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無意味・無価値な分析にならないための大切なこと

こんにちは、独立して3年目の経営コンサルティング、顧問業をやっている松本です。

新卒でコンサルティング会社に入社し、マネージャーを経て、ベンチャー企業にジョイン。役員として数年経営全般に関わり、退任後に複数のベンチャー企業の取締役、アドバイザーをやっています。

経営や投資を通じての日々の学び、気付きや自分の頭で考えたことをnoteにまとめていきます。

◎ はじめに

今回は『分析』について書きます。分析という言葉は、ビジネスの場で頻繁に使われていますが、分析とはどんなことを指しているのかと改めて考えてみると答えに窮する方もいるのではないでしょうか?

特に、情報調査や収集 = 分析として使われているケースは多く、実際混同しがちなものだと感じております。

というわけで今回のnoteでは『分析とは一体何なのか?』を改めて定義して、その上で分析の良し悪しについて考えていきたいと思います。15分程度お付き合いください。

<要約>
・分析とは何か?
 分析とは比較、すなわち比べること
 対象同士を比べて、違いを見つける作業
・分析業務に必要な要件
 1 / 問いが存在すること
 2 / 意味合い(問いの解)を出すこと 
 3 / 調査や集計・整理する作業が伴うこと
・要件を満たしていない悪い分析とは
 1 / 問いが存在しないこと
 2 / 分析結果が調査の中で気づいた感想になる
 3 / 枝に囚われること
・無意味・無価値な分析にならないためのチェックポイント
 Check1:Apple to Appleなのか?比較指標は適切なものか?
 Check2:Why So?とSo What?を繰り返したか?
 Check3:規則性と変化点を発見できたか?
 Check4:論点・空・雨・傘に漏れや飛躍がないか?
 Check5:分析結果を一文で表現できるか?

この記事は、分析業務に携わっている方や分析業務への関心やこれから携わっていきたい方に読んで頂けると幸いです。

◎ 分析とは何か?

まず、分析とは何かについて説明します。一言で分析とは何かと言い換えると、”比較すること”です。

シンプルですが、これが分析の本質であり全てだと言えます。『イシューからはじめよ 』を著した安宅氏も、その書籍の中で”分析とは比較、すなわち比べること”であると述べております。

また、分析業務には、何か漠然と比較をするわけではなく、明らかにすべきこと、すなわち明確な問いが存在します。

そして、問いに対する答えを導き出すためには、対象同士を比べて、比較指標における違いを見つける作業が必要になってきます。

情報調査や収集、そしてそれに伴う可視化する作業は、分析業務の一部であって、それだけでは完結しない業務になります。その理由は、何かと何かを比較しているわけではなく、一つの対象物に対して、情報を集めたり、深掘りしている作業にすぎないからです。

分析業務における一例をここで説明します。例えば、ウサイン・ボルトはどのくらい足が速いのか?といった問いがあったとします。

次にどのくらい足が速いのか?を分析する上で、重要なことが2つあります。1つとは、ウサイン・ボルトと誰を比べるかといった”比較対象の設定”、もう1つは、足の速さをどんな指標で比べるかといった”比較指標の設定”を決める必要があります。

◎ 比較する上で大切な対象と指標
・比較対象(横軸)は、日本の男子高校3年生
・比較指標(縦軸)は、100m走

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以上より、『ウサイン・ボルトは、男子高校3年生と比べて4秒24速い』と意味合いを出すことができます。【補足】男子高校と比較し、違いを見出すことにどれだけ価値があるのか?示唆があるのか?は一旦置いて、分析プロセスのイメージを掴んでもらいたいための事例になります。

この前提のもとで、分析業務に求められるのは、以下3つの要件になります。

◎ 分析業務に求められる3つの要件
1 / 問いが存在すること
2 / 意味合い(問いの解)を出すこと
3 / 調査や集計・整理する作業が伴うこと

明確な問いが存在し、それに対する解を情報収集や集計などを通じて比較しながら導き出していくことを分析と呼びます。それぞれの要件については、このあと詳しく解説していきます。

◎ 分析業務に必要な要件

上記の要件は、分析業務に必要な要件です。これらを満たせていなければ、良い分析とは言えません。それぞれの要件について説明を加えます。

1 / 問いが存在すること
分析には、必ず何かの答えを出すべき問いが必要になります。目に見える課題であれば問いを立てること自体はそこまで難しくありませんが、何が問題なのか分からないような場合も多々あります。

このような探索的な状況であっても、闇雲に情報を集め始めるのでなく、仮説から問いを立てることが大切です。仮説については、以下の記事で言及しているので、そちらも合わせて読んでみてください。

2 / 意味合い(問いの解)を導き出すこと
これは分析後に最終確認すべき内容になります。仮説を持って立てた問いに対する意味合いを導き出して、分析の結論として何なのか?メッセージを打ち出します。

最終メッセージの内容は、自分では問いと解がつながっているつもりでも、客観的にみると論理が飛躍していたり、問いと解が対応していないかったりというパターンがしばしばあります。そのため、第3者から解に対して納得感があるかや論理的飛躍がないかなどフィードバックをもらうこともおすすめします。

3 / 情報調査や集計する作業が伴うこと
分析は、情報調査・集計を通じて、対象を比較することによって行われます。当たり前かと思われるかもしれませんが、情報調査や集計を伴わず、個人の記憶、事実に基づかない調査や情報分類や整理ができていないケースも多く見受けられます。一定の基準や視点・切り口からの情報収集や整理されたものを分析と呼びます。

◎ 要件を満たしていない悪い分析とは

逆に悪い分析とはどのようなものでしょうか。上記の要件がうまく満たしていないものは、悪い分析になります。特に陥りがちな失敗例をいくつか挙げてみます。

1 / 問いが存在しないこと
これは何かを調査や収集はしているものの、 目的や問いを待たずにただ漠然と情報のみを集めてしまっている状態のことを指します。問いに直接貢献しない情報や必要のない集計業務も含まれてしまうため、工数的な無駄はもちろん、報告相手への時間を奪い、分析内容を理解するための思考負荷も増えます。分析に求める問いや仕立てを明確にしないと、時間の無駄に終わります。

2 / 分析結果が調査の中で気づいた感想になる
これは問いに対しての答えではなく、調査の過程の中で発見した気づきや感想で終わってしまい答えに辿り着いていない、横道に逸れた状態のことを指します。もちろん新たな気づきそのものは有用ですが、まずは問いに対する答えを最優先し、その他入ってくる情報はノイズと捉えて分析を推し進める必要があります。また、重要な気づきや新しい仮説は、放置するのではなく、新たな問いを設定し、これに応じた分析をする必要があります。問いと答えを必ず1対1で捉えて、焦らず一つずつ解決していきます。

3 / 枝に囚われること
これも上記で話した問いに対応していない分析業務と似ていますが、例えば、表にすることやグラフにすることなど整理や可視化すること自体が楽しくなってしまい、見せ方やディテールにこだわって、重要な情報収集や分析の考察が薄くなってしまう状態のことを指します。

これらに共通するのは、手段が目的化していることです。分析業務の全体像を見失い、個々の作業のみに集中してしまい、近視眼的な視点に陥ってしまいます。常に分析の問いやどんな答えを導き出さないといけないか?この作業はどこに繋がって、何のためにやっているのか?定期的に確認する必要があります。

◎ 無意味・無価値な分析にならないためのチェックポイント

作業をしていると、どれだけ気を付けていても視野が狭くなり、大元の目的を見失ってしまうことはよくあります。上記のような手段の目的化を防ぐために、以下のような考え方やチェック方法が有用です。是非、参考にしてください。

Check1:Apple to Appleなのか?比較指標は適切なものか?
比較の対象がフェアなものになっているのか、つまり”何と何を比較するのか?”をチェックすることで、ミスリードを防ぐことができます。例えば、2つの農園で作られている果実はどちらの質がいいか?という問いがあったとします。

そこで、A農園のミカンとB農園のリンゴを比較してしまうと、そもそもの種類による味の違いもあることから、問いに対して答えを出すことができないです。問いに答えを出す比較の対象は、リンゴとリンゴというように、同じ属性や性質を持っているもの同士による同一条件を選択しなくてはいけません。同様に比較の指標もどのような点について比較するか、質を評価する上での適切な比較の項目になっていのか?チェックする必要があります。

Check2:Why So?とSo What?を繰り返したか?
Why So思考は”なぜそうなのか?”So What思考は”だからなんなのか?”にそれぞれ言い換えることができます。これは、一つ一つの分析作業が何のために行われているのか問いに立ち返るためや答えに対する納得できる理由付けを明確にする思考法になります。

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目的としては上記のステップと似ていて、単なる感想や、事実の羅列のみになることを防ぐことです。”なぜそうなのか?”を考えることによって根拠に基づく解釈とすることができ、”だからなんなのか?”を考えることで、事実の羅列から、目的から出た解釈を付け加え、分析とすることができるようになります。

Check3:規則性と変化点を発見できたか?
数字の羅列や表ではなく、可視化やグラフに落とすことで、変化点を発見し、規則性を読み解くことができます。なぜ可視化やグラフに落とす必要があるのか?それは規則性や変化点を気づかせてくる有効的な手段のためです。以下に国内出生率と出生数グラフを事例に変化点や規則性とは何か説明しておきます。

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Check4:論点・空・雨・傘に漏れや飛躍がないか?
空・雨・傘とは『空が曇っている(事実)』『雨が降りそうだ(解釈)』『傘を持って行こう(示唆)』のように、観測される事実からその意味を解釈し、行動を決めていくというフレームワークになります。

ここで大切なのは、示唆を導くための上位概念である論点がポイントになってきます。具体的に説明すると、論点が仮に「会社に傘を持っていくべきか?」の場合と「本日開催予定のバーベキューを中止にするべきか?」では示唆の内容が変わってきます。前者の場合は「今降っていないので、折り畳み傘を持っていく」後者の場合は「キャンセル費を払って中止にする」と示唆は論点によって求められる意味合いが変わってきます。

また、自分の分析業務が論点 → 空 → 雨 → 傘における各プロセスのどこで漏れや飛躍がないか?常に意識しながら進めることで、手戻りを防ぎ、価値のある分析ができます。過ちやミスを犯しやすいケースについて以下の表にまとめおきます。

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CASE1: 事実の羅列ばかりで解釈と示唆が不足している
CASE2: 事実から示唆に飛躍し、解釈が漏れている
CASE3: 事実の根拠が浅く解釈や示唆がただの意見や感想になっている
CASE4: 論点がない、または示唆が論点に直結していない

Check5:分析結果を一文で表現できるか?
分析のまとめとして『○○の問いを明らかにするために××を行ったところ、結果は△△でした』のように、問い・分析テーマ・答えの順に短文で表現できるか確認します。

問いと事実、結果が見失われずに一連のものとなっていれば、この文は容易に作成できますが、どこかで問いが見失われてしまったり、問いと対応しない結論になっている場合、このまとめのプロセスで気づくことができます。

実際の業務では分析の最後に行い、イチから全てやり直しというわけにはいかないため、常にこの短文に当てはまる方向で進められているか?を意識し、修正しながら分析業務を推進することが大切です。

◎ まとめ

今回の記事の内容を、箇条書きにしてまとめました。

・分析とは何か?
 分析とは比較、すなわち比べること
 対象同士を比べて、違いを見つける作業
・分析業務に必要な要件
 1 / 問いが存在すること
 2 / 意味合い(問いの解)を出すこと 
 3 / 調査や集計・整理する作業が伴うこと
・要件を満たせない悪い分析とは
 1 / 問いが存在しないこと
 2 / 分析結果が調査の中で気づいた感想になる
 3 / 枝に囚われること
・無意味・無価値な分析にならないためのチェックポイント
 Check1:Apple to Appleなのか?比較指標は適切なものか?
 Check2:Why So?とSo What?を繰り返したか?
 Check3:規則性と変化点を発見できたか?
 Check4:論点・空・雨・傘に漏れや飛躍がないか?
 Check5:分析結果を一文で表現できるか?

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