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小説

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#創作大賞2023

【短編小説】お花を咲かせるために。

【短編小説】お花を咲かせるために。

ある人は、勝手に育てば良いと、植えた種に水やりをしない。

注いだ水が多過ぎても少な過ぎても、申し訳ないと要望を言えないし、そもそも育てようと思わない。

咲かなかったらどうしようとか、水を注いだ人に責任を負わせるのが申し訳ないと思うんだろうから、「がんばれ」とだけ言っておこう。

もし枯れた時、自分に責任が負わないようにしてるんだったら、雨が降った時の水と晴れの時の日光で、自分の力で、育てば良い

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【短編小説】愛のクスリ。

【短編小説】愛のクスリ。

とある山奥に、ある少年がいました。

その少年には他に、3人の家族がいました。

しかしながら、青年が物心つく前に両親は病死し、物心ついた頃には、兄は病に伏せ、布団の上で残りの寿命を全うするしかない状態でした。 

更に兄は心も病に蝕まれ、誰かが少しでも兄に近づこうとすると、狂気めいたことを大声で口にし、門前払いする者と化しており、少年は、兄を見守ることしかできませんでした。 

その時の少年の心

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【短編小説】ロボット。

【短編小説】ロボット。

ロボットの僕は、燃料が切れると動けなくなる。 

他のロボットたちもそうだ。

働きすぎると、機器が熱を帯びて、パンクする。

状況によっては働きながら充電することだってあるけど、そうすると、そのロボットの寿命は短くなる。

部品を直しても、充電しても、動けなくなる。

ふふっ、まるで人間のようだろう?

眠眠打破を飲みながら、24時間365日働き続けることには限界がある。

つまり、何事にも、誰

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【超短編小説】君に届け。

【超短編小説】君に届け。

僕たちの光が、地球のみんなに届くまでは、沢山の時間がかかる。 

でも、その瞬間その瞬間の光に、僕たちは様々な想いを込めるんだよ。

そして、君たちの寿命はそれよりも遥かに短いから、この人に届いて欲しいって願った光も、届かない間にその人が死んでしまう時もあるんだ。

それに、最近の地球は地上が明るくなって、僕たちが見えにくい環境になってしまっているしね。

一等星とかは見えやすいと思うんだけど、小

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【短編小説】幸せのお店。

【短編小説】幸せのお店。

ここには、沢山の人が並ぶお店が数多くあります。

その中でも私は、幸せのお店で順番を待つことにしました。

こんな簡単に幸せになれるなんて、そんな奇跡あるのだろうか…。

そわそわそわそわ…。
きっと、世間の言い方としてはそう表現するのでしょう。

次は私の番かな、それとも、次の次かな。

暫く待ったけど一向に呼ばれる気配はありません。 

受付の番号の順番を見に行きましたが、私の番はまだです。

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【超短編小説】陰でも僕は、回り続ける。

【超短編小説】陰でも僕は、回り続ける。

僕は、ずっと回ってる。

みんなを、快適にするために。

くるくるくるくる、何度も同じ場所を回ってる。

ても、小柄な僕の役割に、存在に、気づいてくれる人は少ない。
でも、それでも良いんだ。

だって、僕は影の存在だから。

僕は、空気を循環させる働きがメインだから。
僕は、サポーターだから。
クーラーや扇風機には、どうやっても敵わない。

でも、就寝時とか、部屋が広くない家庭とか、僕を主役にして

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【短編小説】桜物語。

【短編小説】桜物語。

4月も中旬にさしかかるある日、公園で遊んでいたら、桜に声を掛けられた。

「もうそろそろ春が終わってしまうから、今年の僕が死ぬ前に、願いを叶えてくれないか?」

どうやら、桜は毎年、別人に生まれ変わるらしい。

来年生きられないならしょうがない、そう思って、協力することにした。

1つ目の願いは、「お店の中に入ってみたい」だった。

木である桜が、どうやったら動けるのか聞くと、花びらを1枚持ってい

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