見栄と本音の狭間 Ⅳ

4.本音を受け取る  

 ここまで原稿を書いて、ふと思い返す。

 社会人として、初めて入社し、精神的にも体力的にも辛くなって辞めて、丁度賃貸マンションも、契約が切れたので、元の勤務地の近くで休みながらも仕事を探そうと思い、都会へ逃げるように引っ越した。


 とある日、両親が近くまで来てくれた事があります。相談もなしに、会社を辞めたので、さぞ驚きと心配があってのことでしょう。

 引越し先の近くの焼肉屋さんでのランチをとった時、
「見栄、張らんでいいんやで。」

と、言った父は、空気を読まずに本質を突く天才だなと思いました。

 当時は、いい子ちゃん、可愛い私でいたいがあまり、本音に蓋してその場しのぎな関わりでした。
実家に一旦帰る事も、選択肢にはありました。
そこまでいわゆる「実家アレルギー」があった訳ではなく、だけど都会での暮らしは捨てたくなかった。奥底には、都会のエンタメを両親、家族と楽しみたかった。と言う気持ちが裏にあった。心の深いところでは家族愛で繋がっていたかったのだ。

 だけど、当時私は、体と心のエネルギーが枯渇して、ついていけなかった。
 自分の幸せを最優先するためにも、実家ではなくて、新天地で自分の才能を信じて行くことを自然と決めてました。婚活へエネルギーを注ぐ事も出来たけれど、1人の人間として、自分の才能を社会や経済活動で活かす事が私の幸せだったから、自分の本音へ邁進することにしました。
 転職活動を経て2社目はとあるマーケティング会社の、営業職。入社を決めた理由は、マーケティングで、100万円稼げる、から。実際、憧れの高級カバンで出社する先輩もいたし、頑張れば成果が出る環境でした。
 ですが、私は音に敏感だし、疲れやすい、しかも外回りの営業は不慣れで毎日疲れてました。初めは、1日の電話する数や契約ノルマは達成できたものの、維持をするのは苦痛でした。結局は、続きませんでした。
 飽き性で、何かやりがいが欲しい、だけど年収も必要。都合良く考えた末に、IT会社での事務へ応募し見事に内定した。
 正社員としては、3社目の就職となる。システム開発のため、エンジニアの方とお仕事したり、大企業のプロジェクトへ参画したり、敏感繊細で、男性社会が大の苦手な私は、本当に向いておらず、プロジェクト終了後、退職を決めました。 その後は、お休みしつつも、関心があったイベントや美容のお仕事をする事で、来店するお客様に喜んでもらえたり、素直にコスメや美容のご質問を受けることが嬉しかった。私自身、肌は白く、華奢な方だったので美容やダイエット、男女問わず話しかけて下さったり、スーツのコーディネート等のお話しは自然と出てくるし、カフェや推し活、アイドルの話など、女性スタッフ同士だからこその会話、取り留めもなく何気ない会話がとっても楽しかった。

 美容のお仕事を頂くまで女性社員や同期、同僚とは、全く仲良くなれませんでした。

 それは、好きな業界や仕事でなかったので好きになれない人間関係、共通点がわからない状態が、自ずと出来ていました。

 一方で美容やコスメ業界は、本当に好きな商品やサービスのある業界だから、自然と仲良くなれる、親しく会話が生まれるのです。好きなお化粧品から会話が広がり、コミュニケーションが生まれ、コミュニティや絆ができました。スタッフ同士が言い争ったりするのではなく、歪みあったりするのでもマウントを取るのでもなく、自然と行動して販売出来る雰囲気になります。 とある美容スタッフ研修の時、「お客様へのタッチング、お化粧をして、きれいになって帰ってもらうことの醍醐味に一度ハマると病みつきになるよ。」と、とあるアーティストさんから助言を頂いた事があります。仕事をするときの高揚感って私が今まで渇望してきた事でした。

 大企業だから、総合職だからといって仕事を「こなす」日々だったから。年収やボーナスが上がったとしても心からの充足感を見出せず、ポッカリ穴が空いたままの日々を数年過ごしてました。

 だけど、美容のお仕事をした時、あらゆる背景、年齢の女性がご来店し、自分に合うコスメがわからないけど、何かご褒美に買って帰りたい、友達のプレゼントに何がいいのかわからないけど、このブランドをプレゼントしたい、雑誌で限定品で特集されて、楽しみだったからお店に買いに来た、など、十人十色のシチュエーションだったから、接客する美容部員側としても学ばせて頂きました。世の中の経済活動、家庭のお財布の鍵は、女性が持ってるものだし、女性の心を動かす一言をどれだけ持てるか、が自分なりの接客の心得でした。
 美容、嫌いな人居ないよね。とまで思っております。

 一方で、外見を気にしすぎて、紫外線を気にしすぎて、日々楽しく過ごせないのは、心の美容に不健全。

 誰もが一人一人の楽しめる範囲で、美容はエンタメとして、コミュニケーションのツールとして、また生きがいとして、ハイブランドでも、プチプラでも100均でも、1つのアイテムをご自愛のために手にして欲しい。


 この気持ちはきっと、幼い頃から私が受験するまでフルタイムで働き続けていた母のアカギれた手を見てからなのだと思えます。

 母は、自分を大切に出来てない、と私の目にはうつって見えておりました。当の本人は、自己犠牲感などは一切なかったのだと思いますが。

 祖母、年は、77歳、喜寿。私の幼い頃から、爪先のネイルを欠かさずしていました。
今は、されてないようですが。美意識の高さは尊敬に値します。きっと長く事務職をしており、パソコンをする自分の手を見続けるから、綺麗に手入れをしていたい、と思うものなのかと。


 幼い頃、大人になったら、オシャレや美容、お化粧する時間を増やすのが楽しみだなと思えました。美容を生きがいにする日々も良いなあなんて、考えてました。今、全てが叶ってる訳じゃないけども、美容メンテナンス中心の生活を送る事ができてる気がします。

 自然と意識が向いているから、行動や現実に反映されており、当然なのだと思えます。

 祖母は、丁寧で気品のある生活を好んでいる素敵な女性です。コーヒーはインスタントではなくきちんと豆を挽くか、ドリップしてくださるし、美味しい緑茶を知っており、年に2回、お盆とお正月に顔を出すと、お菓子とお茶を囲んで弾丸トークが始まってました。笑。私は、お返しに流行りの紅茶を置き土産として祖父のお仏壇へお供えしておりました。
 気品、美容、人様やご先祖に対する考え方、在り方はかなりの確率で祖母から影響を受けております。もちろん表面的な部分だけでなく、本質や裏側の大切さを教えてくださってます。これからも学んでいくのだと思います。たまに食べたお野菜やお菓子、お花の話などをLINEで連絡します。
 だけど、自己犠牲や、気疲れがある時は極力距離を取るようにしております。家族であっても、自分が心地よい状態でないなら、相手にも失礼だし、伝わってしまう気がするのです。
 
 あくまで自分の気持ち、メンタル、コンディション優先の生き方をすると決めた日から、なぜか毎日過ごしやすく、幸福度合いが一層高くなりました。
 
 次の章からは、考え方や捉え方を変えてきたからこそ、人生で起こったミラクルについて等身大でお伝えします。

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