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「1・5倍の法則」。

 ある展覧会で、ある作品を見た。

『小沢剛*中山ダイスケ クロスカウンター』https://www.taromuseum.jp/pdf/report/12/ozawa.pdf

 
 小沢剛と中山ダイスケという2人のアーティストが、川崎市岡本太郎美術館で、2001年に展覧会を開いたことがあった。小沢は、それから、世界でも活躍するアーティストになり、中山ダイスケは、今は東北芸術工科大学の学長になっているから、それから、長い時間が経っていることを実感する。

 その2001年の展覧会で、小沢剛が展示していたのが、「グローブジャングル」だった。それは、回転型ジャングルジムとも呼ばれていたが、それも2020年代の今では、「絶滅危惧種」のようになっているらしい。


1・5倍

 いろいろと時間軸が錯綜していて申し訳ないが、2001年に戻ると、展覧会で「作品」として展示されていた「グローブジャングル」が、少し違っていたのは、サイズだった。

 見た瞬間に、なんだか、違和感があったのだけど、それは「1・5倍」のサイズで作られていたからだった。だから、アートにもなっているのだけど、その大きさによって、「思い出」に合わせる、といった意図があるようだった。

 ありがちなことだけど、大人になってから、通っていた幼稚園に再訪するような機会があるときに、その園庭が、かなり小さく感じることがある。それは、当たり前だけど、自分自身の体が大きくなったからだ。

 そうであれば、もしも「グローブジャングル」を、通常のサイズで設置していたら、小さく感じるはずだったのだけど、この展覧会で「1・5倍」で作られていたから、大人になっていた自分でも、ちょうど、子どもの頃に見ていた「思い出」と、おそらくは同じような大きさの印象になっていたと思う。

 そんなことも考えさせてくれ、視点を変えてくれたことにも、なんだか感心したのは覚えている。

超合金

 そのことで、思い出したのが、「超合金」という「商品」のことだった。というよりも、「1・5倍のグローブジャングル」の作品で、急に記憶が蘇った、といっていい。

 1970年代、自分が子どもの頃にアニメで放送されていた「マジンガーZ」というロボットアニメがあり、そのロボットをミニチュアにした「超合金 マジンガーZ」という商品が発売されていたときがあった。

 子ども用玩具では、プラスチック製の商品が多い中で、重量感があり、もちろん鉄製か鉛のような中身のはずだったのだけど、それに「超合金」という名前をつけ特別感が出たことで、とても人気があり、だけど、当時の子どものおもちゃとしては、やや高価だったので、私自身は、欲しくても、買えなかった。

 それから、20年以上経った1990年代後半、再び、「超合金」の名前をつけた「マジンガーZ」のミニチュアが発売された。それが、思った以上に売れたらしいのだけど、明らかに、子どもの頃に買えなかった大人が買ったに違いない、と思ったのは、その商品を売店かどこかで見たときに、とてもなつかしく感じたからだ。

 ただ、それが、子ども時代と同じクォリティであったら、おそらくは、なつかしさよりも、ちょっとがっかりしたのだと思うが、その新しい「超合金」は、自分の体感では、倍まで行かなくても、品質は確実にかなり上がっていた。そのことで、子ども時代に感じた「なつかしさ」が再現されたはずだ。

 だから、売れたのだと思った。

法則

 昔の「思い出」が、それから年月が経っても、同じような感覚を感じるためには、バージョンアップが必要ではないかと思っていたが、昔と同等の「なつかしさ」を感じるには、あまり品質を上げても違ってきてしまうから、「超合金 マジンガーZ」を見たとき、どの程度がいいのだろうと考えた。

 そう考えたことを、小沢剛の「1・5倍」のグローブジャングルを見て、思い出し、20年後の「超合金マジンガーZ」が、大人になったときに、ちょうどいいなつかしさを感じさせてくれたのは、体感として「1・5倍」のバージョンアップがされていたからではないか、と思った。


 それ以降、子どものときの「思い出の感触」を、大人になってから、もしくは年月が経ってから、そのまま蘇らせようとするならば、当時の「もの」や「こと」を「1・5倍」向上させる必要がある。と確信するようになり、それを秘かに、しかも、勝手に「1・5倍の法則」と名づけた。


(【バンダイの「マジンガーZ」商品の歩み】)

https://www.bandainamco.co.jp/files/E38090DXE8B685E59088E98791E3839EE382B8E383B3E382AC.pdf

1973 年
マジンガーZ の巨大感を生かした全高 60cm の「ジャンボマシンダー マジンガーZ」(2,650 円/税抜)を発 売。発売初年度に 40 万個を販売。1977 年には、米国で「ショーグン」の名でマテル社から販売され、年間 100 万個以上を販売する大ヒット商品に。

1974 年
「超合金 マジンガーZ」(1,300 円/税抜)を発売。ダイキャスト素材のずっしりとした質感と重量感、ミニチュ アモデルとしての造形の細かさ、ロケットパンチの発射ギミックなどの精巧さが大人気となり、発売初年度 に 50 万個を販売。バンダイにおける「超合金」ブランド誕生の礎となる。

1997 年
大人向けフィギュアのブーム到来を受け、「超合金魂 マジンガーZ」(5,800 円/税抜)を発売。玩具としては 高額であったにもかかわらず、10 万個を販売するヒット商品に。この年以降、サイズやフォルムを変え数度にわたり商品化。

2012 年
「マジンガーZ」生誕 40 周年を記念し、「DX 超合金魂 マジンガーZ」(36,750 円/税込)を国内外同時に発売 予定。

(「超合金マジンガーZ」は、その後も、さらにバージョンアップした製品が発売されていた)。


さじかげん

   小沢剛の作品を見てから、さらに10年以上経って、ギャラリーで見た作品が、日常の製品を「1・5倍」にしたものだった。

美術作家 内堀麻美は、「工業製品」を1.5倍大きくしたサイズの木彫作品を発表しています。それは、人のイメージにあるモノの大きさだそうです。作り替えられたそのモノは”作品”として違和感と存在感を増し、また、日常の中で「工業製品」として再開した時、我々は何を感じるでしょうか。

  それは、それまで自分が勝手に「1・5倍の法則」と名づけていたものを、きちんと後押ししてくれたような気がした。

 その作品は、「親しみ」と「特別」の両方を感じられる気配があった。



(「1・5倍」と直接関係はないと思いますが、この鈴木康広↓というアーティストも、何かを少し変えたり、加えたりすることで、新鮮な感覚に気づかせてくれる人だと思います)。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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