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短歌

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連作/no title

連作/no title

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4の倍数で階段を駆け上がる きみを見つけて19で止まる

小指が尖ってピースにならなくて 眩しくて歪む笑顔に似ていた

ニキビを潰すみたいに花摘み 首先の架空を斬った手で祈祷

あの頃は広角レンズで簡単に世界とか征服できちゃったりして

わたしたちの瞳には宇宙 シャッターを切るたびに小さなビックバン

ミラーレス 未来にきみがいなくても瞼の裏がお揃いでうれしい

キューティクル

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連作/あの子が唱える天動説

連作/あの子が唱える天動説

・:+.

その「おやすみ」には21グラム分の何グラムが 掬って

メジャースプーンで図るわたしの等身大 背伸びがうつる瞳孔 きらめけ

屈折を泳ぐ魚とサラリーマン 黒点からは目を逸らせ な  い

たなびくスカートはきみのフレア その一閃で日焼けしたい冬でも

アイドルが日焼けしないのは光だから 小麦色は救済のしるし

陽炎の下で囁かれた噂は視妄で蝋を溶 か し て
虚 構

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連作/未・未来永劫

連作/未・未来永劫

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消えないで手のひらにつたう液晶の中から私の視覚から 光って

手のひらのなかの四角のその奥の 私の視覚の死角で笑って

にしび の3文字が東から射し込む 親指でそのなみだを拭う

会いた| まで打っては掻き消すきみのインターネットの波打ち際にて

永劫も知らないぼくらはただ字面がかっこいいからという理由で

つけっぱなしの冷房 流しっぱなしの動

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連作/夏の光と影法師

連作/夏の光と影法師

青色の春風に吹かれたきみは私を撫で上げ「またね」と消えた

バス停で「またね」を交わしたあの日から季節が積もって埋もれてゆく声

ラムネのビー玉は手に入らないからこそ美しいとかいう美学

“届かない” “触れられない”という美学 だってきみはかみさまだから

泡沫のきみの波紋を追いかけてふたりで光に飛び込む夏

カーテンが光を含んで連れ去ったきみの残像靡いたこころ

移りゆく季節の光に攫われて姿を

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連作/わたしたちが越えてきたいくつもの夜 明日への祈りときみの言葉を抱えて眠る

連作/わたしたちが越えてきたいくつもの夜 明日への祈りときみの言葉を抱えて眠る

雑踏に紛れるきみの残像が見えた気がして募る切なさ

雑踏に紛れてもなお紡がれるあの歌の祈りに救われる

動揺でうまく紡げなくなる言葉、乱れる呼吸、息が、くるしい、

止まない雨、明けない夜はないのだと言い聞かせては祈って眠る

「じゃあまたね」お守りみたいなその3文字 夢の中では逢えますように

微睡みの僅かな意識とあの日の記憶、薄れた匂い、生ぬるい体温

遠くから微かに聞こえるきみの声 もうそこ

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