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鑑賞ログ「異動辞令は音楽隊!」


阿部寛主演作。なんとなく作品の存在は知っていたけれど、なんとなくピンときいなかった。でも本人のPRに乗せられて観ることにした。困ってる阿部寛が観たい。
ちなみに、阿部寛のアナログな公式サイトはもうかれこれ15年以上、もしかしたら20年くらい見守り続けている私。愛を感じて好きなんだよね、あのページ。

さて、とある県警に、時には暴力も厭わない刑事畑一筋の鬼のような刑事がいる。警察でさえもコンプライアンスが重んじられるこの時代で時代に取り残されたような存在の彼・成瀬(阿部寛)は行き過ぎた言動の結果、異動を命じられる。その異動先は、彼の今までのキャリアとはかけ離れた警察音楽隊だった。後輩でバディの坂本(磯村勇斗)と追っていた未解決の事件を残したまま、不本意な”栄転”を果たした成瀬。酒向芳演じる指揮者をはじめ、渋川清彦演じるパーカッションの先輩・広岡、高杉真宙演じる皮肉屋の北村、そしてシングルマザーとして息子を育てる清野菜々演じる来島などキャラが濃い面々ばかりの音楽隊。一方プライベートでは、認知症が進んだように見える母(倍賞美津子)と、別居している高校生の娘(見上愛)がいる。最近のことを覚えられない母と、思春期の娘との関係に時にオロオロし、時にイライラする毎日を送っている。

映画を観始めてから、この作品の落とし所はどこなんだろう?と疑問符。警察を題材にする上で音楽隊をやめて県警の捜査一課に戻ってハッピーエンドではカドが立つし…。と言うことは、音楽隊で頑張るっていう方向か…と作品を観ながら想像。でも成瀬はしばらく音楽に集中しないし、事件解決に執着している。これがどうやって音楽の方のスイッチが入るのかと思いながら鑑賞。

警察という組織の中の花形である捜査一課から、存在意義そのものに疑問の声が警察内部からも上がる音楽隊へと異動した主人公の悲哀。成瀬が嫌だ嫌だと思いながらやっている仕事も、音楽隊と通常業務を兼任している他の隊員から見れば恵まれていることを知ったり、実は音大卒の来島と交流する中で自分を見つめ直すことに。そして、横暴だった自らを顧み、さらに押し付けられた業務について真摯に向かい合う。いわば”置かれたところで咲きなさい”的な展開。
人間味はあるし、エンタメ性もあるし、作品としては面白いけれど、もうちょっと主人公の覚醒について物語が深化する部分があってもいいんじゃないかと感じたなぁ。2時間のスペシャルドラマでもいいかも、と思いながら逆にドラマと映画を分ける明確なラインってなんだろうなと考えたり。結局プロデューサーの所属が映画なのかテレビなのかということかな?

とはいえ、オーラスからのラストシーンは高揚感があって、邦画にありがちなくどさのないすっきりとした終わり方も良かった。
鬼刑事時代の阿部ちゃんの足の長さが衣装でこれでもかという感じで殺されていた反動で、きちんと音楽隊の制服を着た阿部ちゃんがすごいかっこいい。やっぱり衣装の力ってあるなと感じた。あと、ドラマを叩く阿部ちゃんの背中に惚れ惚れした作品でもあった。


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