分条件であっても、必要条件ではありません。



だから、貴方に言いたいことがあるとすれば。

( 自分に正直になってとか肩肘張りすぎないでとか、自惚れるなとか過信するなとか他人の意見聞いて少し自分を客観視しろとか、言ってやりたいことは沢山あるけど! )

とりあえず、満足するまでやってみてください。
貴方の性格上「ダメ!」って言われて取り上げられても諦められないから、気が済むまでどうぞ好きなようにやってください。ただ、自分の限界には注意深く目を向けましょう。身体が発するサインを見逃さないでください。

・喉がつっかえる感じがする
・寝汗をかく
・夢でも勉強している
・耳鳴りや頭痛がする
・周囲の目線が気になる
・常に動悸がしている
・音が響く感じがする
・好きなものに時間を注げなくなる

これらは注意信号です。
決して「まだいける!」と思わないで、グッと堪えて立ち止まってみてください。可能ならば第三者の意見を聞いてください。心配せずとも貴方の周りは温かくて優しい人ばかりだから、助けになってくれるでしょう。感謝をすることは忘れずに。


10歳のころ「薬剤師になりたい」と宣言した私に、胸を張れるような貴方でいてください。それは薬剤師になることではなくて、貴方が貴方の目指したい道を進むことです。貴方が楽しそうにしていれば、たぶん過去の私も笑ってくれるはずです。

今の私は、貴方に誇れる自分でいることが出来ています。ごめんね、貴方が望む私じゃないかもしれないけど。でも大丈夫だよ、これで良かったんだって思える日がきっと来るから。

もしかしたら、この先「やっぱりあの時ああしていれば......」って思う日が来るのかもしれないね。薬剤師資格を取らなかったことを、それはそれは悔いるのかもしれないね。

まあでも、それはその時になってみなきゃ分からないからさ。だって5年後の未来さえ想像つかなかったんだから、10年20年先のこととか分かるはずがなくない? 貴方が思っているより、人生は思いがけないことの連続だよ。

あーあ。なんか怒られる気がしてきたな。
何度も言うようだけど、ごめんね。謝るのはこれで最後にするから、ここでは謝らせてね。
貴方も知っている通り、負けず嫌いだからさ。やっぱり〜って思っちゃう人間なんです。結局。


よし、長くなりそうなのでこの辺で終わりにします。なんか今にも卒業しそうな雰囲気だけど、あと1年残ってるからね。まだ学生だからね。
1年後の自分が読んだら恥ずかしくて堪らないと思うので、5年前の貴方だけに届きますように。

改めて、入学おめでとう。
貴方の選択は、決して間違いじゃないよ!
貴方に誇れる自分で居続けられるように、私もここで頑張ります。お互いほどほどに頑張ろうね。

じゃあ、また!




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