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#37 不思議な泉の溶けない雪の華

「着いたわ。」

顔を上げるとそこは公園のような場所だった。

ただし、全てがうっすらと雪に覆われて
色味が無く、なんとも寂しげな雰囲気だった。


「ここ、公園?ですか?」

Oliviaのお母さんは、
その中ののようなものに近づいていった。

「そう。ここの泉の水がね、不思議なのよ。」


そう言われて私も近づいてみたが
水が吹き出さない、石造りの噴水のようなところで
特に変わった感じはしなかった。

中央部分から水が湧き出ているような
流れがとても緩やかにあるが
水面はほとんど動かず、
まるで大きな水盆のようだ。


振り返ってみると、
OliviaとOliviaのお母さんは親子揃って
あのいたずらっぽい笑顔を浮かべていた。


気付かない私に我慢できず、Oliviaが言った。
「その水、細かい何かが浮かんでない?」

私は言われるまで泉全体を見ていた。
Oliviaに言われて、すぐ手前の水面に注目してみた。

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そこには雪の結晶が浮かんでいた。
「あっ!雪の結晶が…!」

またOliviaが我慢できない様子で
食い気味に返事をした。

「そうなの!ここの泉の水に浮かんだ雪の結晶は
綺麗な形のものだけが溶けないで残っていくの。


Oliviaのお母さんが付け加えて
この泉に関する話を聞かせてくれた。

「この泉はね何百年も前に
幼くして亡くなった王女様の為に
その当時の王様が造ったものなの。

それで、この泉が完成して
初めて雪が降った日から、
綺麗な雪の結晶だけが溶けないで浮かぶ
不思議な現象
が起こり続けてるのよ。

なんでも、その王女様、
雪が大好きだったんだって。
だから、その王女様の魂が
宿ってるんじゃないかっていう噂よ。」

「なんだか哀しいお話かと思ったけど
街にこの泉を造るなんて、
王族の街への愛と親子愛を感じますね。」

「なんだか素敵よね。」


そう言いながらOliviaのお母さんは、
小さな箱とハンカチを出した。

「さぁ、持って帰るわよ。
いくつか掬ってちょうだい。」


そう言われて水に手を入れようとした時、
ふと疑問が出てきた。

「この水って、直接触っても大丈夫?
私も凍ったり何かしない?」

「あはは。ヒトには害はないから大丈夫よ。」

そう聞いて、雪の結晶を掬い始めた。

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手に取ってよく見てみると、
ひとつひとつ形や色が少し違った。

じっくり見てみると
時折キランと大きく光を反射して
とても綺麗な宝石のよう
だった。



これが不思議な泉の溶けない雪の華
仕入れた時のおはなし。
続きはまた次回に。


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