「ちょうどいい味」------『ペヤング やきそば』。
いろいろなものが値上げして、これだけ色々なものが高くなるのは、この20年でもあまり記憶にないけれど、でも収入が増えないし、増える見込みもないので、ただ不安が高まり、だからなるべくお金を使わないようになるけれど、それはケチとは違うかもしれない、と思ったりもする。
カップめん
コンビニには、魅力的なカップめんなどが並んでいて、その価格は今の自分にとって高くて買えない。スーパーなどに並んでいるのも少し安くなっているけれど、でも、以前はなじみがあったカップめんも今の自分にとっては、貧乏なので高額に感じるようになっていた。
こう書くと、なんだかちょっと悲しい。
ただ、そういう時代のせいもあって、それぞれの流通グループなどがオリジナルブランドを出して、それは、かなり安いので、そうしたカップめんばかりを食べるようになっていた。
だから、いわゆるメーカーの製品は、あまり食べなくなっていて、そうなると、自分の視界に入らなくなっていた。
これも、かなり悲しい。
ペヤング
妻が出かけていて、一人のときがあった。
昼に何を食べようかと思った時に、この前、スーパーで安売りをしていたので、つい2つ買ったペヤングのやきそばがあったのを思い出し、こういうときに食べたいと思って、廊下の箱に入っているのを取り出した。
何百回も食べているようなカップやきそばだから、その作り方も知っていると思っていたのだけど、ちょっと不安になって、その説明を探して、裏側に見つけた。
指定のある線の部分まで、ふたを開ける。その中のソースやスパイスやかやくの袋を一度取り出す。この中のかやくだけを、めんの上に開けて、沸かしたお湯を入れる。
3分待った。
セットしたタイマーが鳴る。
箱の、さっき開けたのとは別の方向のフタを開ける。そこには、小さい穴が空いたアルミで補強された部分がある。ここから湯切りをすれば、中味が落ちない。
もっと昔のカップやきそばには、こうした親切なシステムはなかったはずで、だから、そーっと湯切りをしても、めんが落ちた経験をした人は、少なくなく、だから、それが失敗の定番ネタとして、何度も話された記憶がある。
そのとき、3分経ったとはいえ、かなりの高温のままなので、お湯を切ったステンレスの流しが、急速な温度変化によって、ボコっと音がする、といったエピソードと共に聞いたはずだ。
普段は忘れているそんな話まで、久しぶりにカップ焼きそばを食べようとして思い出した。
それから、あとは、ちょっとどろっとしたソープと、スパイスと、もう一つの小さな袋を開けて、お湯がなくなっためんに開けて、混ぜる。
これで出来上がりだった。
ちょうどいい味
それで、部屋に持っていって、食べ始める。
普段、妻が作ってくれる焼きそばとは違って、やはり、カップやきそばとしかいいようのない独特の味がする。
おいしい。同時に、なつかしい。
こうした食品は、今も売り続けているということは、老舗のレストランのように同じレシピを守るよりは、おそらくは毎年のように味の進化をさせているはずだ。だから、なつかしいと感じるのは、今も味が上がっていることで、昔と印象が同じようになり、だから、なつかしく感じるのだろう、と頭では考えても、結局は、これまでと変わらずのおいしさに感じる。
テレビをつけて、食事を続ける。
おいしいと思うけれど、でも、気持ちをそこに持っていかれるほどの凄さはない。
だから、あまりほめられたことではないかもしれないけれど、テレビを見ながら、みたいに、別のことをしながら食べて、邪魔にもならない、ちょうどいい味なのだと思う。
それは、ただお湯を入れて完成する過程で作れるとなれば、すごい技術なのかもしれず、この絶妙さは、カップめん、というジャンルの味としか言いようがないのかもしれない。
そんな偉そうなことを語れるほどの味覚を持っているわけでもなく、味に関する豊かな経験もないものの、こうしたインスタント食品には幼い頃からなじんできたから、それで、なつかしさもあるのだろうと思う。
そんなことを考えると、今は、自分にとっては高額の、新しく出ているカップめんの新製品などは、もしかしたら、想像以上のおいしさかもしれない、などとも思った。
新しい年は、少し試してみたい------。
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