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「呪う言葉・救う言葉」

先生の冬休みは比較的長い。
次の学期に何をしたいか、資料や本を読んでみたり、思いに耽ってみたり。

今回は、題の通り、少し恐ろしいと思う方もいらっしゃるかも知れないが、「呪う言葉・救う言葉」という本について紹介したいと思う。

この本は出口保行さんという方が書かれた本で、犯罪心理学者として少年鑑別所、刑務所、拘置所などで多くの犯罪者との対話を通して得た心理学的な気づきについて書かれているものである。
さまざまなわたしたちが無意識的に言ってしまっている言葉がどう子供たちに影響を及ぼしているか、実例に創作を加えながら解説してくれている本である。

この本の中には私にとって共感ポイントが多くあり、教育者である自分も気をつけなくてはならないなと感じる点がたくさんあったので、今回はそれを紹介していきたいと思う。

「早くしなさい」という言葉が殺すもの

どうしても子どもたちはもたもたしていることが多く、指示をしたくなってしまうことが多い。
あれをした後にこれをして、終わったら呼んでね。
というように、指示にキリがない。

こんな状況はよくあることかと思われるが、果たしてこれは子どもの主体性を伸ばす行動と言えるのだろうか
これらの指示の仕方を工夫していき、子どもたちが自由な気づきを得られるようにしていきましょう、というのも最近の教育書の中でよく言われるようになってきた

だけれども、本当に指示する内容こそが一番注目されるべきことなのだろうか
指示が ”上手” な人の周りには、その指示にしっかりと従っていこうという人ができてしまうのではないか
つまり指示待ちの人間ができてしまったり、指示する人がいなくなってしまったら自分から何をしたらいいかわからなくなってしま、そんなことも起こり得るだろう

だから指示する側としては、子どもや相手がそのうち一人で考えて自分で自分のやるべきこと、予測する力を身につけられるようなアクションが必要だと感じることができた。
指示が全てではない。たまには指示をする側も気を抜いて、その時の流に身を任せて「待つ」ことも大事だ。

指示する時と待つ時の時間の配分の塩梅、それこそが子どもの成長に必要な教育の黄金比なのではないだろうか

「頑張りなさい」という言葉が殺すもの

これについては以前、『「頑張る」とは』という投稿でも書かせてもらっているが、「頑張る」って一体何をやねん、というところに尽きる。

自分は何かに対してすごく情熱を持って立ち向かっているはずなのに、「がんばれ」と言われるとなんか虫唾が走るのは私だけだろうか。
突き放されたような、自分の今までの過程をまるで理解してくれていなくて、この目の前の結果や出来事に対して放たれるちょっと無責任な言葉「がんばれ」には私はなかなかファンにはなれない。

この本には事例とともに、このような思いから犯行に至ってしまった例が書かれている。
なんと怖い。自分の場合はこれを感じたのが大学生の頃だということもあり、対処の仕方や考えを言葉にして消化させることができたが、小学生や中学生の子にそのようなことを自発的に行わせて消化させろなんて無理難題だ。

そのためにはわたしたち大人が先回りしてそのようなことが起こらないように予防するべきである。

この本では、「がんばれ」という言葉が引き起こす学習性無力感と、自由な環境でこそ起こる行動について書かれていた。
人間は小さい頃は自己中心的な考えであるが、年を追っていくごとに視点取得ができるようになるそうだ。
つまりは、多角的に物事・言葉を捉え、考えられるようになるということ。

小さい頃くらいはこちらも心の余裕を持って、小さなことにも気を配っていきたいものだ。
まぁ、時間的な余白の少ないこの現代においてとても難しいことであるということは承知の上で。理想として言ってみる。

このように様々な言葉が子どもの成長段階で子どもの成長にストッパーや制限、たまには非行への拍車をかけてしまうことを知った。
日本の子どもたち(子どもに限らない話ではある)は自己肯定感が極端に低いということをよく耳にする。

本書でも書いているが、
自己肯定感の低さが犯罪やその子の成長の機会を奪うのだ。

「早くしなさい」「頑張りなさい」という言葉にはどのようなものが欠けているのか
それは過程を観察してあげる観察眼と、声かけの力なのではないかと思う

心に届く褒め方のベースになっているのは観察の力だ。
とにかく褒めればいいということにはまだ議論の余地があると思っているが、少なくとも、努力している過程を褒めずに、事象に対して叱るだけでは物事の根本的な解決には至らないと感じる。


学校の教員としてできることは何か。
心の余裕が少しはあるこの冬休みの期間だからこそ色々な記事を読んだり読書をして、今の子どもたちの心情について理解を深める、そして得るべき力について認識する、そして必ず勉強して実践する

それに尽きると思う。
学び続ける先生、進化していける先生ってカッケェ。
観察眼、学ばせていただきます。

そんな気づきを得られた本でした。

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