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  • 農学教育

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神の子羊は雄? それとも 雌?

日本にいると世界の歴史におけるヒツジの意味と重要さを実感することは困難です。  文化は言語の共有が基盤であるのに対し、文明は技術・技能の共有が基盤にあります。  この考えに基づくと、日本文化は日本語を共有する事が基盤にあり、稲作技術が導入され普及するのに伴って日本文化と日本語が充実してきたのではないでしょうか。 その結果、神前に捧げる最も尊いもののシンボルが、稲作の成果である米とお神酒に収斂されたというのは自然なことの様に感じます。  これに対し、旧約聖書の世界はヘブラ

    • ゾイナー「家畜の歴史」

      子供の頃や学生時代は、様々な経験と学習、そして偶然の出会いが混合して心の中で複雑な化学反応が起こり、少しずつ「自分にとっての必然」が芽生えてくる時代ではないかと思います。 私は、北海道の地方都市で生まれ育ち、子供のころは近所の酪農家の牛舎を遊び場にして育ちました。当時、私の家の周り畑は馬で耕され、畑には亜麻が栽培されており、田植えや稲刈りはまだ全て手作業でした。そして、1960年代に公立の小中学校でパンとミルクの給食を食べて生活する中で、次第に家畜に興味を持つようになり大

      • オンライン授業が招く教育改革 Part-2

          オンライン授業を開始して約2ヶ月が経過しました。新学期の開始が4月下旬にずれ込みましたが、3月になって突然「新学期の授業を全てオンラインで行う」という連絡があったことを考えると、この一ヶ月はこれまで全く経験のなかったオンライン授業を行うための貴重な準備期間となりました。   当初はZoomを使ってリアルタイム授業を開始しましたが、職場での会議等がほぼ全て Ms-Teams で統一され、授業も Ms-Teams の利用が推奨されたため、第3回目の授業からは Ms-Team

        • オンライン授業が招く教育改革

           今回の新型コロナウィルのパンデミックは、人々の生死に直接かかわるため世界的に大きな関心が集まっており、ヨーロッパやアメリカを始め、世界の都市や国で外出禁止令が出され、幅広い社会活動に大きな影響を与えています。その中で、感染の拡大を防ぐために学校が休校になったため、オンラン授業が急速に導入されつつあります。そこで、本稿では、学校のオンライン授業が今後どのような影響をもたらすかについて考えてみることにします。  東京や大阪の様な大都会では、朝夕の通学ラッシュが当たり前であり、

        神の子羊は雄? それとも 雌?

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        • 農学教育
          4本

        記事

          忖度

           ひところ「忖度」という言葉な世間を騒がせた。相手の言外の意を汲み取る事を意味するこの言葉には、「気が利く」に繋がり、社会生活を営む上で必要な要素が含まれる。その一方で権力者に阿り、第三者が権力者にとって都合が良いような行為を行うことを通して、自分または自分の所属する組織に有利なように物事を運ばせることに繋がる。その結果、責任関係が曖昧になったり真意が伝わりにくいと言う問題点を孕んでいる。  従って、恐らく多くの場合、「忖度」はあまり良い意味で使われることはないが、近年、

          新型コロナウィルス考

             現代社会は、人と物が地球上のどこにでも自由に移動できること大原則として経済発展を遂げてきましたし、そもそも人類の歴史は、現代人の先祖がアフリカ大陸から出て以来、移動の歴史であるとも言えます。  その結果、現在では観光が大きな産業になるとともに、便利な製品や新しい情報が極めて短時間で世界中にいきわたり、便利さや楽しさを世界中で享受できる世の中が近づいてきたように思いました。  けれども、その一方でジェット機で自由に移動できるという事は、化石燃料を大量に消費して排気ガス

          新型コロナウィルス考

          冬に卵が食べられる不思議

            鶏の卵は、様々な料理に欠かせない食材として利用されており、スーパーマーケットに行くと、一年を通していつでも販売されているので、多くの人は、何の疑問もなく買い物かごに卵を入れると思います。ところが、秋から冬にかけて卵が販売されている事自体が、実は大変不思議な事であることに気付いている人は少ないのではないでしょうか。  鳥類に限らず、動物も植物も子孫を残すのに最も適した時期、つまり暖かくて水があり、環境の変化に対する抵抗力が弱い子孫が生き残れる可能性の高い時期に繁殖します。

          冬に卵が食べられる不思議

          満員電車

          しばらく時間を隔ててから昔の体験を追体験すると、昔の出来事が芋づる式に次々と思い浮かぶということは誰しも経験することだと思います。 実は先週、久しぶりに東京で満員電車に乗ったのですが、人ごみの中に身を置いた瞬間に数十年前に代々木にある某大手予備校に通った日々の事を思い出しました。通学ラッシュとは無縁な地方都市で育った私が、上京して直面した最初の試練が通学電車でした。毎朝駅に行くと、ホームにできた電車の到着を待つ人の長い行列の最後尾に並び、電車が到着してドアが開いた途端

          満員電車

          ボヘミアン・ラプソディー

            イギリスのロックバンド「クイーン」のリードボーカルであったフレディー・マーキュリーの生涯を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディー」が多くの人の感動を呼び起こし、異例のロングランが続いています。日本でのこの映画の観客動員数が100万人を超えたことからも、如何にこの映画が多くの人の心を打ったかが窺えます。この映画についてテレビやネットに書かれているる記事を見ると、私の様にクイーンが活躍していた1970年代を知っている人ばかりでなく、若い世代からも絶大な支持を得ていることが特

          ボヘミアン・ラプソディー

          宗教と家畜の関係は日本人には理解しにくい

           キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の共通の聖典である旧約聖書は、羊を中心とした遊牧民の世界を描いたものであり、聖書における羊飼いは、羊のように弱く自分では行く道がわからない人たちを、守り正しい道に導いて下さる神様に例えられています。実際にアブラハムは、その生涯のほとんどを遊牧民として過しました。  世界の宗教人口を見てみると、キリスト教(22億人、30.4%)、イスラム教(15億人,22.2%)、ヒンズー教(9.1億人)、仏教(3.8億人) とのことですので、世界人口の半分

          宗教と家畜の関係は日本人には理解しにくい

          地球上のあらゆる場所に人間が住むことができる理由

           動物が生きていくための最低条件は食べ物がある事であり、草食動物には草が必要であり、肉食動物には餌となる動物がいることが必要です。草食動物といっても草であればなんでも食べられるわけでなく、パンダの様に笹しか食べない動物は笹の生えている地域にしか住めませんし、肉食動物は補色の対象となる動物がいる場所でしか生きていかれません。その意味で、人間が地球上のあらゆる場所に人間が住むことができる理由の一つは人間が雑食性の動物だからです。  つまり、生きていくために必要な栄養素をほぼすべ

          地球上のあらゆる場所に人間が住むことができる理由

          ミルクの利用がなぜインドとミャンマーで異なるのか?

           ミルクの利用がなぜバングラディシュとミャンマーで大きく異なっているかについては、色々な側面から考える必要があると思います。  まず言語学的にみると、そもそもビルマ語、タイ語、ラオ語、クメール語などは古代インドの言語であるサンスクリット語から派生したのものですので、文化的にはインド(バングラディッシュを含む)と東南アジア諸国の間は共通点が多い地域です。  一方、ミルクの利用と点からみると、インドを中心とした南アジアでは、調理の際にヨーグルトやギー(英語:Ghee)と呼ばれるバ

          ミルクの利用がなぜインドとミャンマーで異なるのか?

          農学部

           以前韓国で開催された学会に参加した際に「日本には農学係の4年制大学が50大学以上ある」と申し上げたところ「日本にはそんなに多くの農学係大学があるのか」と大変驚かれました。この反応に今度は私が大変驚き、それをきっかけになぜ日本の50 以上の大学に農学関係大学があるのかについて考えてみました。その結果、日本の国土は「気象条件と立地条件」つまり地域特性が高いため「技術の普遍化が難しいため」という当たり前の結論に至りました。  思い起こせば江戸時代の日本には、300 余りにもおよぶ

          農学部

          日本の大学における農学教育の現状と課題

          6 年に東京帝国大学(現在の東京大学)が日本における最初の大学として発足した。この時以来 110 年が経過したが、その間に日本の大学を取り囲む社会・経済状況は何度か大きく変化し、社会が大学に期待する機能もまた時と共に変化してきた。永井(1965)によると日本の大学システムは3期に分けられる。即ち第1期は、明治期~大正初期(1868-1918)、第2期は大正期~第2次世界大戦終結まで(1918-1945)、第3期は第2次世界大戦終結 (1945)以降である。  これを農学教育に

          日本の大学における農学教育の現状と課題

          ランド・グラント大学が日本の大学に与えた影響

            1. アメリカのランドグラント大学をモデルとした北海道の開拓  明治初期の北海道は道南地方や沿岸部を除いて大半が未開地で、この地の開拓は政府にとって緊急の課題となっていた。特に南下政策をとるロシアとの間では樺太(サハリン)の帰属をめぐり江戸時代末期からしばしばトラブルが生じており、土地を開き国民を定着させる必要があった。このことは単に北海道の開発を図るというだけでなく、外交上の問題としても重要視されていた。さらに、明治維新等により職を失った武士階級に職を与えることは、明治

          ランド・グラント大学が日本の大学に与えた影響

          ランドグラント大学

          本稿は、アメリカ合衆国におけるLand Grant University (土地付与大学:以下ランド・グラント大学)における農業普及プログラムの概略を提示するのが目的ですが、本論に入る前にアメリカにおける大学の分類について簡単に説明します。 1) リベラルアート系大学: ヨーロッパの大学における自由七科(文法学、論理学、修辞学、数学、幾何学、天文学、音楽学)の伝統を引き継ぎ、リーダー養成を目指し教養教育の伝統を重視する大学であり、代表例が、東海岸のIvy league 8 大

          ランドグラント大学