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銀河フェニックス物語<出会い編> 第十九話(3) 恋と伝票の行方

第一話のスタート版
第十九話(1)(2

 工事の安全を祈る鍬入れ式が始まった。

 ダルダさん、工場長の狐男、パキ星の経済大臣の三人が並んで立ち上がる。
 わたしには意味不明のパキ語で、祝詞が読み上げられていた。

 パキ語を聞くとレイターの顔が浮かんだ。

n2@正面2@笑いカラー2

 去年、レイターにパキ語で通訳してもらいながら、きのこのパキールを食べ比べたことを思い出した。楽しかったな。
 あんなに大変だった出張が、今では懐かしく思える。

 生きて帰れたのはレイターのおかげだ。

 ダルダさんたち三人が、そろって土に鍬を入れた。
 その様子を、現地のマスコミのカメラの横から、携帯通信機のカメラで撮影し、本社に送信する。
 後は、報告書の作成。

 鍬入れ式が終わると、経済大臣がダルダさんに話しかけた。
「フェニックスさんによろしくお伝えください」と。

 船に戻ると、わたしはダルダさんに聞いた。
「ダルダさん。どうしてみんなレイターの話をするんですか? 狐男も大臣も」
「あれ、ティリー君。レイターから聞いてないのかい? 土地取引の話」

n70むっ

「土地取引?」
「レイターと仲がいいから、知ってるもんだと思ったよ。あいつ、去年、工場の拡張計画が白紙になった後、第二工場の予定地を買い取ってたんだ」

 驚いた。
「よく、そんなお金がレイターにありましたね」
 レイターはいつもお金がない、と騒いでいる。

「俺の金だよ」
「え?」
「俺、去年、レイターに十億リルを払うって約束したじゃないか」
 
 思い出した。
 テロリストにギャフンと言わせる代わりに、レイターの言うことは何でも聞く、という約束をした。

 大金持ちのダルダさんは十億リル支払えと言われ、即答した。
 わたしはキスを求められ、断った。

「あいつ、その金で、うちの社が買収できていなかった、隣の土地を買い占めたのさ」
 知らなかった。
 そもそも、ダルダさんが十億リルをレイターに払っていたことに驚いた。
 レイターが、ダルダさんのことを金払いがいい、と言っていたことを思い出す。

「今回、俺の実家の研究所が、きのこの植え換えに成功して、工場拡張の話が本腰になったところで、この辺りの地価が急上昇した」
「それでレイターは、ぼったくったんですか?」

「と言うか、あいつ、その土地をオークションにかけたんだ」
「ひどい。うちの会社が絶対欲しい、ってわかってるのに」
 腹が立ってきた。

「まあ、そうだが、狐男がうまく丸め込んだのさ」
「工場長が?」
「連邦のオークションじゃなくて、パキ星内のオークションにかけてくれって頼んだのさ。パキ内なら狐男が相手を抑え込めるからな。これで連邦オークションにかかってたら、大変だったさ」

 この工場計画を潰したがっているライバル会社もいる。
 連邦オークションだったら、どこまで値がつり上がったか、わかったもんじゃない。

「よくレイターが飲みましたね」
「そりゃ、狐男ががんばったのさ。金に、酒に、女にと、ガハハハハ」
 要するに、レイターを接待漬けにしたということだ。

「しかも、経済振興策で税金も免除されたから、結局、あいつは三百億リルぐらい儲けた計算になる」
「三百億リルッ!!!!」

t23@2色やや驚く.

 想像がつかない。
「だから、ティリーさんにディナーぐらいおごったって、罰はあたらないだろ?」
 まったく、何を考えているのだろうあの人は。理解不能だ。      (4)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」