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卯月

昨日池袋で試着したTHE RERACSのグルカパンツがすごく良かったなぁ、と思ってゴロゴロしていたら、4ヶ月ぶりの人から突然連絡が、しかも電話がかかってきた。電話が来たのははじめてで、何事かと思ったけどすこし、いやかなり嬉しかった。
古い人間なので、電話というのは不意であればあるほど良い、と思っている節がある。もちろんある程度の関係性があるひと、に限ることではあるのだけれど。

少し高めではきはきした声はいつも耳触りがよく、電話になるとワントーン抑え気味になるようだ。わたしは高い声の人が好きだ。
去年の誕生日にデートしたとき、お庭の図書コーナーで音読してくれたアンデルセンの人魚姫の絵本を思い出す。

今東京に着いたんだけど、良かったら少しお茶でもどうかと聞かれて、サッと身支度して40分後には車でキャッチしていた。毎回逗留先が数駅西側でとても近いのだ。
「相変わらずフッ軽だね、わたしも見習わないとな」と乗り込むなりリラックスした顔をしてる。こういうちゃっかり感は末っ子っぽい。

少し期間が空いたのが良かったみたいで、新宿に着くまで二人のことを色々話した。
「わたしたちは基本心根が合うので、きっと友達の方がずっと長く仲良くできるね」と言ったら「そうだね、俺もそう思って連絡してみたんだよ」と。本音の時は一人称が俺になる。
こういう付き合いでいいと思う。

パンツのフィッティングに付き合ってもらったら店員さんと二人で脚が長いだのなんだのとすごく褒めてくれたので、財布の紐を緩めてしまった。なぜか端数を出してあげよう!と言い出したので、後からお手洗いに行くふりをしてお礼に珈琲豆を買って渡したら「ほんといつもそういうところあるよなぁ」ってニコニコ受け取ってくれた。

しばらく傷付け合ってばかりだったので、
"ああ、この人とまたこんなに楽しく過ごせるようになったんだな"って嬉しくなる数時間だった。
なんでも話せて時々手を繋げる友達がいるのは悪くない。
あまり人に心を開かない彼が、
「あなたが友達になってくれてよかった」
と言ってくれたのは、初めてすきだと言われた時より嬉しい気がした。
「しばらく持っていてくれる?」
とMoscotのLEMTOSHをダッシュボードへ置いて、「次回はちゃんと早めに連絡します」
ひらひらと手を振りながらホテルへ吸い込まれて行った。
髪の毛、ごりっと剃り込んでいて素敵だったな。

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