【note商店街】気まぐれ写真ギャラリーぽこねん #002「くもりの日」展
コロン、コロロン。
今日もバンブー製のドアベルが不思議な音を鳴らす。
「こんにちはー」
「あ、どうも。いらっしゃいませ」
「外、雨ふってきちゃって」
「あぁ、朝から曇り空でしたもんね。どうぞどうぞ、雨宿りに」
「ふぅ、じゃあちょっとひと息。あ、また写真入れ替わりましたね」
「ええ、気まぐれでしょっちゅう変えてます。今日は、『くもりの日』展です」
「くもりの日……。なんかまた、えらい中途半端なところを。あ、そういや昨日から梅雨入りしたらしいですね。もしかしてそれで?」
「おすすめはどんよりぐもです」
「……話聞いてます? 」
「えぇまぁ、どんよりって天気も『暗い』ばかりじゃないですよ。なんかほら、例えば夕焼けを見に行こうとか予定している恋人たちがいたとして、どんより曇り空だと『あーあ、曇りかぁ』とか、まずガッカリされるじゃないですか。でも、曇りもけっこう、いいんだけどなぁって……」
「あ、僕それなんかわかります。空がキャンバスのアートみたいで」
「お客さん、私よりよっぽどいいこと言いますね!そうなんですよ。なんていうか、こう雲間から光がふわぁ〜って差し込んでくるときとか、あぁ、生きててよかった…!ってなるというかね、そうそうこの前も……」
「えっと、じゃあ僕ちょっと写真見てきますんで、それじゃまた」
* * *
『くもりの日』展
太陽ほどありがたがられることもなく
雨ほど意識されることもなく
気づけばそこにある 雲
たまに意識されるかと思えば
じゃまものあつかい
そんな雲が
なくてはならない 風景を集めました
このきせつ
どんより空を見上げる あなたの気持ちが
どうか すこしでも
ゆかいなものに なりますように
* * *
「そういえば店主、商店街オーナーのオウェノさんから開店祝いに『ぽってりとした白とピンクの紅白まんじゅう』もらってませんでした?」
「えぇっ、なんで知ってるんですか。おかしいなぁ。あんまりぽってりとして美味しそうだから、ひとりでこっそり食べようかと思ったのに……。しかたないなぁ(ガサゴソ)、はい、どうぞ、おすそ分けです」
「やった!」
「これと合わせるなら今日はすっきりとしたお茶を。えーと何があったかな。緑茶とほうじ茶、黒豆茶と、ルイボスティーがありますけどどうします?」
「うーん、今日はシンプルに緑茶の気分です」
「はーい。ちょうど、知り合いのお茶屋さんからいい茶葉をいただいたんですよ。雨も強まってきたし、どうぞゆっくりしてってくださいね」
そう言って店主は、バックヤードに引っ込んだ。
どんより、曇り空だらけのギャラリーを見回しながら、でもまぁそれも悪くないような気になって、僕は緑茶を待つ。
待ちきれずに白いまんじゅうをひとくち頬張った。
ほどよい甘さのぽてっとした餡を、もちっとした皮が包み込み、えもいわれぬハーモニーを奏でる。
今度はなんか、差し入れでももってきてやるか。
(おわり)
『ぽってりとした白とピンクの紅白まんじゅう』は、前回のマガジン投稿で、オウェノさんからコメント欄にいただいた(架空の)差し入れです。あぁ、おいしかった。オウェノさん、ごちそうさまでした♪
ギャラリーへのおやつの差し入れは、コメント欄からお気軽に(^^)気が向いたらこんなふうに、作品のなかに登場するかもしれません〜。
自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。