24h/Delivery

Filmarks https://filmarks.com/users/24hDeli…

最近の記事

白木蓮のはなびらは

 何年か前に見かけてからずっと気になっていた。白の木蓮の木はなかなか植っていないし、腕が届かないし、見つけても人目が気になったりでずっと機会を逃していた。  むすこと散歩中の小径で奇跡的に誰もいず、日傘を枝に引っ掛けてひとひら頂いてみた。  前歯でかりりと齧ると本当にジンジャーエールのような、生姜のような風味が口の中に広がってとても楽しかった。  こんな風にゆっくりと少しずつ、色々を叶えている。  今日は歳若い友達と千葉の美術館にある庭園で見事な紅色の木蓮を見た。やっぱ

    • 二枚

       先週ちょっとした用事があって新幹線で関西へ行ってきた。思った以上に疲弊する事があり、割と酷い事もあったりしたのですっかり気落ちしてしまい、帰りの新幹線に乗る気もしなくて友達に連絡をしたら仕事帰りにすぐ来てくれた。  何も聞かないで最近の事をおもしろおかしく話してくれるところが好きだ。この人はこういう時に余計な事を絶対に言わないので頼ってしまうのだと思う。  いつも行くカフェに入る頃にはすっかり元気になった。この日は何故か新幹線のホームまでわざわざ入って送ってくれ、「また元

      • 清らで艶かしいという相反する佇まい、古典の世界では成り立つようなので現代であっても可能な筈だ

        • 書き残し 朝日新聞デジタル 小澤征爾さんを失って 村上春樹さん寄稿2024/2/11 4:00

           朝日新聞デジタルに寄稿された小澤征爾はんへの追悼記事がとても良かったので、個人的に見返したくて書き写しました。 亡くなってしまった小澤征爾さんのことを思うと、いくつもの情景が次々に頭に蘇ってくる。様々な思いももちろん胸に去来し、それなりに渦巻くわけだが、それより前に浮かび上がってくるのはいくつかの断片的な、具体的な情景だ。そしてそれらのエピソードのほとんどにはユーモラスな要素が含まれている。  ジュネーヴの古いコンサートホール、その楽屋で僕は征爾さんの手を思い切りごしご

        白木蓮のはなびらは

          恋人はわたしが淹れる珈琲をとても美味しいと言ってくれるが、自分には彼が淹れてくれた方が美味しく感じる。  互いしか感じ取れない何かを振り掛けているのかもしれない

          恋人はわたしが淹れる珈琲をとても美味しいと言ってくれるが、自分には彼が淹れてくれた方が美味しく感じる。  互いしか感じ取れない何かを振り掛けているのかもしれない

          映画 PARFECT DAYS 何もないようでいて、そこにある

           初老の男が畳の狭い部屋でごろりと転がって文庫を開く。デートへ向かう道すがらか帰り道、新宿武蔵野館前でちょっとくたびれた役所広司のポスターが目に留まってこの映画を知った。後日検索するとヴィム・ベンダース監督が撮っているという。映画にそれほど明るくないわたしのような者でもよく知っている人だ。  翌週の平日、映画館へ車を走らせた。予告を観てなんとなく車で大きな橋を渡って出掛けたほうがいいような気がしたのだ。  主人公の平山は都内の公衆トイレの清掃業を生業としている。下町の、古び

          映画 PARFECT DAYS 何もないようでいて、そこにある

          「延長」

          たくさんセックスをするとぼうっとしてしまう。さみしいだとかの気持ちではなく、身体そのものがぼうっとしたくなる感じ。 身体を重ねていると流れる時間が早すぎる。「延長7時間で◯◯円になります」 わたしたち、あだ名が延長かもしれないね、と階段を降りながら顔を見合わせてイヒヒと笑った。 食事をしていたら恋人が変なことを言うのでまたセックスしたくなったと言うと彼もそうだったようだ。 「さっきのところで延長また来た、と思われるのは嫌!」と言い出してまたちょっと面白くなってしまう。 部屋

          NHKアカデミア 穂村弘 「短歌という魔法」(前編)どこまで読者にわかってもらおうとしている?書き起こし

          2024/1/10 22:00~22:30 放送のNHKアカデミア、「短歌という魔法」(全編)で歌人の穂村弘さんが読者の質問に答えるコーナーがあり、どこまで読者にわかってもらおうとしているか?というちょっぴりストレートすぎる、若干失礼(笑)な質問に対して、非常に彼らしいことば遣いで丁寧にわかりやすく説明されていて、とても心に残ったので書き起こししてみる事にしました。(録画を忘れたのです) 以下、参加者のきつねさん(🦊) 穂村弘さん(ほむほむ)とします。 (ほむほむ)北海

          NHKアカデミア 穂村弘 「短歌という魔法」(前編)どこまで読者にわかってもらおうとしている?書き起こし

          2022/12/29-30(Thr→Fri)

          2022.12.29-30(Thr/Fri) 年内にお渡ししたいものがあって、とたまに会う彼を呼び出したら思いの外時間があって1日過ごす事ができた。 ◯◯で待ち合わせて喫茶店でお喋りしながら、まだ仕事が納められない彼は時たまPCで仕事しながら、わたしはその間に文庫を読む。 ある担当から直しの指示がきて…と見せてもらったら、果てしない作業量が必要そうな割にはその変化は不要では…?という内容でそのまま伝えると「そう思うよね!」と即お断りのネゴシエーションをかけていた。 なんか

          2022/12/29-30(Thr→Fri)

          石炭を焚べられている

          この数日、流行病に罹患してしまい床にずっと臥せっている。体温はとうとう40度を超え出し、解熱鎮痛剤をキメても38度台までしか下がらない。それでも不思議なもので、なんだかすごく「下がった!」感があり、体温計を見て絶望し、また具合が悪くなってくる。 蒸気機関車に石炭をどんどん焚べて、焚いて水を引っ掛けてまた焚べて、の繰り返しなのである。 この間、三島の春の雪や歌集、手を付けていなかった河合隼雄などを最初は読んでいたが、個人的に活字が読めるのは38度代前半まで。それより先は横たわ

          石炭を焚べられている

          untitled.

          この人と長く続かないかも、と感じたのは実父が亡くなったその日だ。仮通夜の夜にどうしても斎場にひとりで(ひとりではなかったがひとりきり、だった)居られなくて、帰ろうとするあの人にお願いだから今日は傍に居てくれないかと頼んだのだけど、そのまま帰ってしまって。まさかここまで頼んで(わたしは普段、こういう事を滅多に言わない)帰ってしまうと思っていなかったので本当に寄る辺なさで一杯になってしまったのを憶えている。 その足で彼は海岸線で車を事故って(大した怪我ではない)、この人は肝心なと

          Re:Re:Re

          明日で8年お勤めした職場を退職するのである。 雨の日も雪の日も休めない、自転車を長距離かっ飛ばしてお客様のお世話をする前々職のお仕事は楽しかったけれど流石に呼吸器を痛めてしまい、かかった先のクリニックでなぜか元上司に気に入ってもらい、スカウトされたのがこの職場だ。 いい加減飽きて、退職を決めたらわたしの代打で入ることになった上司の娘さんととても仲良くなり、なぜか二人で退職祝い&送別会としてくれて、シーシャバーで彼女を待つ間にこれを書いている。 振り返ると、別れみたいな事が

          声の距離

          「あなたにもらった、ジャームッシュのパンフレットを見ていたのよ。ちょっと話したくなった」 友達に変わったすきだった人からメッセージがきて、お昼休みの晴れた公園で短い通話をした。 なんの気が向いたのかはわからないけれど、関係性が変わったら頻繁に連絡を取るようになった。 声を聴く、というのは影響力がある。 物理的な距離が離れれば離れる程に。

          声の距離

          卯月

          昨日池袋で試着したTHE RERACSのグルカパンツがすごく良かったなぁ、と思ってゴロゴロしていたら、4ヶ月ぶりの人から突然連絡が、しかも電話がかかってきた。電話が来たのははじめてで、何事かと思ったけどすこし、いやかなり嬉しかった。 古い人間なので、電話というのは不意であればあるほど良い、と思っている節がある。もちろんある程度の関係性があるひと、に限ることではあるのだけれど。 少し高めではきはきした声はいつも耳触りがよく、電話になるとワントーン抑え気味になるようだ。わたしは

          2023/04/05

          恋人が時々、「顔が好き」と言ってくれる。他人に褒められるよりずっと嬉しくなって、思い出しては口角を上げてしまう。 蝶よ花よと育てられたおかげからか、不特定多数からもらう賛辞は特に自分に必要と思った事がない。すきな人が気まぐれにくれる一言のほうがハッとさせられるし、ふとした瞬間にそっと心を温めてくれたりする。 それはもうとこしへに。

          紫陽花少年のアパートメント

          Instagramによると145週前、2020年夏、わたしと息子は紫陽花少年と出会った。 コロナウイルスが流行初頭で何回目かの緊急事態宣言からそのまま小学校は夏季休暇となった。 今はギャングエイジ真っ盛りで自我の塊、俺のやりたい時にやりたい事をやるがモットー化したらしいので大体彼に任せているが、当時はまだベイビーだったので概ねタイムスケジュールはなすがままに動いてくれたものだ。 宿題や授業の進行もなぜか先取りでどんどここなしてくれるので(神童なのかと思った)毎日朝10時

          紫陽花少年のアパートメント