銀河フェニックス物語<出会い編> 第十八話(1) オールスター狂騒曲
この物語は、宇宙船メーカーの営業 ティリー・マイルドと、そのボディガード レイター・フェニックスのお話です。
・第一話のスタート版
・第一話から連載をまとめたマガジン
「ねぇ、ティリー、バスケ部観に行こうよ。今、練習してるんだって」
お昼休み、隣の席のベルに誘われた。
背が高く運動神経抜群のベルは、学生時代バスケ部だった。
「いいわよ、サンドイッチでも買っていこっか」
うちの会社のバスケ部は、結構強い。今年も社会人リーグで準優勝したのだ。
本社の敷地内にある体育館は、自由に観覧できる。
体育館に入ると、バスケットボールの弾む音が響いていた。結構、ギャラリーが多い。
二階の観覧席に腰かけて、デリで買ってきたミックスサンドを取り出す。
「ラッキー、練習試合してるじゃん」
隣に座ったベルが興奮している。
赤いビブスと青いビブスを着た二つのチームが対戦していた。
わたしは、そんなにバスケに詳しくないけれど、ボールがスピーディーに動いていく様は、純粋に見ていて面白い。
赤の十番に目が止まった。
動きが速くて、目立つ。
白いワイシャツの上に赤いビブスを着た金髪の男性。
そして、わたしは気がついた。あれは『厄病神』だ。
ベルも気になるようだ。
「赤の十番、誰? バスケ部じゃないのに、レギュラーのボールカットしてる。うまいじゃん」
一応、教えておこう。
「あれはレイターよ」
「え? 厄病神?」
ベルが驚いている。
前にレイターがお祭りのストリートバスケで、賞品をもらっていたことを思い出した。
「ハイスクールの頃、バスケ部だった、って言ってたわ」
「そうね、あれはどう見ても経験者の動きよ」
流れるようなドリブルで相手をかわしながら、次々とシュートを決めていく。
動きがいちいち派手だ。
シュートを決めた後のリアクションもオーバー。宙返りして観客を沸かせている。
「レイターって、かっこいいんだね」
「どこがよ」
わたしは即座に否定した。
ダンクシュートを打つ。そしてそのままリングにぶら下がり、ファウルを取られる。
場内は大うけ。
「お調子者の目立ちたがり屋なだけよ」
また、シュートを決めた。
レイターがわたしたちの方を見た。
わたしと目があった、次の瞬間、
「はぁい、ティリーさん」
と言いながら、わたしたちの方へ向けて投げキッスした。
周りの観客がわたしたちを見る。
「何なのよまったく、恥ずかしいことは止めてほしいわ」
イライラする。
そんなわたしの顔を、ベルがじっと見つめた。
*
週末、ベルと一緒に、家の近くのショッピングモールへ出かけた。
ベルとはもはや職場の同僚、というより友だちだ。
ショッピングが趣味のベルと、かわいいショップを探して歩いていたら、突然、変なことを聞いてきた。
「ねえ、ティリーって、レイターと付き合ってるの?」
「はあ? 何言ってるの。わたしがどうしてあんな厄病神と」
「そういう噂があるのよね」
「冗談でしょ?!」
わたしはびっくりした。
「週末、よくフェニックス号へ出かけるじゃない」
「それはレース観戦よ。研究所のジョン先輩も一緒だし、あの船、4D映像システムがすごいのよ」
「この間のバスケの時も、ティリーに向けて投げキッスしてたじゃん。レイターはいつも『俺のティリーさん』って呼んでるでしょ」
「あれは、女好きなレイターの、変な冗談に決まってるじゃない。止めてって言ってるのに」
「信じてる人がいるのよね」
「えーっ」 (2)へ続く
・第一話からの連載をまとめたマガジン
・イラスト集のマガジン
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」