#35　鉱石に舞う小さな蝶

2020年11月11日 21:29

鉱石商のPierre（ピエール）が
私が購入した

すると、後ろからOliviaのお母さんが
Oliviaに声をかけた。

「Olivia、今回も持って帰ってきたわよ」

その手にはとても小さな小瓶が
数本握られていた。

それを見たOliviaは
とても嬉しそうに小瓶のひとつを手に取った。

「わぁ、嬉しい！
ママありがとう！！」

「あなたもいる？
いくつか持って帰ってきたから、あげるわ。」

Oliviaのお母さんは
私にも小瓶のひとつを渡してくれた。

「いいんですか！ありがとうございます！」

Oliviaが食い入るように見つめる
その小瓶の中には小さな鉱石と水が入っていて
その周りをとてもとても小さな蝶が舞っていた。

「良い石が採掘できる洞窟では
必ずと言っていいほど
この小さな蝶が棲んでいてね。

こうしていつも数匹、
小瓶に入れて一緒に持ち帰るの。」

「水の中で…飛んでいる？んですか…？」

「飛んでいるというか、泳いでいるというか…
舞っているって感じよね。

この蝶達は、お気に入りの鉱石を見つけると
その周りから離れないの。
この鉱石は、洞窟の中で滴り落ちる水が
結晶化したものなんだけど、
その水の中に棲んでるのよ。」

確かに水の中には
鉱石のカケラのようなキラキラとしたものや
鉱石の素になりそうなものが
漂っている。

「この鉱石とその水があれば
その蝶はずっと生きているわ。」

「ホント小さくて可愛い！
今回の蝶も可愛い。
またコレクションが増えたわ。」

Oliviaもお母さんも嬉しそうだった。

「この水って少しとろみがある感じですよね。
なんだかミニチュアのスノードームみたいで
ずっと見ていられますね。」

「そうでしょう？
ずっと観察していたくなるでしょう。
でも、あんまり激しく降らないでね。
蝶がびっくりしちゃう。」

「確かに…」

包装を終えたPierreさんから
品物を受け取り、私達は店を出た。

Oliviaは時折、小瓶の中の蝶を観察していた。

Oliviaのお母さんと私は
これまでのOliviaとのことを
色々と話しながら街を歩いた。

「これから私達、氷の国に行くけど、
あなた、予定がないなら、一緒に来ない？」

「氷の国！？行きたいです！」

「行きましょ。
少し早いんだけど、
クリスマスの準備しなきゃね！」

そう話しているうちに、
街の扉に辿り着いた。

これが鉱石に舞う小さな蝶を
仕入れた時のおはなし。
続きはまた次回に。

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