X(旧ツイッター)にガザの情報が表示されない。イーロン・マスクは屈服したか。

筆者のX(旧Twitter)では、ガザの人々の被害の写真など、親パレスチナの投稿がタイムラインに上がらないようなりました。

以前からの傾向ですが、ついにXは、親パレスチナの投稿を大幅に制限するようになった、イーロン・マスクが屈服したのではないか、と推測しています。


テレビ・新聞の偏り


中立公正を謳っていても、欧米のメディアはイスラエルを応援、アラブのメディアはパレスチナを応援、という風にメディアごとに偏りがあります。

「虐殺された」・「死亡した」

欧米メディアでは、イスラエル人が死亡したときは「虐殺された」、パレスチナ人が死亡したときは「死亡した」と表記したり、イスラエルの子供が死亡したときはニュースにするが、パレスチナの子供が死亡した時はニュースになっていないなどが指摘されています(詳細は以下の記事を参照)。

記事:ニューヨーク・タイムズや他の主要新聞でのガザ戦争の報道はイスラエルを大いに支持している、と分析が示す。定量的な分析によると、主要新聞はガザ攻撃の最初の6週間でイスラエルの報道に偏った報道を行った

最近だと、国際司法裁判所の公聴会の放映について、欧米の主要メディアが、1/11の南アフリカの主張は放映せず、1/12のイスラエルの主張をライブ配信したことが指摘されていました。

CNNはイスラエル軍の検閲を受けていた

また、CNNについては、驚くべきことが明らかになっています。なんと、CNNのイスラエル・パレスチナに関する報道は、イスラエル軍の検閲を受けているに等しいような運用で行われていました(詳細は以下の記事を)。

記事:CNNのガザの報道は、IDF検閲官の影響下で活動するエルサレム支局を通じて行われていた。エルサレム支局は長い間、イスラエルとパレスチナに関連するCNNの記事をすべてチェックしてきた。そしていま、エルサレム支局はCNNの戦争報道を形作る手助けをしている。

SNSに対する規制

テレビや新聞だけでなく、欧米企業が運営するSNSについても、パレスチナの投稿は制限されています。

facebook,instagramは当初から規制

まず、facebook、インスタグラムなどを運営するmeta社については、当初から、親パレスチナの投稿を「シャドーバン」してきました。
こちらについては、人権団体ヒューマン・ライト・ウオッチが2024年12月に報告書を出しています。

Xは当初は頑張るも陥落

Xについては、自由な言論を大切にするイーロン・マスクが運営していることから、当初は、ガザについての様々な情報が表示されるようになっていたと思います。

しかし、「反ユダヤ的」という批判が起こり、Xの大手の広告主が広告を止める、つまり、Xとの取引を中止して圧力をかけるようになります。

記事:「イーロン・マスクがXのオーナーになってから、反ユダヤ主義的な発言を含む彼のコメントに対する批判が高まり、IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止した。」

この圧力を受けて、2023年11月28日、イーロン・マスクがイスラエルを訪問します。

このときから、Xでは、ガザについての情報がタイムラインに表示されなくなっており、そのような指摘が行われていました。

そして、2024年1月22日、イーロン・マスクはアウシュビッツ強制収容所を訪問しましたが、

その直前から、Xで親パレスチナの投稿がほとんど表示されなくなりました。

ガザの被害を伝えるなど親パレスチナの情報提供をしてきたXのユーザーは、イーロン・マスクのアウシュビッツ訪問前に、リーチが激減したことを述べています。

記事:「反シオニストのツイッターユーザー、イーロン・マスク氏のアウシュヴィッツ訪問を前にリーチが激減」

反イスラエルの投稿を探して削除しようとする団体の活動

こういった親パレスチナの投稿が制限されている背景の一つに、イスラエルの関連団体が、SNS上の反イスラエルの投稿を探して次々と通報していく、という活動があります。

記事:イスラエルの団体、戦時中の「扇動的な」コンテンツを検閲するために大手ハイテク関係者と協力していると主張。アイアン・トゥルースのメンバーは、明らかに人種差別的または虚偽の内容から、単にパレスチナ人に同情的であるだけの投稿まで、数千件の投稿に削除のフラグを立てた。

最後に

そもそもインターネットとSNSがなかったら、ガザで何が起きているか、知ることはできませんでした。

ガザにいる人々が自分のスマホで現地の被害を撮影して、Xに投稿する、それを有志が拡散する、という形で、戦争の実情を世界中の多くの人々が知ることができました。

しかし、この3か月強の間、表では、「反ユダヤ的な投稿を規制すべき」「偽情報を規制すべき」という言葉がキーワードになって自由な言論の制限が迫られ、裏では、取引先をなくして資金を止めるなどの圧力がかけられていたようです。

知られると困る人々が報道を制限しようとします。

残念ですが、まだ気概のあるジャーナリストや有志は発信しています。いま何が起きているのか、をできる限り把握していきたいと思います。

参考