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小出祐介氏(ベース・ボール・ベアー)の語りで、「世界がちょっと変わった」。

おちまこと

 ドラマ「古畑任三郎」のことを、ロックバンド「ベース・ボール・ベアー」小出祐介氏が話しているラジオ番組のコーナーがあった。その放送時に、聞けなかったので、ポッドキャストで聞いた。

ベース・ボール・ベアー 小出祐介氏の語り

 この番組には、小出氏は時々出演し、先日もこの番組のサテライトのような場所で「エヴァンゲリオン」について、納得のいく内容を、抑えながらも内から伝わってくる過剰な熱量で語っていたから、期待値は高かった。

 パーソナリティの宇多丸氏には「こいちゃん」と呼ばれている。「ベース・ボール・ベアー」のファンではないから失礼だとは思うのだけど、私も気持ちの中では、そう呼びたくなるような語りをいつも聞かせてくれる。「ナンバーガール」の時も、テレビで見た時も、語りそのものが芸になっていて、魅力のある人だった。

 ただ、小出氏の世代にとっては、「古畑任三郎」は、リアルタイムで見るには、たぶん小学生くらいだったから、小出氏にとっては「古い」ドラマに過ぎないのではないかと思ったけれど、このポッドキャストを聞いた後は、本当に杞憂だと分かった。


(これ以降の小出氏の話は、ポッドキャストからの聞き書きなので、細かい点が違っていたら、すみません。興味を持っていただけたら、ポッドキャストを聞いてくださることをお勧めします)。

 小出氏が、個人的な「古畑任三郎」に関するランキングを発表するという形式だった。

 ベスト エピソード部門。
 ベスト アバンタイトル部門。
 ベスト コーディネート部門。

 アバンタイトル(番組冒頭で、登場人物が、視聴者に対して語る場面)も懐かしく、コーディネートは、本当に正確に細やかに見ていて、ドラマへの強い愛情が伝わってきたのだけど、個人的には「エピソード部門」に関する話は、古畑任三郎というドラマへの見方だけでなく、この「アフターシックスジャンクション」の特集のサブテーマでもある「ちょっと世界が変わったらいいな」が、本当だと思わせる内容と熱量だった。

「古畑任三郎」 ベストエピソード部門

 ベスト3に選ばれた最初の回「死者からの伝言」は、犯人役として中森明菜が起用されたことで話題になったのも覚えているが、犯行を認めた犯人役(中森明菜)に向かって、まだ二十八歳。過ちを犯しても、何度でもやり直せる。そんなメッセージを「古畑」が伝えていることを、小出氏は高く評価している。

 中森明菜は、本来の歌手として高い能力とスターとしての輝きと実績を十分以上に伝えた後、プライベートな出来事などによって、その勢いに陰りがさしたのが、1989年。その後、ドラマで注目を浴びたのが1990年代だった。

 「古畑任三郎」には、1994年に出演しているのだから、こういう言い方は失礼かもしれないし、中森明菜は、決して過ちを犯したわけではないが、やり直せる、という象徴のように見えている部分もあったから、より、こうしたメッセージに力が宿ったのかもしれないと思う。


 ベスト2に選ばれた回は、小出氏が、今回、この特集を語るため、改めて全部を見直し、以前とは違って、「グッと来た」エピソードとして選ばれていた。

 それは、田中美佐子が演じる「悲しき完全犯罪」の「犯人役」が、犯行を認めた後、似合わない派手な服装をし、それを最初に見たときは「イタイ人」に見えていたのが、今、見直したことによって、評価が変わった。自分がしたい格好をしている。それでいい。人は、生まれ変われる。自分のことを好きになれたら、輝いている。そんな風に見えて、好きなエピソードになったと、小出氏は、語っていた。

人生はやり直せる

 そして、小出氏にベスト1に選ばれたのが シーズン3 第5話「再会」だった。
 これは津川雅彦が「犯人役」だったし、私にとっても、比較的、覚えているエピソードでもあった。

 この回のあらすじも小出氏は、スムーズに語ってくれる。

「犯人役」は、津川雅彦。刑事である「古畑」の小学校の同級生。著名な小説家であり、若い妻がいて、その妻が担当編集者と不倫して、そのことに気がついている。津川と「古畑」は、同級生だけど、ずっと仲が言い訳ではない。それなのに、別荘に呼ばれるには裏があった。

 津川の演じる小説家の妻の不倫が、週刊誌にバレそうになっている。昔、若い妻をもらっただけで、叩かれたのに、不倫の話が出たら、もっと笑われるし、叩かれる。それを気に病んで、自殺して、他殺に見せかけて、その罪を妻に被せたい。それを見つける役として、小説家は、古畑を呼んだということが分かってくる。

 古畑は、刑事としての理想は、できたら、事件の前に防ぎたい。古畑史上、唯一、事件が起こる前に防げたのがこの時だった。そんな話をしても、小説家の同級生は、死にたい。恥辱にまみれる前に、と主張する。

 古畑は、反論する。

 例え、恥辱にまみれても、生きるべき。これまで強制的に死を選ばされてきた無念の顔を見てきた。だから、生きるべきだ。

 それでも、小説家の気持ちは、変わらない。

 でも、死ぬより辛い。死なせてくれ。 
 もう、いくつだと思っているんだ。もう、やり直せない。

 そこに、さらに古畑は、反論する。

 とんでもない。いくらでもやり直せます。
 例え、明日死ぬとしても、やり直しちゃいけない、って誰が決めたんですか。

「これ、古畑史上、一番好きです。何度見ても泣けます」と小出氏は語る。

 こんな人生への、大肯定ありますか。どれだけ失敗しても、挫けても、いつでもやり直せばいいじゃん、という主張。人生は有限、でも、可能性は無限。そこまで語っていると思う。もう大好き。エクセレント。

 この話に対して、パーソナリティの宇多丸氏は、このプレゼンを含めて、グッときた、というコメントをしているが、ポッドキャストを聞いた視聴者も、同意見だった。

真っ直ぐな思い

 基本的に、私自身は、屈折した人間だと思う。

 だけど、こうした小出氏の語りを聞いていると、自分自身が好きなものに対して、真っ直ぐな思いで受け止めて、そこで得られたものを、また人に心を込めてストレートに伝える。という大事さを改めて知ったし、「古畑任三郎」というドラマへの印象そのものが少し変わっていた。

 私は、「古畑任三郎」をリアルタイムで見てきた。その時の、自分に起こった出来事と結びついていて、重い気持ちになることもある。

 それに、印象深い回は、人によって違うので、私は、「犯人役」がすごく手強かったり、犯行が明らかになることと人生の重大な局面を秤にかけたり、といった回が好きだったが、これだけの肯定的なメッセージには、それほど目がいかなかった。

 もし、小出氏のあげた3つの「エピソード」を見直したとしても、ここまでの感動はできないかもしれない。

 それでも、今回は、小出祐介氏という、真っ直ぐな語り手によって、こちらにまで確実に届くものがあり、私にまで少し「変化」を起こしてくれたと思っているので、なんだか感謝する気持ちになっている。

 この番組に、小出祐介氏に、ありがとうございました、と言いたい。です。

 次は、「乙葉」について語る特集を希望していますが、どちらにしても、音楽だけでなく、語りまで、伝える力を持っていることは、すごいと思いました。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただけると、うれしいです)。


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