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二宮洋二郎
2020年10月1日 21:01
高温に熱した鉄板に肉を載せた瞬間の、じゅぅうううという暴力的なまでに食欲を刺激するあの音に鼓膜を揺さぶられ、僕はたまらず生唾をのんだ。 焼いているのは分厚くステーキカットにされた霜降り牛。 キッチンにあるものは何でも食べていい、とヤカタさんは言ったが、そもそもキッチンには冷凍庫しかなかった。それも、狭い1Kのキッチン部分から今にもせり出してきそうな、業務用とおぼしき冷凍庫だ。 "冷凍庫"に
2020年6月21日 21:00
1 ぱあん、ぱあん、とリズミカルな音が聞こえてきて、僕は世界を閉ざした。 ここのところ、ずっとだ。具体的には、四日連続になる。 はじめて聞こえたのが三日前で、腹を立てて壁を叩いたのが二日前。それを管理人に注意された昨日から、イヤフォンで大音量の音楽を流すことにした。サブスクリプション・サービスのランキング上位を独占する、素性が謎に包まれた二人組ユニットの曲。 ハイハット・シンバルを打ち