石森みさお

ツイッターで放流した短文をまとめています。 アイコン:SS名刺メーカー/Photo by Maranatha Pizzaras on Unsplash

石森みさお

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最近の記事

140字小説まとめ10

2023.7〜2024.4

    • 面影の街|140字連作小説

      夏のある時期にだけ、この街には透き通った《面影》たちがやってくる――。 作家の「私」がたどる、ひと夏の邂逅。 2024年の#文披31題まとめ。 一話140字の連作小説です。 1.夕涼み 「俺たちは昔から《面影》って呼んでる。化け物呼ばわりするのもたまにいるけど」そう言って彼が指差した木陰には、夕涼みでもするように人が集まってきていた。どの人も薄黄色の日差しに体が透けて、物静かにゆれている。「《面影》の小説を書こうなんて変わってんね、先生?」冗談めかして彼が笑う。 2.喫

      • 面影の街|140字連作小説(画像版)

        夏のある時期にだけ、この街には透き通った《面影》たちがやってくる――。 作家の「私」がたどる、ひと夏の邂逅。 2024年の#文披31題まとめ。 一話140字の連作小説です。 1.夕涼み 2.喫茶店 3.飛ぶ 4.アクアリウム 5.琥珀糖 6.呼吸 7.ラブレター 8.雷雨 9.ぱちぱち 10.散った 11.錬金術 12.チョコミント 13.定規

        • すこしさみしい、SF|140字小説

          宇宙とか星とか。好きなもの詰め合わせファンタジー。 X(旧Twitter)で投稿したものを一部改稿。 1.緩慢な終末 宇宙から落下した小惑星は激しく衝突するのではなく、意外にも静かに着地した。一番背の高いビルに触れ、それから少しずつめり込んで、今は先端が僅かに地に埋まっている。このまま落下が続くと日本は沈むらしいのに、慣れてしまった僕らは時々空を見上げるだけだ。緩慢な終末はエンタメにもならない。 2.欺瞞の鳩 新たに打ち上げる探査船の名は白鳩と言った。その前は希望で、もう

          #文披31題(未完)|140字小説

          #文披31題で書いた、すこしふしぎで、すこしさみしい連作。未完。 Day1『傘』 世界中で雨がふって大地にしみていつか海にかえってまた空にのぼるのなら、この世から消えてなくなれる水がないのならいつまでも涙は枯れなくて、僕の傘をうつ雨もたぶんだれかの涙です。ひとつぶか、ふたつぶか。これからそういうはなしをしようと思う。傘からこぼれたひとしずくのようなおはなしを。 Day2『透明』 最終戦争で人間が死に絶えて、奇跡的に二人が生き残ったがあいにく二人とも透明人間だった。実は意外

          #文披31題(未完)|140字小説

          140字小説まとめ9

          2023.1〜2023.5 「面倒事って続くわねぇ。こないだエアコンもダメになったし、あれも突然死んじゃって」 久しぶりに実家を訪れたら、母が冷蔵庫を眺めながらそんな愚痴をこぼした。 「暖かくなってきたからエアコンはともかく、冷蔵庫は買ったら?」 「やあね、冷蔵

          140字小説まとめ9

          春の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト『季節の星々』 春のお題は『明』でした。 『月々の星々』から『季節の星々』に変わってから、記念すべき1回目のコンテスト。ありがたいことに一席を賜ることができました。 ではふりかえり。 『明るい方へゆきなさい』という言葉を使いたくて考えているうちに生まれたお話。 おぎゃあと産まれて生きてるからには、どうせなら明るい方へ歩いていきたいものだと思っています。 一席をいただいたときにもちょっと呟いたのですが、私は私の名前がとても好きなんですね。明るくて素直で

          春の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説まとめ8

          2022.08〜2023.01

          140字小説まとめ8

          二月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 一月のお題は「分」でした。 今更まとめ二つ目。 いつもと違う感じ。勢いだけで乗り切ろうとしている。自分でもわかるくらい不出来なんだけど、思いついちゃったから書かないわけにはいかなかった。 ザ・体験談。『別れめ』を『分かれ目』だと思っていたのも私だし、『いま〜こそ〜わか〜れぇめ〜〜〜』って脳内リフレインしちゃうのも私。 なんだか今回、体験談が多いな。当時は意識していませんでしたが。 沈丁花の花が好きで、いつぞや一枝いただけたときには

          二月の星々、ふりかえり|140字小説

          一月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 一月のお題は「定」でした。 2024.01 今更ですが、2023年の月々の星々に投稿した作品をまとめようかと思います…。備忘録的に。TwitterがXになり、なんだか足場が不安定になってきましたしね。 年明け早々、家族で寝込んでいた時の文。どうにか症状も治まって、健康ってありがたいな……と当たり前の幸福を噛み締めていました。 思えば、衣食住に困ることなく、家にこもって養生に専念できるのも小さな奇跡でありました。 路地裏の画廊みたいな

          一月の星々、ふりかえり|140字小説

          300字小説『ほんのひとり語り』

           私は待つことが得意な性質である。扉を閉じて黙することを苦と思わない生まれである。さりとて一度扉が開かれたならば弁が止まらず、語り続け謳い上げ滔々と誦じ説を述べ、一気呵成に相手を引き込むことを至上の喜びとするのである。  故郷を離れて久しく、愛でられ捨てられ拾われているうちにこの店に流れ着いた。苦ではない。私はそういう存在である。ただ少しばかり疲れたので、この肌にやたらと誰ぞの手が触れるのも、身の内を徒に覗かれるのもしばし御免蒙りたいという思いもある。  私と人とは生涯の友と

          300字小説『ほんのひとり語り』

          十二月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 十二月のお題は「調」でした。 家族全員が体調不良に悩まされた12月。くたくたにゆでたうどんを啜りながら、健康のありがたみを噛みしめる年末でした。 朦朧とする意識の中でほぼ記憶のないまま書いたno.4が予選通過。小手先の奇想より日々の実感ということかしら。好きなものを好きなときに好きに書く、が信条ですが、最近少し迷走気味です。 ではふりかえり。 ひとたびつま先が凍えると、温まるまで寝つけません。子供と一緒に寝るようになってから冷えはだい

          十二月の星々、ふりかえり|140字小説

          十一月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 十一月のお題は「保」でした。 月々の星々に参加して一年が経ちました。昨年の十一月に初めて投稿したらまさかの一席をいただけて、そこから毎月せっせと投稿してはまとめ、投稿してはまとめ、とここまでやって参りました。 回を追うごとにコンテスト全体のレベルが上がっていて、最近はずっと予選通過どまりだったのですが、今回久しぶりに佳作をいただくことができました。ありがとうございます。 ではふりかえり。 思い出の手触りは日向でぬくまった小石に似ている

          十一月の星々、ふりかえり|140字小説

          十月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 十月のお題は「着」でした。 no.4が予選通過しました。ありがとうございます。 書き出す前は「着……着……?!」と悩みましたが、書き始めたら気持ちよく書けました。ふんわり雰囲気SFが私は好きだ。 ではふりかえり。 めっちゃ好き(自分で言う) 光の速さで遠くへゆくひとたちと、追いかけて夜空を飛びたつ手紙。追いつけやしないのなんてわかってる。進化しすぎて滅びの予感しかない。こういうのが好き。書いていてとても楽しい。 夜で星で寒くてさみし

          十月の星々、ふりかえり|140字小説

          九月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 九月のお題は「実」でした。 no.3が予選通過しました。ありがとうございます。 九月……何してたのかな、ってくらい記憶がないです。頑張って生きて、生かしていました。悲しいことが多くてよく泣いていました。 ではふりかえり。 食卓を整えるのは愛だよ。私一人だけだったらポテチとお酒で済ませてしまう夜も、子どもがいると思えばへろへろしながらおかずを揃えるよ。冷食もミールキットも使うけどさ。切っただけのトマトとりんごとかだけどさ。 病んでます

          九月の星々、ふりかえり|140字小説

          八月の星々、ふりかえり|140字小説

          140字小説コンテスト「月々の星々」 八月のお題は「遊」でした。 ようやくまとめができました。特に何が忙しいわけでもないのに妙に気力が萎えていた八月。暑かったから、と思っておきましょう。 ではふりかえり。 予選通過作。子ども時代を思い出して。 夏休みになると母の実家へ一週間ほどお泊まりに行っていました。従兄弟親戚みんな集まって、大人たちは毎晩宴会。子どもたちは連れ立って田んぼの畦道を走ったり、用水路を辿ったり、山の麓に一軒だけある駄菓子屋に駆け込んでお菓子を買ったり。古き

          八月の星々、ふりかえり|140字小説