見出し画像

あなたは昭和のぶっ飛んだ三人組を知っているか?

今年の『読書の秋』も存分に楽しみました。

好きだから読むマンガ。
トレンド(もっというとその仕掛け方)を知りたいから読む雑誌。
気分転換をしたいから読む小説。
それぞれで学びも得ることができています。
いろいろなジャンルがありますが、本はいいですね。
そんな中、長い歳月を経て久しぶりに読んでみたものがあるのでご紹介しましょう。

ここから先はネタバレも含むので、ネタバレを嫌うならここから先を見てはいけません。


◆『それいけズッコケ三人組』とは

今回私が紹介するのは『それいけズッコケ三人組』です。
『ズッコケ三人組』シリーズは中国地方にある稲穂県ミドリ市花山町(モデルとなった場所は広島県広島市西区にある『己斐(こい)』)を舞台に、ハチベエ(八谷良平)・ハカセ(山中正太郎)・モーちゃん(奥田三吉)の3人の小学6年生を中心に物語が展開されます。
描かれるテーマは様々で、プロトタイプを除いた本編としての第1巻が『それいけズッコケ三人組』(1978年)です。

◆当時の時代背景

ここで少し、時代背景にも触れておきましょう。
1978年といえば日本が世界に誇る自動車メーカーであるマツダが、量産車としての初となるリトラクタブル(格納式)ヘッドライトを装備したスポーツカー『サバンナRX-7』(SA22C)を発売した年です。

ズッコケ三人組もマツダも広島。
単なる偶然に過ぎないのかもしれませんが、原爆投下被害から33年という歳月での広島の底力みたいなものを感じずにはいられません。

また、1978年と言えば『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の放送が開始された年でもあります。
ディスコブーム真っ只中で日本レコード大賞に輝いた曲はピンク・レディーの『UFO』です。
この年はピンク・レディーに明け、ピンク・レディーに暮れたといっても決して過言ではないほどでした。

◆作品の内容等

さて、前置きが長くなりましたが、大人になって読み返すと作者の圧倒的な文章力と構成力に感服します。
子供が読んでも大人が読んでも読み応えがあるように感じられるのはそのおかげと言えるのではないでしょうか。
この『それいけズッコケ三人組』は本編の第1巻で短編集になっていて『三人組登場』、『花山駅の決闘』、『怪談ヤナギ池』、『立石山城探検記』、『ゆめのゴールデンクイズ』の5本立てです。
登場人物や世界観を小出しにしながら読者に覚えさせるよう、入念に組み立てられている気さえします。
小学生だった当時は何気無く読んでいましたが、第1話で登場人物の紹介をしつつ、第2話では登場人物が揃って活躍するという流れはとても秀逸です。
本当にさすが!と言わざるを得ません。

私が個人的に、特に面白いと思ったのが【三人組登場】です。
登場人物のうちの1人であるハカセがトイレに入っている時に泥棒が入ります。
その時にハカセはトイレットペーパーに文字を書いて、外に向けて助けを呼ぶというシーンが大好きです。
いかにも小学6年生らしい機転の利かせ方だと思いませんか?
他の主人公についてもしっかりと描写されていて、世界観に一気に引き込まれる感じでした。

そして作者の圧倒的な文章力を思いしらされたのが【立石山城探険記】です。
どの話でも、作者の文章力の高さが伺えます。
中でもこの物語に出てくる文で感服したのが次の表現です。

『ハチベエは、思わずかべから手をはなすと最後の力をふりしぼって光のすじめがけて走った。
近づくにしたがって、光のすじは、はっきりとしてきた。
そしてそれが、なんまいも重なった岩かげのすき間からもれる外の光だということがわかるまで、そんなに時間はかからなかった。』

子供が読んでも普通に理解できそうでありながら、大人が読んでも読み応えのあるこの語彙力!
語彙力あってこその文章力なのかもしれません。
私もこの語彙力を身に付けたいものです。

【ゆめのゴールデンクイズ】は主人公がまさかの不正!?
モーちゃんが『ゴールデンクイズ』というテレビ番組に出場するという話です。
いつもの三人組は、彼らにとっての一世一代の大勝負日に何とか勝とうとします。
そして何やら秘密兵器を完成させました。
しかし迎えた本番。
そこでハカセは(カンニングのために作った)補聴器型トランシーバーは使わず、結局はテレビ局の人が貸してくれたレシーバーを使っていたので不正はありませんでした。
しかし、この話からもわかるように、主人公達は学校で先生に褒められるような良い子たちではありません。
むしろ、昭和のわんぱく小僧たちです。
そんな彼らが過ごす日常をコミカルに描いた作品、それが『ズッコケ三人組』シリーズなのだと言わんばかりの話でした。

小学生だった当時の私は、まさにハチベエみたいな少年だったなぁとか懐かしい気持ちになりました。
それと同時に、新しい物事に挑戦するという気持ちの大切さを思い出させてくれたような気もします。

◆聖地巡礼!?

その懐かしい気持ちのまま、聖地巡礼っぽいことをしてみました。

画像2

残念ながら、現在の広島県広島市西区己斐の西広島駅前の商店街はシャッター街になっていました。
しかし、新しい憩いの場『コイプレ』が出来ていて、近代的な雰囲気も感じられます。
きっと、地名の『己斐(コイ)』と『憩い』がかけられているのでしょう。
あえて写真は載せませんが、作中で登場した場所には『ズッコケ三人組モデル地点』の看板があったり、モニュメントがあったりします。
地元の人のお話によると、『駅にあるモニュメントにあることをする』とご利益があるそうです。
先進的な雰囲気とレトロな雰囲気が入り交じる、この西広島駅近辺を散策してみるのもなかなか楽しいかもしれませんよ。

◆大人になってからの挑戦

誰もが等しく、人生は一度きりです。
ズッコケ三人組を見習って…というわけではありませんが、ハチベエやハカセやモーちゃんたちと同じようにエリートではなかった私は思い切ってフリーランサーになりました。
元々仕事には意欲的で稼ぐ事への執着心もあったので、頑張って成果を出したら出した分だけ稼げるのが魅力的に思えたからであります。
もちろん不安定でもあるので、どんなに頑張っても成果が出なければ稼ぎは少なくなるというリスクは消えません。
過去には本当に経済的なピンチに陥った時は1週間、水ともやしだけの生活というのを経験したこともあります。
少なくともズッコケ三人組の存在を知っていたことで、自分の人生における寄り道さえも楽しめるようになったのは間違い無いでしょう。
失敗もたくさん重ねてきましたが、それでも私はこうして今も生き延びています。
生きてさえいれば、ズッコケ三人組のようにいろんなことに挑戦することも可能です。
そして私はまだまだ挑戦してみたいことがたくさんあるということを、彼らは思い出させてくれました。

◆最後に

ズッコケ三人組をリアルタイムで読んで育った世代の人々は今どうしているのでしょうか?
そして現代の小学生たちもズッコケ三人組を読んでいるのでしょうか?
作品発表当時の時代背景と現代とでは大きな隔たりがあるのは否めません。
しかし、今だからこそ読んでみてほしい作品でもあると私は思います。
おそらく多くの人が持っているであろう冒険心や野望等に気付くことができるかもしれません。
児童書でありながらいろいろ考えさせられるし、数年を経て再読してみると新たな気づきも得られます。
これほど味わい深い作品を知れたことは、少なくとも私の人生においては間違い無く貴重な『出会い』だっとと断言しましょう。

この記事が参加している募集

この記事が受賞したコンテスト

頂戴したサポートは、より面白いコンテンツをつくる為の投資に使わせていただきます。