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午後5時の「夕焼け小焼け」の歴史と理由。

 夕方の街に、チャイムが流れる。

 元々の曲よりも、さらに寂しさが増すような音色になっているような気もするけれど「夕焼け小焼け」が、午後5時に聞こえてくる。

 河川敷を歩いていると、多摩川で都境でもあるので、川の向こうの川崎市からも、メロディーが聞こえてくる。

 曲が違う。

 遠くから、いつもとは違う、でも「夕方のメロディー」としかいいようのない曲が聞こえ、近くから「夕焼け小焼け」が流れてくると、当たり前だけど、微妙なズレが生まれる。

 そして、寂しさだけでなく、にぎやかさみたいなものが生まれるし、ちょっと違う曲のような気配までしてしまう。

 さらには、いつもとは、少し違う場所にいるような気までしてくる時もある。

 しかも、川崎市では、季節によって曲自体が違うらしい。
 知らなかった。

午後5時のチャイム

 「若者のすべて」に、夕方5時のチャイム、という言葉が出てくるが、この曲自体が、寂しさとか、夏の終わりの感じが漂っていて、夕方のメロディーのような感触もあるのだけど、午後5時のチャイムというものは、当たり前のように存在しているし、かなり昔からあったような気になっていた。

 日常的に流れているのに、改めて注目された時があったのは、「コロナ禍」になってからだ。

~緊急事態宣言が出されています。夜間の外出は控えましょう~。東京都板橋区の住宅地で午後4時半、鉄塔に設置されたスピーカーから音声が流れた。
 8日から緊急事態宣言が実施され、放送内容を変えた。それまでは童謡「夕焼小焼」のメロディーと、「気をつけておうちへ帰りましょう」という音声を流していた。いわゆる「夕焼けチャイム」だ。

 この記事は、2021年1月に、2回目の緊急事態宣言の時で、いつもと違う音声が流れると、人の関心を引くことになる。

 さらに改めて気がついたのは、この「夕焼けチャイム」の歴史が、意外と新しいことと、変化があるということだった。しかも、場所によって、そのメロディーも違う。文京区には、このチャイム自体がない、というのも、教育で有名な区だから、帰宅を促す必要がないのだろうか、などと余計な邪推もしてしまっていた。

 板橋区教育委員会によると、チャイムは1982年から始まった。当初は「夕焼小焼」のメロディーだけを夏(4~9月)は午後6時、冬(10~3月)は午後5時に流していたが、子どもが巻き込まれる事件が相次いだことなどから、PTA団体が「もっと早い時間から流してほしい」と要望した。2007年11月から時刻を各30分早め、帰宅を促すメッセージも加えた。一方で3月は日没時間の実態に即して夏時間にした。

 もちろん、20代の人からしてみれば、1980年代の初頭だし、生まれる前からの出来事であれば、十分以上の昔だとは思うのだけど、個人的な印象で言えば、昭和のもっと以前から、「夕焼けチャイム」のようなものを聞いていた記憶があった。

夕方のメロディー

 今の「夕焼けチャイム」は、街全体に響いている。

 だから、学校に行かなくなってから、随分と時間が経っている人間の耳にも入ってきて、それは、毎日のように聞いていると、本当に日常の音楽になってしまっていることに気づかないくらい、ほぼ無意識の出来事になっている。

 少し冷静に振り返ってみれば、自分が子どもの頃に聞いていた「夕焼けのメロディー」と一緒だろうか。もちろん今でも地域によって曲名が違うから、全く同じということはあり得ないと思うのだけど、それだけでなく、昔から、街全体にメロディーが響いていたのかどうかが、もっともはっきりとしないことだった。

 だから、あまり根拠のない、個人的な記憶だけに頼ったことなのだけど、子供の頃、あの「夕方のメロディー」を聞いたのは、学校の中だけだったのではないだろうか。
 
 今も、この「夕焼けチャイム」は、子どもの帰宅を促す、といった防犯上の目的もあるらしいので、それと同様に、学校にいて、まだ遊んでいる子どもたちに、もう帰りなさい、を伝えるため、学校のスピーカーを使って、流していたのかもしれない。

 子どもにとっては、学校は、その時の世界全体に思っている場合も多いので、夕方に響いていたチャイムが、どこにでも流れているように錯覚してもおかしくない。

 その記憶と、さらには「夕焼け小焼け」のメロディーは、おそらくは同じだから、今も「夕焼けチャイム」を聞くと、寂しさと懐かしさが混じった気持ちになるのかもしれない。

 だから、その「夕焼けチャイム」の記憶が、実際以上に、とても長い歴史のように錯覚している可能性もある。

「夕焼けチャイム」の理由

 前出の記事の中では、板橋区では1982年から始まったことになっているから、それからでも、すでに40年の歴史があるから、どうして鳴るのか?その理由に対しては、普段は考えないくらい、定着度合いは高くなっていると思う。

 それでも、その理由を検索すると、すぐに、このサイトが見つかる。

午後5時を定刻としたチャイム放送は、防災行政無線の機器が緊急時に正常に動作するかを常に行っているものです。

 神奈川県海老名市のサイトに、これだけはっきりと書かれているので、オフィシャルで、信ぴょう性も高く、読んだ瞬間、納得してしまった。

 というよりも、この理由を挙げられてしまったら、あのスピーカーのそばに住んでいる人から、もしも、「毎日うるさいから、なんとかしてくれ」と言われても、その反論としても、とても有効だと思うし、黙るしかなくなるように感じる。
 
 だから、これからも毎日、この「夕焼けメロディ」を聞くことになるのだろうけど、もし、そのことに対して、違和感を覚えるとすれば、そのメロディーが聞いた事のない曲になる時だと思う。

 ただ、これだけの時間、定着してしまったことを変えるときは、相当な抵抗がある予想もつく。

 それだけ、日常が変化することへの抵抗感は、強い。


 個人的には、変えるのであれば、「若者のすべて」にして欲しい、とは思っています。


(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただけると、うれしいです)。



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