新型コロナウィルス考

   現代社会は、人と物が地球上のどこにでも自由に移動できること大原則として経済発展を遂げてきましたし、そもそも人類の歴史は、現代人の先祖がアフリカ大陸から出て以来、移動の歴史であるとも言えます。

 その結果、現在では観光が大きな産業になるとともに、便利な製品や新しい情報が極めて短時間で世界中にいきわたり、便利さや楽しさを世界中で享受できる世の中が近づいてきたように思いました。

 けれども、その一方でジェット機で自由に移動できるという事は、化石燃料を大量に消費して排気ガスを成層圏にばらまいている事ですし、スマホの様な便利な製品が自由に手に入るという事は、数年先にはごみになるものを刹那的にありがたがっている事ですので、自由な行動や便利な道具が地球環境に与えるの負の影響には目をつぶってきた様に思います。

 病気の面から見ても、帆船航海の発達に伴い梅毒が世界中に広がったり、ヨーロッパでペストが蔓延しました。近年をみても、インフルエンザやエボラ出血熱など、地域的に大きな影響を与えた伝染病は数多くありましたので、伝染病は人間の移動に伴う必然ともいえますが、これまでの伝染病は、感染地域が限られていたり、伝染のスピードも今回に比べれば限定的でした。

 その様な観点から今回の新型コロナウィルスによるパンデミックをみると、これまでとは全く異なり、昨年秋に中国で最初の感染者が確認されてから半年以内に全世界に広がり、多くの死者を出し世界中を大混乱に陥れました。

 それでは我々の先祖は、これまでに起こったパンデミックをどの様に乗り越えてきたのでしょうか。

 1350年頃にヨーロッパでペストが大流行したのを機に1370年にはパリ(フランス)に下水道が作られ始めましたし、疾病が海外から到着する船で運ばれてくることに気づいたイタリアのベネチアでは40日間の検疫期間を設ける政策をとりました。英語で検疫のをQuarantineと言いますが、これはベネチア地方で40日間を表す(quaranta giorni)に由来します。

 この事を考えると、今回の新型コロナウィルスのパンデミックが終息した後は、いつかまた必ず未知の伝染病が蔓延することを前提として現在の検疫制度を見直す必要性があると思います。

 それがどの様な形になるのかはまだわかりませんが、国外に出国する際には、少なくとも過去3週間の健康記録の提出が義務付られる必要がある様に思います。さらにはあまり考えくありませんが、腕などに体温等の健康状態を記録するマイクロチップの埋め込みを義務付る国さえ現れる可能性すらあるように思います。

 もしかすると今回の新型コロナウィルスによるパンデミックは、行き過ぎた自由主義に対する警鐘であり、私たちに「自由」には「コスト」と「犠牲」が伴うことを極めて厳しい形で示している様にさえ思えてきます。

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