マガジンのカバー画像

読書感想文

19
運営しているクリエイター

記事一覧

君は永遠にそいつらより若い 津村記久子

君は永遠にそいつらより若い 津村記久子

優しいなあと思ったホリガイさんは。

どうしようもなく弱っている人のことを放っておけない。特に思い入れもない友達の彼女のリストカットや、一度飲み会で出会っただけの友達の友達、テレビの特番で見ただけの男の子、そしてまだ出会っていない幼い頃のイノギさん。

どうしようもない人生の暗闇に足掻くことすらしなかった、できなかった人たちのことを心の中にいつも留めている。

でも、そこに自惚れじみた正義感は一切

もっとみる
自転しながら公転する 山本文緒

自転しながら公転する 山本文緒

淡々とした日常を描きつつも、常に一歩先が気になる展開で、スイスイと読み進めることができた一冊でした。

読み始める前に「あんたには多分分かんないと思うよ」と渡された通り、只今モラトリアム期にいる私は、アラサーの悩みに完全に共感することはできない。これから先どうなるか分かんないし、何が起こるか予測するのも無理だし、でもまぁ結局は何とかなるだろうから大丈夫っしょ!て今何となーく感じている部分が、きっと

もっとみる
アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎

アイネクライネナハトムジーク 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんの本は初めて読みましたが、登場人物のことがとても好きになれる作品でした。

特に、織田一真さんが好きです。

伊坂幸太郎で唯一読んだのが恋愛短編小説ってなんか申し訳ないですけど。最後点と点が見事に繋がっていくオシャレさに、これがそれか〜となりました。

織田一真みたいな人は、アホっぽいのに芯があって、謎理論っぽいのになんか筋が通ってる気がする、要は魅力的なヤツです。

なんでか分から

もっとみる
まにまに 西加奈子

まにまに 西加奈子

西加奈子さんがめちゃくちゃ好きだ。

「サラバ!」を読んだ時の感動は一生忘れないし、あれを超える本は私にはもう現れないとまで思ってる。

そんな作家さんのエッセイなんて、元気の出る源でしかない。エッセイほど人の中身を覗けて、生き方を、毎日の生活を真似できるものはない。

私はいつも映画と本から、「この世界で起こる出来事は、ここに生きる人達は、決して一つの目線からは語り尽くせなくて、もっと複雑でぐち

もっとみる
店長がバカすぎて 早見和真

店長がバカすぎて 早見和真

多分、今まで読んだ小説の中で1番、声出して笑いました。そもそも小説でコメディを読んだのは初めてだったので面白かったです。

以下ネタバレ込み込みです。

この本は、前半と後半でテイストが少し変わる気がします。前半は、きっと書店員あるあるの、業界への不満、救いようのない店長のアホさ、それでも止まない本への愛、など。タイトルから予想できる範囲ではありますが普通にめっちゃ面白い。funnyの意味でも i

もっとみる
流浪の月 凪良ゆう

流浪の月 凪良ゆう

はっきりとした言葉で書かれている。
筆者の価値観と、そこに込められた想いが。

表向きは、大学生の幼女誘拐事件であったが、実際当時大学生だった文は、その少女にとって、唯一の心の拠り所であった。

この本を読んで思ったことは、出来事が真実であるかどうか見極める力を持つ必要があるというものではなくて、

物事には当人同士にしか到底分かり得ない領域がある、ということを分かっておいた方が良いということだっ

もっとみる
むらさきのスカートの女 今村夏子

むらさきのスカートの女 今村夏子

「あぁ、、こういうの、あるよなあー、、」と思わせる天才かなと思う、今村夏子さん。

今回も、気味が悪い、しかし気味が悪いと言うのは何だかいけないことな気がする、(だって誰の周りにもこういう人いるしorいたことあるし…)みたいな。気味悪がっちゃいけないよあんた、それ失礼だよ、いいの?みたいな絶妙なラインを、よくもあんなリアルに、、短い文章で、、みたいな。

読む人が持ってる「別にトラウマでも何でもな

もっとみる
フランス人は10着しか服を持たない ジェニファー・L・スコット

フランス人は10着しか服を持たない ジェニファー・L・スコット

読みました。
いいですね、私の目指す女性像みたいなものが変わりました。私は単純なのですぐ変わります。
この本を読み終わったばかりの今は、「洗練された女性」になろうと決意しています。

「洗練された」というのは、「今あるものに満足し、それを大事にする。上質なものを丁寧に使う。良いものを心から味わう」のような感じ。

まぁ、でもね、無理なんですよ。
私汚い言葉も大好きだしやんちゃな文化も魅力的だし、人

もっとみる
あのこは貴族 山内マリコ

あのこは貴族 山内マリコ

※フェミ強め

女の幸せってなんなんでしょうね。

聞くところ昔話では、それこそ結婚して良いとこの奥さんになって、子どもを産んで…。
人生を選択するまでもなく、男を選択する、もはや男を選択するまでもなく、決められた人生のレールに乗る。

時代は変わって、男のために捧げる人生なんてクソくらえ!女だって自分の人生は自分で決めていくんだい!となって。

しかしそれでも押し寄せてくる、「けっこんしないの〜

もっとみる
ナナメの夕暮れ 若林正恭

ナナメの夕暮れ 若林正恭

私いつも、彼の言葉があればわざわざ自分が言うことなんて何もないんじゃないか、と思ってしまう。感想を残すまでもなく、ただただ共感と憧れが詰まっています。

“悪口の合う”異性が世界を救うなんて、かつて誰がこんなにも丁寧に言葉に残してくれただろうか笑
でもそう、どんなに世界は広くても結局は自分の周りの世界しかないわけで、意外と自分を救ってくれるのはそういうことなんだな、と思う。小さなことが、陳腐で浅は

もっとみる
さくら 西加奈子

さくら 西加奈子

人気者のお兄ちゃんとお兄ちゃん大好きな美人の妹、ラブラブ両親と可愛いワンちゃんと僕の円満家族。お兄ちゃんが若くして命を落とす前と後のお話。

西加奈子さんの本からいつも学ぶこと。

ひとつは、自分は自分であること。
確立した自分をいつも持っていることが重要なのではない。自分というものがわからなくて、自分探しをして模索している自分ですら自分なのだということ。

もうひとつは、不思議な力を信じること。

もっとみる
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ

最近、何をするにも多様性の尊重がすごくセンシティブに、重大に取り扱われるなぁと感じる。
発言のひとつひとつが切り取られて容易にバッシングを受ける時代。

でも現場にいる人が、実際にどんな問題にどんなふうに立ち向かっているのかは知らない。

現場に住む人々が向かい合う問題を読みながら改めて、国際政治や人種についてのマクロな問題は、日常のミクロな破片に散りばめられているのだ!と痛感。

焼き鳥の肉と串

もっとみる
『君の名前で僕を呼んで』アンドレ・アシマン

『君の名前で僕を呼んで』アンドレ・アシマン

原作について。

映画ではセリフがカットされていたり、心情を顔や仕草で表現しているところが多かったので(そこが素晴らしい👏👏👏)あー、エリオこんなにいっぱい考えてたんだなぁ、て自分の解釈の答え合わせにもなった。私の想像の5倍は色々考えてるみたいだった。

2人で過ごした時間がどんなに印象強く2人の中に残っていても、結婚した奥さんや生まれた子どもには何も関係がないことが切ない。
誰もがみんなパ

もっとみる
『ライ麦畑でつかまえて』J.Dサリンジャー

『ライ麦畑でつかまえて』J.Dサリンジャー

読んでいてとても面白かったところは、
最初はホールデン視点で、アクリーやストラドレーターがおかしな人間達に見えるのに、放浪を続けるうちに、ホールデンがなんだかおかしな人間に見えてくること。
周囲の人の接し方に呆れ色が混じってて、ホールデン自身の傷つき方への言い訳じみた言葉もなんか痛くて…。
スケート場デートでの会話は本当に最悪だった。痛い。

大人の世界にインチキさを感じているのに、大人ぶってみた

もっとみる