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過疎地活用から考えるポストコロナ後の社会

TAKA(@Murakami_Japan)です。さて、たった一つのデータから、課題について妄想を膨らませ、どのような解決策があるか、そこからどのような未来を導き出せるか、考えるシリーズ。

今回は、過疎地の面積です。左図が日本の国土における過疎地の面積割合を示しています。右図は参考までに過疎地人口の割合です。そうです、過疎地の面積は60%を占めているのです。想像していたよりも大きかったですか、それとも少なかったでしょうか。


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ざっと人口密度にして16倍の差になります。そりゃそうですよね、過疎地なんですから。過疎地域の定義は意外と複雑なので、興味がある人は総務省などの定義を見てみてください。ざっくりいうと、人口が少ないということだけでは決まっておらず、以下のような基準に照らして市町村単位で過疎地域の認定をしています。

人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域

では将来はどうなっていくのでしょうか。明確な推計値は国の公表データなどで見たことがありません。

正直、何もしなければ、過疎地の人口は減り、より過疎地が増えるでしょう。都心部に人口が集中するわけですから、過疎地の面積割合は少しずつですが、増えていくでしょう。ただ、非常に面積が大きい市町村は既に過疎化が大きく進行している可能性が高いですから、面積的にはまだまだ拡大する可能性があります。参考までに、首都圏(東京/千葉/埼玉/神奈川)の面積は3.6%に過ぎません。

とすると、考えられる未来は3つのパターンで説明されると思います。

1)過疎地が増え続け、過疎地は取り残される
2)過疎地に生産人口は戻らず、過疎地を活用した取り組みが行われる
3)過疎地に生産人口が戻り、過疎地が減少する

シナリオ①:過疎地が増え続け、過疎地は取り残される

現在の想定シナリオはこれです。このまま実質的に(※政府は以前から色々な議論はしていますが)無策で望めば、過疎地は増え続け、日本には有効活用されていない土地がどんどん増えていくでしょう。もちろん環境保全などの観点では望ましい面もあるのでしょうが、インフラが老朽化する中で、適切に環境保全をしていくのも簡単なことではありません。

メリット
・人間が住んでいない土地が増えるため、自然が取り戻される可能性
・都市部にインフラが集中するため、日本国全体で見た場合のインフラ投資の効率性が高まる可能性
生じる課題
・過疎地の自然環境の維持にも費用がかかるため、単純に自然が取り戻されるとは限らない。それ相応の費用負担などインフラの維持も必要になる
・過疎地への移動インフラや、過疎地における医療などのインフラを整備することが費用面でも人材面でも難しくなり、都市部の局所最適にはなるが、全体最適にはならない可能性

シナリオ②:過疎地に生産人口は戻らず、過疎地を活用した取り組みが行われる

過疎地に生産人口を戻すのは簡単ではありません。生産人口が不足する中で、過疎地をできる限り活用したり、経済活動につなげるために、主に取られていたのは以下の2つの施策です。

1)観光業の拡大
これは世界中でトライされている手法です。欧州におけるスペインなども国レベルで取り組んでいる良い例でしょう。ただし、これは生産人口を大きく増やすことにはならず、より経済活動を最大化するための手法と見るべきでしょう。ただし、この方策により土地を有効活用できるという意味では、非常に有効な打ち手と言えると思います。

この方法をとる場合に、非常に重要になるのが、どこから人を連れてくるのか、とその輸送手段のインフラです。どこに人が住んでいるのか、という国全体の設計思想が重要になってきます。

2)農業地の開放によるIターン
これも日本で様々な形でトライされている手法です。日本の自給自足を促し、かつ土地も活用しながら、生産人口を増やし、経済を活性化することができます。ただし、この問題点は農業というビジネス自体がまだ生産性が低いことです。農業自体の生産性をあげられるようにしていくことが大きな課題であり、これには法人化、テクノロジーの活用、新たな販売チャネルの整備などが重要でしょう。販売チャネルなど、貿易や外交にも関わってきますので、国をあげてどう取り組むのかの戦略立案が必要になります。

シナリオ③:過疎地に生産人口が戻り、過疎地が減少する

生産人口を戻すのは容易ではありません。これまで取られていたのは、工場の誘致ですが、これについてまず触れておきます。

工場の誘致
大企業の工場を誘致することで、そこで職が生まれます。職が生まれることで、人口が増え、経済が拡大します。典型的な施策でしたが、グローバル化により生産を国内で行う以外の競争力のある選択肢が増えてきたため、むしろ旧来型の工場が減少することで、過疎化を加速する方向で現在は寄与してしまっています。

この点は、以下の2つの方向性が残されており、今もチャレンジされています。ただし、残念ながら大規模な成功を収めることが難しく、大きく抜本的に生産人口を増やすには至っていないのが実情かと思います。

・小規模工場でオリジナリティのあるものを生産し、オンライン(EC)を活用し販売する(大手企業のインフラに頼らない形で、オリジナリティのある製品を自らが価格設定することで、事業として成立させる)
・ロボットの活用による自動化で競争力のある工場を作る

シナリオ③の新たな選択肢がポストコロナの選択肢である

生産人口を戻すための新たな選択肢は、そう働く場所と住む場所を「デカップリング」させることです。
過疎化の直接的な原因である、働き場所を求めて都心部に出ていくという流れを、真向から変えることができます。

メリット
・やりたい仕事と住みたい場所を自由に選択肢、選ぶことができる。全員がより豊かな人生の選択肢を掴むことができる
・都心部の給与で、地方の生活を送ることで、お金の巡りがよくなり、結果的に日本の富を広く配分することが可能になる
・富が適切に配分されることで、地方のインフラ水準が高まる。それにより魅力がますという好循環が生み出せる
・一定のインフラ整備が効率的に行われることで、都心部における局所最適ではなく、国全体の全体最適がインフラレベルで実現することができる
・人口密度が下がることで新しいモビリティインフラの構築が可能(密ではなく疎なインフラによりMaaSの活用がより容易になる)
乗り越えるべき課題
・企業レベルでの働き方の抜本的改革(出勤をなくす)
・オンライン会議やオンライン商談などに対する社会的抵抗感を取り除く(対面の方がやり易いとか、対面じゃないと失礼という文化をなくす)
・人口の分散型社会に即した物流や移動のインフラの構築(MaaS社会の実装)

日本に必要なのは「ビジョン」

観光、農業、工場誘致などの選択肢を合わせて比較してみましたがいかがでしょうか。これまで既にトライされてきた戦略をこのまま続けることが最適なのでしょうあ。もちろんこの選択肢は引き続き最適化をしていくべきでしょう。

ただ、大前提である、働く場所と住む場所のカップリングをいう「悪の根本」を変えてしまえば、一気にゲームチェンジャーにならないでしょうか。これこそが、国レベルで提唱すべき方針、ビジョンではないでしょうか。

今、日本にかけているのは何かとよく聞かれます。細かい政策の立案力、実行力、判断力色々と言われますが、一番欠けているのは「ビジョン」ではないでしょうか。

デカップリングの選択肢を示しましたが、他の選択肢に比べて、実効性が乏しいと思われたでしょうか。私はそうは思いません、正しい「ビジョン」が示されれば必ず実現可能な未来社会だと思います。

課題に記載していないレベルのことは、少しの工夫とテクノロジーが解決する問題ばかりだと思っています。

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