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鑑賞ログ「イニシェリン島の精霊」

230201

ビジュアルとコリン・ファレルで見ること決定。
なんか重たくてよさそうな感じに期待。評判がいいというのも耳に入ったし。

1923年、アイルランド紛争の最中の対岸の島・イニシェリン島。狭くて誰もが顔見知りのような島で、毎日一緒にパブで黒ビールを飲んでいた親友に突然告げられた絶交。お互い独身だし、何年も一緒に飲み明かしてきたのになぜ?と主人公のパードリック(コリン・ファレル)は元親友になりつつあるコルム(ブレンダン・グリーソン)に縋る。しかし、コルムから返ってくるのは的を得ない答えばかり。二人の間に入った亀裂は、やがてパードリックの妹であるシボーン(ケリー・コンドン )や、駐在の息子でちょっと足りないドミニク(バリー・コーガン)にも及んでいき…という話。

イヤミス!暗澹とした曇り空の閉塞感の中で展開する息が詰まりそうな人間模様。「父、帰る」とか「ラブレス」のズビャギンツェフが大好物なんだけれども、それに通じるようなざらりとした味わいの作品。いい意味で辛くて最高。苦いレモンを齧ったような鑑賞後感。

対岸には戦火があがり、親友は突然いなくなり、取り残されたような孤独。

監督は「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。調べると、両親がアイルランド人なんだな。「スリー・ビルボード」の方が作品としてはわかりやすいし、感情移入しやすいと思う。でも甲乙つけ難いな。

まー、コルムの行動がビビットでビビる。生とか死とか、嘘とか血とか、正しいとか正しくないとか、そういうものが島という狭い社会のなかで、それぞれの境界線が曖昧なまま存在しているような雰囲気だった。そして、視点を変えればいくらでも環境を変えることはできるはずなのに、外に踏み出そうとはせずに、自分を孤独にする環境のなかでぐるぐると回っているように見えるパードリックが妹と対比される。

個人的には冒頭のコリン・ファレルの八の字眉毛を拝んだだけでちょっと満足。あと、衣装とか小物が可愛い。シャツインしてるコリン・ファレルがよい。というか、パードリックとシボーンが住む家が可愛い。あとバリー・コーガンもよかったな。「エターナルズ」とは全然違う役どころ。神経質さなんて全然ないけど、ちょっと憎めない。彼もアイルランド出身。
この作品にて出てくる癖が強いというか、偏屈な人たちって昔の物語とか、落語とかにはよく出てきた気がする。鼻つまみものにも人権があるというか。けど、最近は身近にいない気がするな。どこに行ってしまったのか。教育のおかげでいなくなってしまったのなら寂しい気もする。

期待に十分答えてくれた作品。ドライな悲劇。こういう作品を観ると精神がちょっとまともになる気がするのはなんでなんだろ。

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