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THINK 02/ゲスト:松澤剛さん(E&Y)+二俣公一さん(Case-Real)

ーーTHINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です."THINK" とは Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベントです.ここではTHINKに参加した人も参加できなかった人も,トークのエッセンスを追体験できるように読み物として再構成してまとめています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度掲載していきます.
(about THINK BOOK: https://note.com/240design/n/ne878f6f6a37e )
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2回目のTHINK 2011年5月28日(土)
ゲスト:松澤剛さん(E&Y代表),二俣公一さん(Case-Real代表)

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今回も貴重なアーカイブから,音声データを聞き直したうえでダイジェストをまとめていきたいと思います.谷尻誠さんがTHINKについて,行為が空間に名前を付けることの実証なんだ,という話を良くします.この時,松澤剛さん率いるE&Yが,松澤さん肝入りのコレクションとして「Horizontal」という商品群をリリースしたところで,Suppose Design Office 広島オフィスの3階がしばらくの間,そのコレクションを展示するギャラリーとして利用されました.その会期に合わせて,松澤さんと,「Horizontal」にも作品を提供した福岡在住の空間・プロダクトデザイナーの二俣公一さんの二人がゲストとして登壇した,という状況です.

ホスト不在でスタート

その時,きっと谷尻誠さんはタクシーの中だった.時刻はトークの開始予定時間を少し過ぎていた.ゲストの二人がテーブルで談笑しながら周りの気配を気にしている.携帯電話で何か話していたサポーズデザインオフィス共同代表の吉田愛さんが,すこし申し訳なさそうにテーブルに移動すると,ゲスト二人に何か一言二言伝え,マイクを持って話し始めた.

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「みなさんこんばんは.お待たせしました.谷尻が飛行機の遅れであと15分くらいかかりそうなんですけど,準備が出来ましたので始めさせてもらいます.本日のゲストは,ファニチャーレーベルE&Y代表の松澤剛さんと,空間デザイン,プロダクトデザインの分野で活躍されているCase-Realの二俣公一さんです,よろしくお願いします」会場は拍手に包まれ,静かに幕を開けた.

松澤さんがまず,自分と二俣さんが今回ゲストに呼ばれた経緯と,全体のトークの見通しを手短に話をして,二俣さんを紹介し,マイクを預けた.

Case-Real 二俣公一氏の「モノの見方」

二俣さんから,E&Yといっしょに制作した家具(4FB,hanmock)やその他のプロダクトデザイン,空間デザインの実例のスライドレクチャーが与えられた.

空間デザインの事例も多く紹介された.二俣さん曰く「僕は,(状況の)細かいところまで配慮して,細かいディテールを作り込んでいく,という仕事が多いですね」と語る.よく見ないと気が付かないような細部の工夫ですっきりとしたデザインが実現されていたり,あるいは,本来は見逃していたような,隠されていたような一面を,スパッと切り口鮮やかに別の価値に転換するようなデザインとして表出させてみたり.そこには,既存の状況を活かしながら,どこをいじればその状況がより日常でハッと美しく浮かび上がるか,という視点でデザインされている.一見ミニマルでシンプルな造形の奥にある「モノの見方」がデザインを通して伝わってくる.

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二俣さんがスライドレクチャーをはじめてすぐに,飛行機の遅れで会場入りに間に合わなかった谷尻さんが登場.ひとことお詫びをして,観客と一緒に聞き役に回る.

二俣さんは自分の紹介を終えると,松澤さんにマイクを預けた.
「今回は,新しいコレクション Horizontal を発表するギャラリーとして,ここ(Suppose オフィス3階)を使わせてもらえることになって,ありがとうございます.Horizontal の説明の前に,会社E&Yとして,どんな思いで仕事をしているかについてまずお話ししたいと思います」

家具屋,と一括りにされたくなかった

「基本的には,我々は家具やインテリアを開発して扱っているレーベルです.レーベルというと,普通はレコードなどに使われますけど,家具のレーベルというのはつまり,世界中のアーティストやデザイナーと協働して家具に落とし込むという,その中に傾向や特徴を見つけ出して編集していく,ということをやっているんですね.日本だとどうしても『家具屋』として一括りにされることが多くて,それに抵抗があったんです」

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そこで,海外の各メーカーの代理店というのでもなく,日本の家具メーカーの代理店でもなく,自分たちでコレクションをつくっていく「レーベル」というスタンスを貫いていると.ヨーロッパでは,家具レーベルという業態というか存在は浸透していて,家具メーカーや,家具屋とはまた別だという共通理解が出来ているけど,日本では,その説明から始めないと自分たちの仕事の意図を分かってもらえないことが多い.また,きっとそこを自分たちの存在を通して問いかけている,ということが出来る.そういう意味では,会社の存在理由がすでにある種の「批評精神」を宿しているということだろう.

ゼロから1,あるいは,1から2に注力する

「たとえば,100という数字を思い浮かべたとき,その数字を達成するには,数を売らないといけないから,ビッグネームを起用する,という発想にしかならない.それで,だいたいどこも,そんなマーケティングの中で動いているけど,それだと,いつまでも時代が更新されないというか,新しいものが見えてこない.日本から発信される新しいものが出てこない業界になってしまう.売れると分かっている古いものを繰り返すだけの業界になってしまうと,20年後にはかなり危ない状態になるんじゃないかと心配しているんです」

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