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鑑賞ログ「ザリガニの鳴くところ」

221123

劇場で予告編を観て鑑賞決定。

1960年代の終わり、ノースカロライナの町から離れた湿地帯で若い男性の遺体が見つかる。容疑者となったのは湿地帯で一人暮らすカイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。町の人々は風変わりな彼女が犯人に違いないと断罪する。たった一人、弁護士のミルトン(デヴィッド・ストラザーン)を除いて。なぜ彼女がそこにいるのか、彼女は何者なのか。閉ざされた湿地帯で彼女に一体何があったのか。そこには想像もつかないドラマがあったという物語。

色々なところにこれはきっと伏線だなと匂わせるものが結構わかりやすく出てくるから、ぐいぐい作品の世界の中に引き込まれる。
ミステリーであることはもちろん、少女の成長物語でもあり、恋愛要素あり、ヒューマンドラマでもある。ドキドキしてヒリヒリして、ちょっともう安心かなと思いきや絶望に突き落とされるという、王道の面白さ。

ビジュアルから匂う静謐な部分もあるし、薄暗い湿地と明るい浜辺とか、町の人工的な感じと湿地の自然とか、二人の男とか、いくつかの対比が作品に緩急をつけている気がする。
キャラクターもとても立体的。特にカイアとチェイスが複雑。その複雑さも含めて生きるということを描いているように思うな。あぁ、人生って割り切れることばかりじゃないし、どっちかっていうとどうしてこうなったの?の連続でもあるよねと。寂しさを埋めることとと恋愛の曖昧な境界とか。そういうところも含めて、綺麗事じゃない人間の物語を描いている作品のように感じる。

戦争で心に傷を負ったと考えられる父親は人嫌いで、娘のカイアに人を避けるようにしつけたことが、彼女への呪いになってしまう。そして、彼女が自分で選ぶ前に彼女の人生が決まってしまったというのが切ない。町から離れて暮らす子どもを誰も守ってくれず、自分で切り開いていかなければならない。
そして町の人たちもそんな彼女を受け入れない。こういう見えない壁ってほんと無意味だと思うけど、どこにでも存在するな。本当の彼女を知る人間だけが彼女に優しい。できればそっち側の人間でいたい。

人生はいいことも悪いこともあって、たった一人で生きてきた彼女が愛を知ったり、人生を切り開いたりしていくという一代記でもある。
誰も知らずに転がっていた小さな種が、大きな花を咲かすような感じだな。そして、この生活の中で、美しく育つというのはやっぱり重要な要素だなと思うよね。なんかこう、森の奥でひっそりと暮らしていた女の子を王子様が見つけて…という童話的な要素もある気がする。

では、作品の肝は何かというと、主人公のカイアが父親を見て一番学んだことが彼女の人生を決めたということなんじゃないかと思う。

幼馴染のテイト(テイラー・ジョン・スミス)と町の有力者の息子チェイス(ハリス・ディキンソン)。二人ともイケメンだけど、ノースカロライナにはこんなシュッとしたメンズがごろごろしてるのか?いや、登場人物が少ないだけか笑。
ミルトン弁護士のデヴィッド・ストラザーン、どこかで観たことあるんだよな。「リンカーン」とか「テンペスト」とかかな。

エンドロールで流れるのがテイラー・スウィフトの曲ということにびっくり。ま、元々カントリーの人だから言われてみれば納得なんだけれど。

期待以上の面白さだったなー。人間は計り知れないな、やっぱり。

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