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”より良い意思決定”を行うための教科書

こんにちは、独立して3年目の経営コンサルティング、顧問業をやっている松本です。経営や投資を通じての日々の学び、気付きや自分の頭で考えたことをnoteにまとめていきます。

◎ はじめに

今回のnoteでは、個人から組織まで、日々下している『意思決定のメカニズム』を解明していきます。

合理的で、説得力のある意思決定を下すための方法論をまとめることで、読者の皆さんの私生活や仕事に生かしてもらえれば幸いです。

《要約》
・意思決定とは”やり直しがきかない、人、もの、金、時間などの有限資源における調達や配分に関わる実際の行為”であること

・意思決定を行う上でのMUST条件3つ
 1 / 状況を判断できる情報と経験・知識が揃っている
 2 / 正しいロジックで解決策が導かれている
 3 / 解決策へのコミットメントがある

・良い意思決定を行う上でのWANT条件3つ
 4 / 対立があること
 5 / 公平感があること
 6 / 期限があること

・意思決定力の鍛え方、磨き方
 A. バイアスを意識すること
 B. 意思決定の根拠をメモに残すこと
 C. 決断する数を増やし、スピードを高めること
 D. 適切な人からフィードバック(正してもらう)をもらうこと
 F. もし、自分が意思決定者ならばどうするか?を考えること

◎ 意思決定は決してトップだけの仕事ではない

私たちは、私生活においても、仕事においても日々、たくさんの意思決定をしています。意思決定の中には「今日のランチ何を食べるか?」「何を着るか?」など些細なことから「起業するべきか?」「家を買うべきか?」などの人生を左右する重要なものまで大小様々あります。

また、意思決定と聞くと、それは経営トップが行うものであり、一部の意思決定のみが重要な行為で、日々現場で行われている意思決定とは全く別のものだと認識されていますが、それは大きな間違いです。

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組織としての意思決定は、新卒から現場管理者まであらゆる階層で行われており、最も重要な仕事です。

私生活や仕事においてとても大切な行為であり、使用頻度も高い意思決定について、丁寧に説明した教科書がありません。次章から意思決定とはそもそもどんなものか?どんな考えを持って決定するべきなのか?について解説していきます。

◎ なぜ意思決定が最も重要な行為なのか

まず意思決定の定義、特にビジネスシーンにおける意思決定に限定して説明すると『経営リソースの調達や配分を実際に行う不可逆な決断』になります。

・経営リソースとは、人、もの、金、時間といった有限の資源のこと
・不可逆とは、その状態に変化したら、もうもとの状態に戻らないこと
・決断とは、複数の選択肢の中から選択肢を決めて、他を断つこと

上記の言葉に変換すると『やり直しがきかない、人、もの、金、時間などの有限資源における調達や配分に関わる実際の行為』と言えます。

なぜ重要なのか?と言われると以下があげられます。

《意思決定が重要な理由》
・決断前に決して元に戻すことができないから
・資源は無限ではなく、有限であり限りがあるから
・違う選択肢の方がより良い未来の可能性もあるから

冒頭で挙げた意思決定とは、経営トップの仕事と印象付けられるのは、意思決定の難易度や重要性の問題であり、どんな職種、役職においても意思決定の役割や特徴は変化することはありません。

◎ 良い意思決定はどんなプロセスを経て決まったことなのか

意思決定の特徴や役割を理解して頂いた上で、本章では良い意思決定とはどのようなもので、どんなプロセスを経て決まったことなのかについて解説していきます。

まず、意思決定を行う上でのMUST条件を3つ挙げます。

・条件1 / 状況を判断できる情報と経験・知識が揃っている
まず意思決定を行う上で置かれている状況を正しく認識し、分析する必要があります。正しく認識するためには、起こっている事象から大事な情報を引き出し、自分の経験と知識を照らし合わすことで、”解釈”を導き出していきます。

分析については、以下の記事で解説しているので読んでみてください。

・条件2 / 正しいロジックで解決策が導かれている
大事な情報と経験と知識を照らし合わした解釈から論理的思考によって解決策を導いていきます。論理的とは、”解釈”から”解決策”までの思考の道筋は妥当なのか?いきなり解決策に飛躍していないか?情報の確認不足していないか?これらの要件を全て満たした構造になります。

事実→解釈→解決策までの論理的な思考プロセスについては、以下の記事で解説しているので、そちらも合わせて読んでみてください。

・条件3 / 解決策へのコミットメントがある
最後に、”解決策”を実現させるために責任者はじめ関係者全体のコミットメント(やる気・覚悟・決意)が必要になります。デメリットが一つもないない解決策はなく、必ずリスクや不確実性が伴い、決定と同時にこれらのリスクも受け入れる覚悟もセットで考えます。

条件1と2は、解決策における選択の正しさを証明する力であり、条件3は、選択された意思決定を正解にする力、つまりコミットメントを解決策に帯びさせる一連のプロセスになります。

同様に、正解にする力についても、以下の記事で解説しているので、読んでみてください。

次に、良い意思決定を行う上でのWANT条件を3つ挙げます。

・条件4 / 対立があること
対立があったということは、関係者全体で色々と練られた、吟味された結果、選ばれた決断結果ということです。つまり比較対象や比較軸が明確化されて、複数の選択肢の中から、最も合理的な意思決定をされたということになります。

・条件5 / 公平感があること
公平感とは、意思決定の判断基準を明確な形で表しておき、ファクトベース、ロジックドリブンによる議論や対立が推奨される環境であること。また、意思決定プロセスの健全さを測る上で、年齢、性別、役職、経験年数による意見の重み、主張の偏りがないことを重要な情報源として公平さを保つことが大切です。

・条件6 / 期限があること
意思決定に必要な情報といっても、永遠に議論することは出来ない、ビジネスおいて自社都合以外に、市場や競合からの反応や追撃を意識したスピード感とタイミングも非常に大切です。完璧で明瞭な情報や裏付けにかけていた情報源であったとしても、迅速に意思決定を行うスタンスは決して失ってはいけません。

◎ 誤った意思決定を招く罠と回避手段

この章では、”誤った意思決定を招く5つの罠”との”その回避手段”を以下書籍の内容を参照して、解決していきます。


Trap1 / アンカリング(固定化)の罠
アンカリングとは、事前に与えられた数字や情報(アンカー)によって、その後の判断が歪められ、判断された内容がアンカーに近づく傾向を表す言葉になります。自分の意思で判断しているつもりでも、それはアンカーによって定められた範囲内で選択しているに過ぎず、無意識のうちに思考を操作してしまうようなバイアスがあります。

価格に適用したアンカリング効果の例ですが、消費者が最初に目にした価格が20,000円だった際、この数字が基準になって、その後に続く数字との比較や優劣が損得の判断に大きく影響してきます。商品の利便性や必要性とは別に、50%OFFの10,000円と提示されると消費者はとてもお得に感じられます。何か意思決定を下そうとする時、人は一番最初に得た数字や情報にどうしてもこだわってしまいます。

《回避手段》
・意思決定する目的に立ち返り、フラットな視点で、数字や情報を認識して様々意見を求めること


Trap2 / 現状維持バイアスの罠
現状維持バイアスとは、変化を受け入れず、未知なるものを避けて、現状を基準に維持しようとする心理的作用をさします。

人間は歳を重ねるほどリスクを多く抱え込み、結果、自己防衛本能として、現状維持を選択する強い傾向が見られます。意思決定者は、間違いたくない、失敗したくない、成功体験をキープしたい、守りたいとする防衛本能より意思決定するケースもあります。

《回避手段》
・現状の持つ魅力や当時との前提条件が変化していることを留意し、現状を打破や変革という選択肢も吟味すること


Trap3 / サンクコスト(埋没コスト)の罠
サンクコストとは、過去に投資、生産、消費した、取り戻すことができない、回収できない費用をさします。未来に関する意思決定する際、このサンクコストは考慮せず、これから期待される収益やリターンのみに焦点を当てて判断することが合理的です。

しかし、実際はそれまで投資、生産、消費によって失った費用やリターンを惜しみ、これから期待される収益やリターンを考慮せず、非合理な判断のもと意思決定されるケースがあります。

「これだけ投資したんだ」「ここで止めるのはもったいない」「次はうまくいく」という希望的観測や楽観的思考より、動き出した計画やプロジェクトを途中で止めることができず、さらなる赤字に追い込まれる結果になります。

《回避手段》
・利害関係のない人、過去の意思決定に関与していない人の意見やフィードバックをもらうこと

Trap4 / 確証バイアスの罠
確証バイアスとは、自分の思い込みや都合の良い情報のみ無意識に集めてしまい、反証する意見や情報を軽視や受け入れない現象をさします。

先入観や過去の成功 or 失敗体験から、様々な意見や多面的な情報があっても、最初の考えを支持するような情報ばかりが目に付いてしまいます。

例えば、「A型は几帳面」「O型は大雑把」「B型は個性的」という思い込みは、血液型と性格には科学的な関連性はないと証明されているにも関わらず、人をパターン認識する傾向にあります。

《回避手段》
・信頼できる、実績を出している人やメンター、ロールモデルに反対意見や違う視点の助言をもらい、討論してもらうこと

Trap5 / フレーミングの罠
フレーミングとは、キャッチャーがストライクゾーンぎりぎりにきたボールをストライクと審判に判定させる技術をさします。つまり、フレーミングによって、人の解釈が特定の方向に誘導される危険があり、質問のアプローチ方法や問題の提示の仕方によって、意思決定が変わってしまいます。

例えば、
A. このプロジェクトの成功確率は90%
B. このプロジェクトの失敗確率は10%
AとBどちらの説明を受けたら、このプロジェクトに加入したいと思うかは、確率は全く同じですが、Aが大半だと思います。

つまり、客観的に同じ確率、結果であっても、どの状態を基準にするかによって受け取り方が全く異なり、その後の意思決定にも大きく影響してきます。

《回避手段》
・フレーミングによって判断に歪みやバイアスが影響しなかったかよく検証すること

これら全ての心理的な罠は、単独で作用するのか?それとも組み合わさって作用しようが、回避手段は上記のTrapがあること、ハマることを常に意識し、そのTrapにハマらないように十分に気をつけることが大切です。

◎ 意思決定力の鍛え方、磨き方

最終章では、意思決定力の鍛え方、磨き方について解説して終えたいと思います。

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A. バイアスを意識すること
バイアス(偏り)を意識するとは、つまり傾向、偏向、先入観、データ等の偏りをもたらしている思考や判断の前提を常に自覚することです。情報が偏っていることによる認識の歪みがあることを意識していることがとにかく重要です。重要な意思決定を下す際には、このnoteを読み返してもらうことをおすすめします。w

B. 意思決定の根拠をメモに残すこと
決定内容や判断の決め手となった基準や根拠をきちんとメモに残すことです。現時点で答え合わせすることができないため、後に答え合わせができるように必ずメモに残し、何が正しく、何が間違っていたのか?検証できる状態にしておくことが大切です。

C. 決断する数を増やし、スピードを高めること
初めから意思決定の打率を求めるのではなく、まず打席に立って数をこなすこと。正解を求めるあまりに決定する機会を逃したり、決断を先伸ばす傾向にあるため、まずこの場で決める覚悟と基本全て決めるスタンスで望むことで意思決定力の基盤、土台が構築されます。

また、スピードを高めるとは、雑に、根拠なしに決定するのではなく、短時間の中で、限りある情報、知識の中から、いかにベストな結論を出せるか?を問い続ける訓練をすることです。決断数を増やし、決断のスピードも高めることでより強固な意思決定を下せて、量質転化のメカニズムが生まれてきます。

D. 適切な人からフィードバック(正してもらう)をもらうこと
第三者からフィードバックをもらうことで、自分は近視眼になっていないか?利己的ではなく全体最適な、合理的な判断なのか?など俯瞰した立場で、客観的な意見をもらうことで意思決定の方向性を正してもらいます。

ここで大事なことはフィードバック自体の行為以上に、誰からフィードバックをもらうかです。相談内容の精度以上に、相談相手を間違えると全く的を得ない方向や回答をもらうことになります。フィードバック相手の選定には十分に気をつけてください。

E. もし、自分が意思決定者ならばどうするか?を考えること
今、問題に直面している意思決定者の立場となって、自分だったらどう判断を下すべきか?実践的なトレーニングを日々鍛錬することです。自己の体験を最大化することはもちろんですが、他人の経験や擬似体験を通じて、短時間で、少ない情報、未経験領域においても、いかに的確な判断や適切な決断を下せるか?を訓練できる場を意図的に自分で設定することで意思決定力を磨き上げていく方法になります。

よく「二つ上の視座を持て仕事を取り組む」と言われますが、この背景には、その上位の立場で考える機会を増やし、将来自分がその立場になった際の実践トレーニングを積める予行練習ができるからだと解釈しております。

◎ まとめ

今回の記事の内容を、箇条書きにしてまとめました。

・意思決定とは”やり直しがきかない、人、もの、金、時間などの有限資源における調達や配分に関わる実際の行為”であること

・意思決定を行う上でのMUST条件3つ
 1 / 状況を判断できる情報と経験・知識が揃っている
 2 / 正しいロジックで解決策が導かれている
 3 / 解決策へのコミットメントがある

・良い意思決定を行う上でのWANT条件3つ
 4 / 対立があること
 5 / 公平感があること
 6 / 期限があること

・意思決定力の鍛え方、磨き方
 A. バイアスを意識すること
 B. 意思決定の根拠をメモに残すこと
 C. 決断する数を増やし、スピードを高めること
 D. 適切な人からフィードバック(正してもらう)をもらうこと
 E. もし、自分が意思決定者ならばどうするか?を考えること

最後に、Twitterで毎日ベンチャー経営やエンジェル投資を通じての『学び』や『気付き』について投稿しています。

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