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通帳を新しくしただけで、「100万円融資」を勧められた「バブルの時代」。

 もう随分と古い話になり、申し訳ないのだけど、1980年代の頃だった。

クレジットカード

 金融機関に勤めている友人に、ある居酒屋チェーンのクレジットカードの入会を頼まれた。それは、営業に関わる話で、ただ申し込んで、そのクレジットカードを持ってくれれば、その年会費も払うし、そんなに長く持っていなくてもいいから、といったような話をされたと思う。

 その頃、私は会社を辞めて、フリーライターになった時期でもあった。どこにも属していなかった。

 新入社員になった頃に銀行のクレジットカードを持つようになっていたけれど、どこにも所属していない貧乏な人間には、金融機関が冷たいのは知っていたし、それも当然だとも思っていたので、友人に確認した。

 自分の今の状況を伝えたら、大丈夫、ときっぱり言われたので、別に困ることでもないので、協力しようと思った。

 申し込んで、しばらく経ったら封筒が来た。開けたら、「残念ながら」という文字が目に入って、断わられたのが分かった。
 
 自分は頼まれただけなのに、拒否されて、変な気持ちになって、友人に連絡したら、謝ってはくれたけれど、このくらいのことで力にもなれずに、なんだか恥ずかしさと情けなさもあった。

 何しろ金融関係からは、敬遠される立場になったのは、よく分かった気になった。

100万円融資

 同じ頃、銀行に行った。

 通帳記入がいっぱいになって、その頃は、窓口に古い通帳を出して、新しくすることを依頼するしかなかった。

 しばらく待っていると、名前を呼ばれて、新しい通帳を渡され、その上に、少しお話もありますので、ちょっと待ってください、と言われ、何かと思い、ちょっとビクビクしながら、だけど、ここで強く拒否して帰るほど時間がないわけでもなかったし、何か気になってしまうと思って、窓口の前で座って、少し待った。

 さっきは若い女性だったけれど、もう少し年齢の高い男性がやってきて、何を言うのかと思ったのだけど、急に、融資をする話になった。結局は、100万円を借りてくれませんか、という内容だと分かった。

 この前、居酒屋チェーンのクレジットカード審査も通らなかった人間に、しかも、それだけのお金を借りたら、返すまでにどのくらいかかるか分からないのに、お金を貸そうとしていた。

 その理由として、会社に入った時に初めて口座も作って、クレジットカードも利用していて、信用もありますから、と笑顔で言われたのだけど、なんだか怖くなった。

 ほとんど即答で、お断りした。

バブル

 そういえば、銀行に入った友人と会ったりすると、お金を預けるのはいいから、貸すところはないか、といったことを、この頃にはよく聞いていた。半分冗談だと思っていたが、どうやら、本当のことだったと知った。

 同時に、こんなに貧乏な人間にまで、お金を貸そうとするなんて、どうかしていると思ったし、それは、銀行だけではなく、世の中がおかしくなっていると思った。

 それから、何年か経って、急に景気が後退し始めた。

 自分には、そんなに影響がないと思っていたのだけど、ライターとしての仕事が微妙に減ってきたような気がしたから、知らないうちに好景気の恩恵を受けていたのだった。

 それから、さらに時間が経ったら、私が100万円融資を勧められた頃は「バブル時代」と呼ばれるようになったし、急に景気が後退した時は「バブル崩壊」と言われるようになった。

 

 21世紀のいま、銀行に行って、通帳を変えるときは機械でやってくれるし、紙の通帳自体が廃止されそうになっているから、通帳を新しくするだけで、「100万融資します」と言われた時代があったことが、なんだか信じられないような気がする。




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