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いのちの使いみち

「結婚が」したいわけじゃないなら、なんで別れたんだろ。好きだったのに。大好きで、あんなに向き合おうと思える他人はじめてだったのに、「この人とはずっと一緒にはいられない」と思って、別れた。変なの。結婚がしたいわけじゃなくても、ずっと一緒にはいたいんだ。最後の日、彼の家から最寄駅へ歩く15分の道のりも、自分の家へ帰る電車も、泣きまくって、わけわからなくなって、乗り換えもたくさん間違えた。十ヶ月通ったのに。変なの。人前で泣くほど好きなのに、ずっと一緒にいたいと思っても、一緒にはいられないんだ。一緒にいるって何なんだろう。ずっと一緒にいたい人と、ずっと一緒にいるには、どうしたらいいんだろう。

彼と一緒にいたい気持ちよりも、自分に優しくしてやりたい気持ちが勝った。熱があっても、腹が痛くても、悩みがあっても、泣くほど傷ついても、彼には大きな声で怒鳴られたり、突き放されたり、作った料理を目の前で捨てられたりした。100%の愛情なんてこの世になくて、「"それでも"一緒にいる」が全部だと思う。けれど、彼と一緒にいるためには、私はたくさんむりをしないといけなかった。自分を壊さないといけなかった。犠牲を払わないと一緒にいられない、自分を犠牲にしないと彼を守れない。私は私のことも守りたかった。私が一番に私の味方でいてあげたかった。自分を許せない時期はもう過ぎたから、私は私を抱きしめてあげられるから。

私は私を死ぬ気で守ったんだ。そして、私が死なないかわりに、恋が身代わりとなって死んだ。私が死ぬ気で守った私を、どう生かそう。私はどうやって生きよう。それが答えだ、の曲が終わりかけた頃、イヤホンを外した。そうです、そうなんです、のコーラスが頭の中で続く。今日は夜でもそこまで冷えなくて、春みたいだと思った。吐き気がするほど苦手な季節も、何十回と繰り返せば懐かしくなる。今年も帰ってゆく。守ってくれてありがとう。手放さないでいてくれて、ありがとう。

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