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untitled.

この人と長く続かないかも、と感じたのは実父が亡くなったその日だ。仮通夜の夜にどうしても斎場にひとりで(ひとりではなかったがひとりきり、だった)居られなくて、帰ろうとするあの人にお願いだから今日は傍に居てくれないかと頼んだのだけど、そのまま帰ってしまって。まさかここまで頼んで(わたしは普段、こういう事を滅多に言わない)帰ってしまうと思っていなかったので本当に寄る辺なさで一杯になってしまったのを憶えている。
その足で彼は海岸線で車を事故って(大した怪我ではない)、この人は肝心なときに駄目なのだとわかって、父が亡くなった事実よりうんと哀しい気持ちになったのだ。
これから一人でいろんな事を背負って、やらなければならないけれど大丈夫なのか不安になって、初めて涙が出た。
精神的に誰かを頼りにする事が出来なくなった日でもあるかもしれない。

誰かを頼るという事がわからない。

大抵の事は自分でなんとかできてしまうし、頼るやり方というのをもうとうに忘れてしまった。
この人と何となくくっついていたい、という事がたまにあるけれど、それが気持ち的に頼っている、というか寄り添ってもらっていると感じているのかもしれない。

いつか自分ではどうしようもできない心のざわざわが起きて、また大切な人に居てほしい、とお願いしたりするのだろうか?
そしてその人は傍にいてくれるのだろうか。
想像してみると少し怖くなる。

だからわたしはあれからずうっとわたしの事をいちばんに信頼している。わたしは絶対に居なくならないから。23歳の12月、寒い夜にきっぱりとそう決めてしまった。

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