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テレビについて(53)「凄い人の凄さを分からせてくれた放送」-----『新美の巨人たち』 妹島知世 「西武鉄道・特急Laview」。

 この前は、テレビ東京で、妹島知世氏の凄い建築物を初めて知った。

 その印象もあったので、同じテレビ局で、妹島知世氏のことを『新美の巨人たち』で扱うと知って、それで、見たいと思った。


特急Laview

 西武鉄道の特急を、妹島知世氏が設計していたことを、恥ずかしながら知らなかった。

 ただ、このテレビ番組で、その特急が2019年にすでにデビューしていたのもわかった。同時に、それ以降、特に2020年以降は、ほとんど外出をしなくなっていたこともあり、もしかしたら西武鉄道に乗ることもなかったから、この特急の記憶がなかったのかもしれない。

 そして、この番組で、この特急が、どのような経緯で完成したことも初めて知った。

弾丸のようなフォルムに銀一色の車体。西武鉄道特急Laviewは近未来の鉄道の様な姿。見たことのない車両を作るプロジェクトは、世界的な建築家・妹島和世のデザインから始まりました。世界中の鉄道車両を研究して、そのどれにも似ていないデザインを生み出したのです。
先端のフォルムはもちろん、車体を特殊コーティングして沿線の風景が色彩としてぼんやりと映り込む仕掛けを採り入れました。さら天井から床まである大きな窓。車内は公園をイメージしたと言います。

(『新美の巨人』より)

 この番組によると、まず西武鉄道が目指したのが「どこにもない車両」

 そのために、世界的に実績がある人で、鉄道の車両の設計をしたことがない、という条件の中で、選ばれたのが、建築家の妹島知世氏だった。

設計の思想

 そして、この番組では、あまりマスメディアにでない妹島氏が、珍しく画面に登場してインタビューに答えていた。

 まず、世界中の車両を小さいモデルにして、検討した上で、それまでない、という条件を考えた上で、まず提示したのが、弾丸のような形だった。それは、専門家にしてみれば、流線型のような車両は存在していたが、そうした球のような形は、できるかどうか、といったことのようだった。

 それも、西武鉄道のサイトによると、「国内初レベルの大きさの三次元曲線ガラスを採用」するなどして、車両の形を実現させたようだ。

 さらに、これは、テレビとはいえ、そのインタビューで聞かないと分からなかったのが、妹島氏の言葉で、車体のコーティングのことだった。

 まず、設計を依頼されたときに、やったことがないことだった。それまでは建築で、電車車両の違いがある。それは、ずっと同じ場所にあるか、移動するか。だから、周囲とのことを、考えなくてはいけない。

 そんな話を妹島氏はしていて、とても本質的で、そこから考えなくてはいけないのだろうかと思ったのだけど、ちょっとわかりにくかった、そのことが、実際の車体のことについて、具体的に映像で紹介された時は、すごく理解できたように思えた。

 車両の銀色は、ただシンプルに塗装されているわけではなく、車体にくっつくくらいの距離であれば、他の、こうした銀色のものと同様に、鏡のような映像に近くなる。だけど、少し遠ざかると、色も形も、ぼんやりとしか、銀色なのに、映さなくなる。

 それは、周囲の形ではなく色をまとう、ということなのかもしれない。

 これが鉄道の車両であり、そうであれば、さまざまな場所を通り過ぎ、しかも、下り列車であれば、池袋から秩父という、だんだん緑が多くなっていく光景を走っていくときに、はっきりと周囲を映す銀色であれば、車両は輝き、目立つかもしれないが、それは、特に自然の光景の中では違和感の方が強くなってしまうかもしれない。

 だけど、こうしたことも、こうして、ぼんやりと周囲を映す車両であるから、初めて考えられることで、さまざまな環境を移動する物体でありながら、なるべく周囲に溶け込ませる、という狙いがあったことに、その映像を見て、改めて気がつく。

 すごい。と思った。

 この記事の中↑で、ある美術館のことも紹介されている。

フランス北東部にあるランス市が鉱山地帯を利用した一大都市開発事業として、ルーブル美術館の分館「ランス・ルーブル美術館」を計画、その設計者としてSANAAが抜擢されました。

自然の地形に沿って緩やかにカーブするアルミパネルの外壁は、その環境に柔らかく馴染むように設計されました。
洗練された美しい建物は、フランク・ゲーリーが手がけたビルバオ・グッゲンハイム美術館と並び称されるほどです。

「特急ラビュー」の車両は、この「ランス・ルーブル美術館」の外壁の時の方法を参考にしたようだった。

公園

 さらに、この特急の目を惹く特徴は、窓がとても広いことだ。

 天井がガラス張りだったり、窓がとても広い列車は増えてきている印象があるけれど、この「ラビュー」は、イスの座面くらいまで窓が広がっていて、だから、通常の列車と比べると、かなり低い場所まで窓が広がっていることになる。

 この窓の広さについては、妹島の口から、「公園」という言葉が出てきていた。

 それも、外の光景が近くに感じる、という視覚に関することだけではなく、電車自体が、見知らぬ人と乗り合わせて、空間と時間を共有する、という意味でも、「公園」と類似している、と語り、だからこそ開放性を大事にした、ということのようだった。

 ただ、これだけ窓を下の部分まで広くすると、乗客によっては、走る景色が自分の体に近いところに流れたりするので、恐怖心が出る可能性がある。だから、この座席の手すりの部分をどのくらい高くすれば、怖さがなくなるかも、実際に同じような車体のようなモデルを作って、試して、制作したという。

 この座席の色は黄色で、それは西武鉄道のカラーなのだけど、そこにグレーの糸を混ぜて、落ち着いた雰囲気にしている。

 一つ一つの方針が、とても強い。

 だけど、自分の見る目がそれほどでないこともあって、まだ実物も見ていない上に、テレビ画面で一見したときは、その凄さが分からなかったけれど、それは、主張が強いわけでもなく、それこそ、環境に溶け込むようにしていたせいかもしれない、と思うと、さらに、凄いと思ってしまった。

 こうしてテレビ番組で取り上げてくれなかったら、この凄さを、ずっと知らないままだったかもしれない。



 



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