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十二月の星々、ふりかえり|140字小説

140字小説コンテスト「月々の星々」
十二月のお題は「調」でした。

家族全員が体調不良に悩まされた12月。くたくたにゆでたうどんを啜りながら、健康のありがたみを噛みしめる年末でした。
朦朧とする意識の中でほぼ記憶のないまま書いたno.4が予選通過。小手先の奇想より日々の実感ということかしら。好きなものを好きなときに好きに書く、が信条ですが、最近少し迷走気味です。
ではふりかえり。


no.1
布団に忍び込んできた夜空がふるえていた。今夜は寒くて、と一枚しかない毛布にくるまる。ほしけりゃ星の一つも光らせろとつついたら部屋が銀河に染まった。かじかんで調節がきかないんだ、星が爆ぜれば温まるんだけど、と夜空は脅しめいた台詞を口にする。その手足は冷たくて、しょうがないなと思う。

ひとたびつま先が凍えると、温まるまで寝つけません。子供と一緒に寝るようになってから冷えはだいぶ改善されましたが。ぬっくぬくぽっかぽかの幼児は、寒かろうと思って毛布をかけすぎると冬の寝室でも頭にうっすら汗をかく…。
あっため合いながら眠れるのは幸せなことです。


no.2
落葉を散らす風に冬の気配が混ざる頃、夫は息を引き取った。長い闘病の末だったので、悲しみより労いの気持ちが先に立つ。子は巣立ち、万事恙無い。私の日々はまだ続き、彼のことばかりを思いはしないが、肩に風がふれたなら一人分の空白に気づくだろう。冬の調べを聴くたびに。冬の調べを聴くたびに。

『冬の調べを聴くたびに』を2回繰り返すのは蛇足であろうか。いやそんなことはない(自己完結)
140字中の貴重な字数を消費してでも繰り返したかったので、これはこれで良いのです。風は何度も吹くし、季節も繰り返すから、良いんです。

no.3
仕事帰りに寄ったスーパーは歳末の買い物客で混雑していた。賑やかなBGMと装飾が底抜けに明るい。夕飯の食材を探し艶々した蕪を選ぶ。春には春の、冬には冬の食材をたべよとは実家の母の教えだが、単に旬のものは安いからだ。季節に逆らわず、調子を整える。何でもない日を何でもなく乗り切る知恵だ。

じゃかじゃかと喧しくてびっかびかにまぶしいスーパー、好きです。おなじあほならおどらにゃソンソン♪な気分になります。
切り餅がパッケージされたなんちゃって鏡餅を飾り、立派な御重なんてないけれど、ちょっと良いお刺身と、お雑煮だけは用意して。高いなぁとぼやきつつもやっぱり柚子と三つ葉はほしいよね!
惰性で紅白歌合戦を観て、除夜の鐘のしんみりした厳かさをテレビ中継で消費する。そんな年越しを来年も再来年もずっとずっと迎えていきたいのです、私は。

no.4
なんだか体調が悪いなと思っていたら感染症に捕まった。冬至に柚子湯に入らなかったせいかしらなどと熱に浮かされながら思う。幸いなのは友人や実家からの支援物資が潤沢に届くこと。大丈夫?の一言に心潤むこと。孤独な自宅療養が繋がりを可視化するなんて現代的。一人ではないのだなぁ、咳をしても。

予選通過作ですね。大人二人が熱でダウンし、先に回復した子どもだけが元気に跳ね回っている状況で書きましたね、たぶん。とにかく少しでも横になって体力回復につとめていたので、あまり記憶がありません。
実家の母がおにぎりを差し入れしてくれて、それが病人でもつまみやすい一口サイズに握られていて、ああかなわないなぁ、と思いました。

no.5
あれは年の瀬の獏ですね。初夢の時期が来る前に、湖で身を清めているのです。鼻をよく洗っているでしょう?悪夢のにおいを調べるのに必要ですから。皆様にもきっと良い初夢が訪れますよ。もし見た夢を覚えていなかったなら、それは獏が食べたのです。何度でも生まれ変われます。安心して、良いお年を。

良いお年を。それだけです。



細々と、のんびりと、息ながく。
2023年はそんな感じでいきたい。


以上、ふりかえりでした。
皆さまの素晴らしき星々作品はこちらから!


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