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「持続可能な社会」は延長線上には存在しない

TAKA(@Murakami_Japan)です。この度、素敵なご縁があって初の著書を出版(祥伝社9/30発売)させて頂きます。今日から5回にわけて簡単な紹介をさせてください(本書の抜粋より)。

現状に対する強い危機感がきっかけ

「SDGs」や「持続可能性」などの言葉がメディアでも多く取り上げられるようになりましたが、このままではいけない、どうにかしなければならない、という思いを抱えている方は少なくないかと思います。私自身もその一人で、現状をどうにか変革しなければならない、という危機感を人一倍強く感じています。

私は宇宙科学研究所(現JAXA)で宇宙工学の研究者として活動した後、外資系投資 銀行のゴールドマン・サックスでM&A(企業の合併・買収)バンカーとして働いてきました。現在は、スタートアップの投資・経営に関わっています。

宇宙工学の研究では、予算を獲得できなければやりたいプロジェクトもできない、ビジネスでないが故の制約を身をもって知り、バンカーでは、日本にはいい技術があるのに、 技術や過去の強みに捕らわれ、経営がそれを活かしきれていない実態を知りました。

現在は、そのような問題を解消すべくスタートアップの投資・経営にコミットしています。一見、バラバラなように見える私のキャリアですが、未来社会を創造し、よりよい社会の実現にテクノロジーやファイナンスを活用するという点で一致しています。

世界が持続可能な社会を求めるように、私も、未来志向で持続可能な社会、未来世代に引き継ぐ産業創出を実現したいと思うようになりました。ただ、そのような未来を実現するのはそう簡単ではありません

その根本原因の一つとなっているのが、古いルールである「資本主義」による支配です。

どうやったら幸せになれるのか。どうやったら社会課題を解決し、持続可能な社会が訪れるのか、どうやったら日本がリーダーになれるのか。

それは、既存の資本主義の功罪を理解し、新しい資本主義の形を皆で求めていくことだと思います。

持続可能な社会の実現が叫ばれていますが、まだその解決策は見えてきません。政府や企業、社会活動家、起業家、意識が高い消費者などこの問題に関心が高い人は一定数いますが、それぞれがそれぞれの視点から問題意識を抱えており、何が問題なのか答えが示されてないように思います。

「資本主義を民主化しよう」「持続可能な社会を実現しよう」というのは、実は日本にもってこいのテーマです。民主化といっても、大多数が賛同する必要はありません。政治との違いはここにあります。政治は、大多数が本当に変革を求めるようにならないと変わりません。

一方、経済の世界は、5%が変われば変わります。少数の支配者に対抗する人が少人数であっても、後にものすごく大きな力になる。一人一人の行動が、既存の資本主義を変え、持続可能な未来を形づくっていくのです。

未来をつくるには、未来世代へどんどんバトンを繋いでいくことが不可欠です。持続性とはそういうことではないでしょうか。

イノベーションの世界ではインターネットが普及し、ハードウェア主体だった二十世紀 から、ソフトウェアやAI(人工知能)、通信が一気に発展し、新たな社会変革のうねりが起きています。いかにテクノロジーを社会実装していくかといううねりです。

同じように金融の世界でも、新たな変革の必要性が叫ばれています。両者の根底にあるのが、このままの資本主義で良いのかということです。
イノベーションと資本主義の変革の必要性がここまで叫ばれる時代は、このままだと人類の存続が不可能だという意味でも、もう最初で最後かもしれません。

宇宙工学の研究というキャリア以後二十年間あまり、私のキャリアは「持続可能性」の追求と常に隣り合わせだったように思います。 宇宙開発は地球や人類を超越した未来のための開発であり、それを現代社会と結び付けるものでした。M&Aバンカーは企業が持続的に事業継続をすることで企業価値の向上を支える仕事でした。

現在の私は日々、スタートアップをはじめとし、数々の企業の経営陣から相談を受けています。そこから感じるのは、彼らは持続可能な社会の実現に向けて尽力したいという思いをそれぞれ持っているということです。彼らはまさに未来を創造する担い手であり、未来や人類のための価値創造に関わる仕事です。

しかし、実際に持続可能な社会の実現に向けて尽力しようとすると、ほとんどの場合が何をどうすればいいかが見出せず、見出せたとしても短期的に利益を創出しなければならない資本主義のジレンマによって、大胆な意思決定を阻害し、身動きがとれなくなってしまいます。

その現状を受けて、既存の資本主義の問題点と、それに代わる新たな資本主義を「サステナブル資本主義」と名付け、国、大企業、スタートアップ、個人それぞれでどうすれば実現可能かの道筋も含めて考えをまとめました。

企業価値の向上と持続可能な社会に向けての課題解決は両立し得るものなのです。本書では、何がその足枷となっているのか、どのようにすればその両方を実現できるのかについて、私の考えを示しました。

各章のご紹介

序章では、近年日本でも注目されるようになったステークホルダー主義や、ESGやSDGsを対象にした数千兆円の投資マネーが行き場を定めかねている実情を解説しています。何がどのような形で持続不可能なのかを理解するための補助線にしていただけたら幸いです。

一章では、既存の資本主義における富の創出メカニズムを紹介しています。資本主義と イノベーションは、物理法則のように決められた法則に沿って動いています。圧倒的な資金力と技術力を得た投資家や企業の富や競争力は維持されやすく、大きな格差を生み出しています。

二章では、地球を一つの株式会社と想定して、現在私たちが直面している状況を説明しています。現状は、一般企業で言えば不正会計を行なっている状況です。この状況を把握すれば、ESGやSDGsを達成するだけでは不十分だということを共有できると思います。

さらに、既存の資本主義では見落とされてしまう「社会的コスト」についても詳しく検証しています。メルカリなど近年飛躍的な成長を遂げた企業や、現在私が投資を行なって いるスタートアップ各社、ソニーなどの実例を挙げながら、紹介しています。

三章では、「投資家」の存在だけでは、持続可能な社会は実現し得ない旨と、それを打破するために必要な行動について、私の考えを示しました。私たち一人ひとりがどのようにすれば投資家マインドを育むことができるのかということについて、詳しく紹介しています。

また、より大きな資金調達を可能にする価値創造のフレームワークも紹介しているので、 投資家視点を持つための参考になれば幸いです。

労働に関しては、既存の資本主義のもとでは給与が上がらない構造を四象限にわけて可視化させています。持続可能な社会を実現する上で労働とはどうあるべきか、労働賃金の格差是正はいかに可能かを、読者の皆さんと一緒に考えられたらと思っています。

四章では、私たちが直面している、1人口の減少、2高齢化社会、3国際紛争問題、4 エネルギー問題、5環境問題、6食糧問題、7貧困問題という七つの大きな社会課題について、それぞれどのような取り組みを行なっていけば良いかを記しています。

実はこれらの問題は、既存の資本主義の影響によって生じている側面が多分にあります。各問題について、そのような視点で捉え、解決への道筋を探っていきます。

五章では、日本が世界をリードし、新たな資本主義を実現する可能性について、記しています。日本は資本主義のリーダーでは必ずしもなく、社会課題にあふれています。しかし一見デメリットだらけに思えるこの状況は、実は大いなる利点でもあるのです。

本書に込めた想い

「サステナブル資本主義」を実現できたら、日本は間違いなく世界のリーダーになれると思います。私は夢物語として本書を書いているわけではなく、投資や経営で用いている合理的、現実的な視点から、すべての提言を示しています。

お金を中心とした資本主義から、人と社会を中心とした「サステナブル資本主義」へどのように向かえばよいのか。企業や国は価値を向上させつつ、持続可能性を高めていけるのか。

本書を通じて、一人でも多くの方に個の力の大きさを感じてもらいたいと思っています。 また、未来に対する可能性を実感してもらうことで、現世代だけでなく未来世代にとって も大切な 「サステナブル資本主義」を一緒に叶えていければと思います。


初の著書「サステナブル資本主義」祥伝社9月30日発売、絶賛予約受付中

www.amazon.co.jp/dp/4396617658

最後に、以下は本書をきっかけの一つとなったnoteです。是非合わせて読んでもらえると嬉しいです。

追伸)noteのカバーの写真は数年前に撮影いただいたものです。新緑の季節だったと思いますが、マスクなしで大きく口を開けて笑い合える日が待ち遠しいです。

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