オンライン授業が招く教育改革

 今回の新型コロナウィルのパンデミックは、人々の生死に直接かかわるため世界的に大きな関心が集まっており、ヨーロッパやアメリカを始め、世界の都市や国で外出禁止令が出され、幅広い社会活動に大きな影響を与えています。その中で、感染の拡大を防ぐために学校が休校になったため、オンラン授業が急速に導入されつつあります。そこで、本稿では、学校のオンライン授業が今後どのような影響をもたらすかについて考えてみることにします。

 東京や大阪の様な大都会では、朝夕の通学ラッシュが当たり前であり、中には片道1-2時間かけて学校に通う人も珍しくありません。ところが、今回の新型コロナウィルスのパンデミックにより、感染の危険がある通学を行わずに自宅待機するという事態が発生しました。それに伴い、各地で学校の授業を実際にオンラインで行うことが試みられています。大学においても、4月になって、一斉にオンライン授業が開始されました。

 それでは、これから先なにが起こるのでしょうか。私の考えるところでは、実際にオンライン授業を行った結果、本当に教室に集まらなくてはいけない部分と、必ずしも教室に集まる必要が無いことの仕分けが進んでいくのではないかと思います。

 つまり、今回の新型コロナウィルスのパンデミックにより、これまで一部の学校に限られていたオンライン授業が、数か月という短時間の間に突然デフォルトとして社会システムに組み込まざるを得ない状態が作りだされました。その結果、これまでよりも高い次元のネットワーク時代が一気に稼働し始めました。さらにこのオンライン授業の波は、日本国内だけに限らず、世界中で一斉に起こるという前代未聞の形で始まったことに今回の特徴があります。

 それでは、現在進みつつあるオンライン授業の先には何があるのでしょうか。まず、これまで学校ごとに行っていた仕事の中で、共通性の高い部分が集約化されていくことが挙げられます。具体例を挙げると、初等・中等レベルの数学、英語、自然科学といった地域特性が少なく、社会生活を営む上で誰もが一定以上のレベルの知識が求められる科目が候補になると思います。

 これらの科目は、達成度に合わせた授業を全国的、場合よっては世界的な規模で分担することが可能であり、教育資源の重複を避けつつ得意分野を世界展開できる新たなチャンスが生まれると考えられます。

 また、英会話に関しては、日本国内では英語を実際に話す機会が限られているため、会話能力を磨く機会が限られていますが、ネット上で多国籍クラスを構成して授業を行うことにより、居ながらにして語学留学と同じ環境を作り出すことが可能です。

 また、アメリカでは ESL (English for Scond Language)という英語圏以外の生徒に英語を教えるプログラムが発達しており、日本人に対する英語教育についても多くの知見が蓄積されています。もし、ESL プログラムに日本からアクセスすることができれば、実践的な英語教育法を学ぶ機会が得られます。

 さらに、大学においては1-2学年の教養科目や総合科目、あるいは教員免許に関する科目を全国の大学で共有できる可能性があります。

 その一方で、教員が生徒や学生に直接対応しなくてはならないのは、国語科、英語科における作文の添削と評価、理科の実験、社会システムに関する演習、集団生活のルール、生活指導、進路指導といった生徒の適正や個性、創造性に拘る事項や、実技を伴う技術科、家庭科、体育科、芸術科等が挙げられます。

 この様に考えると、今回の新型コロナウィルスのパンデミックは、これまでの教育の常識が一変するようなきっかけになる可能性が高いように思います。ただし、どの様に変わっていくのかは、全く想像がつきませんが。

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