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春の星々、ふりかえり|140字小説

140字小説コンテスト『季節の星々』
春のお題は『明』でした。

『月々の星々』から『季節の星々』に変わってから、記念すべき1回目のコンテスト。ありがたいことに一席を賜ることができました。
ではふりかえり。

no.1
ある朝みんなが自分の名前を失くしてしまって、だから代わりに名付けの由来を名乗るようになった。健康な男です。優しい人です。苺のように可愛い子と名乗った人は少し面映ゆそうだ。明るい方へゆきなさい、と願って付けられた私の名前は何処へ行ったのだろう。花の咲くような響きだった、私の名前は、

『明るい方へゆきなさい』という言葉を使いたくて考えているうちに生まれたお話。
おぎゃあと産まれて生きてるからには、どうせなら明るい方へ歩いていきたいものだと思っています。
一席をいただいたときにもちょっと呟いたのですが、私は私の名前がとても好きなんですね。明るくて素直で可愛い名前で。小学生のころに『自分の名前の由来を親に聞いてくる』という宿題がありまして、聞いてみたら名前そのままの明快な由来で、『はぁ〜そりゃ私にぴったりだ』と思った記憶があります。
願いがこめられた名前を持っていると、自分の根っこがしっかり安定するような気がします。平々凡々に当たり前に、愛されてまいりました。有り難いことです。


no.2
小舟を漕いで沖へ出る。酔狂な、と揶揄する声をふりはらって目指すのは、本当なら鳥以外に誰も見るはずのなかった海。水平線に沈むだけの夕陽と、しずかに訪れるだけの夜明けと、誰のためでもなく続く営みの中、全てから解き放たれてひとりになったら、誰も見ることのない涙をそっと波間に流して帰る。

秘境の絶景みたいなね、美しい景色が好きですよ。誰のためにつくられたのでもない、ただ自然のままで綺麗でね。綺麗だと思う人がいなくても綺麗なものは綺麗でゆらがなくてね。絶対で、いいよね。
葉っぱの先に宿った雫みたいな、いま私が見ていなければ誰にも見られないまま消えていたようなものもね、好きですね。
綺麗なものは、綺麗だと認める人がいなくても、綺麗なんだよ。ほっとする。


no.3
天体観測で知り合った六等星は気弱な性格で、よく部屋の隅で蹲っていた。「ごめん、私、明るくなくて。願いも叶えられなくて」他人の勝手な願い事で潰れそうな星をなでると、熱くも冷たくもない、人と同じ位の温もりがふるえていた。一等星だったら眩しすぎて僕は傍にいられないよ、それではだめかな。

自分で書いておいてなんですが、六等星ちゃんかわいい〜。
これはあの、気弱な彼女を星に例えた話としてではなくて、ちっちゃな星が部屋のすみっこでぷるぷるふるえてるところを想像して読んでほしいやつです。
かわいいよね? かわいい〜。



二月の予選落ちからの一席で、落差が激しかったです。でもこの名前の話は自分でもとても気持ちよく好きな感じに書けたやつなので、好きなときに好きなものを書いていったらいいんだと背中を押された気がします。
気負わずにね。マイペースでいこう。


以上、ふりかえりでした。
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