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食エッセイー情報量の多い豚汁。

寒すぎて目が覚めた。
三時半、真っ暗だ。

身体がこわばっている。
変な姿勢で寝たもんなぁ。
寝袋の中には湯たんぽ代わりにしていた水筒が冷え切っている。
1時間半前は火傷するほど熱かったのに。

二重のズボンに二重の靴下、分厚いヒートテックも二重、スキーウェアの分厚い上着、マフラーにホッカイロ、それでも冬の山は寒い。
テントの出入り口は結露が凍ってキラキラしている。

少し早いが起きよう、どうせ寝れそうもないし。

朝ごはんは五時半から作りはじめたら間に合うだろう。
とはいえ36人前、ちょっとした事にも時間がかかるので油断大敵だ。

前夜の肉を切る作業だってかなり時間を要した。

灯油ストーブをつけた温かいテントにいきしばし身体を温める。
温かいココアがこれ以上無いほど美味しく思えるから、冬のキャンプも悪くないかもなんて思ったり。思わなかったり。


朝は和食にしよう。
そう決めていた。
なぜなら、炊き込みごはんを作りたかったから。

昨日のうちにブリの腹側の身に強めに塩をしておいた。
イメージは塩鮭の辛口よりちょっと濃いくらい。
そのままじゃ塩辛いけど、炊き込みごはんにするとちょうどいい。

この日は安く売っていたベビーホタテも一緒に炊く。
料理の中でも和食は特に季節を意識して作る。

人参、生姜、しめじ、油揚げ、も具材にいれる。
ボーイスカウトのキャンプってのは予算が少なめなので、ブリだけで満足って訳にはいかないんだ。

味付けは塩、酒、醤油、みりん、白だし。
醤油は少なめで淡い色の炊き込みごはん。
味付けの目安は炊く前の水分を飲んでスープより濃いかな?くらい。

炊き上がったら三つ葉をいれてかき混ぜ蒸らす。
2升炊いたので、水加減が不安だったけど綺麗に炊けてよかった。
ちょっぴりお焦げもできたし、パーフェクトでしょう。

評判は上々。
ブリの炊き込みごはんなんて作ったこと無い、食べたことない!って人が多かったけどイチオシです。


漬物はあり合わせの野菜で、大根、キャベツ、きゅうり、赤大根、小松菜、
塩と砂糖で揉んで搾って、柚子の皮、柚子果汁、レモン果汁、醤油、ゴマで味付け。

なんとなく合ったら便利かなと思った柚子とレモンが役に立つ。
こういう時に赤色を混ぜると一気に綺麗になるよね。
茹で青大豆も買っておけばよかったと後悔。

サラダ感覚で食べられる浅漬け、こういう時に重宝するのだ。


さてさて、汁物。
キャンプの朝には温かい汁物が必須なんです。特に冬場は。

この日の汁物は豚汁。
しっかりボリューミーな魚介の炊き込みごはん、それに肉と野菜をたっぷりの汁。
コレがあれば魚や卵を焼いたりしないで済む。
キャンプの朝は忙しいし、なにより食器をたくさん使わないでいいのが大切なのだ。

36人前の豚汁。具材は色々いれれる。

家だと色々いれたくても半端に残すのが嫌で、結局いつも似通ってしまう。
だけど!!この日は多いからね、色んな具を1パックずつ、1個ずついれれる。

まず基本的な部分で豚肉、こんにゃく、大根、人参、ごぼう、白菜、小松菜、ねぎ。
更にエノキ茸、生姜、にんにく、油揚げ、厚揚げ、うるい、豚モツ。

味付けは白だし、味噌、酒粕、醤油、それと七味を少しだけ。

こんな感じかな~
もっと入れた気もするけど、まぁこんなもんでしょう。


作り方は王道っちゃ王道。
こんにゃくは切って塩揉みして下茹で、ごぼうも下茹で、油揚げと厚揚げは熱湯をかけてから使う。

ゴマ油でニンニクと生姜を炒めて香りだして、豚肉とモツをいれて炒める。
お次は人参、ごぼう、大根、こんにゃく。
更に、酒粕の半分とエノキと白菜の茎。

いい感じに炒めれたら水を加えて沸かし、軽くアクを引く。
油揚げと厚揚げもいれる。

そしたら味をつけていく。
残りの酒粕と味噌を汁で延ばしてからいれ、風味付け程度に白だし、それと醤油。
酒粕をいれると甘くなりすぎるので醤油でしめる。

ほんで少しだけ七味をいれる。
これは気づかない程度。あとはお好みで使ってなんだけど、やっぱ寒いからさ。
生姜とニンニクもその為です、もちろん味も大事だけど。

酒粕1:味噌2くらいの比率で使ったのでかなり酒っぽい香り。
もちろんしっかりアルコールは飛ばしたわよ。

で、味が整ったら、小松菜の茎とネギを加え
最後に小松菜の葉、白菜の葉、うるい、をいれて完成!!

かなり品目の多い汁だ。
15品目。
それに呼び方も、豚汁、粕汁、モツ汁、どれも正解。
お揚げだって油揚げと厚揚げどっちもはいってるし、春だからってウルイまで入ってる。

普段の僕はやらないしやれない料理だ。
情報過多、食材の持ち味が生かせない。それに全員に平等に具がいかないのは嫌なのだ。
けれどこのキャンプの豚汁でなら許されると思う。

みんな仲良いし、なにがはいってた!で楽しめるメンツだ。
そして豚汁というのはカレーと同じで大抵の具材を包み込んでくれるんだ。
さらに酒粕のクリーミーさのおかげで包容力があがっている。


それで味はどうだったって?? そんなん美味いでしょうよ。
ちょっと味噌が足らなくて焦ったけど、醤油とか酒粕でなんとかなったわよ。
作った俺が言うのも変化もだけど色んな具が嬉しかった。

王道の大根やごぼうの美味さはもちろん、たまにいるモツ、厚揚げ、うるい、みんな良い味。
一口一口違う味わいってのは良い。

そしてなにより汁が美味い。
多種多様な味が混ざり合い、それらを味噌と酒粕がまとめあげる。
いいチームだ。

ブリ飯を混ぜる自分。

ただ、ちょっと作りすぎた。
大体2リットルくらい余った。

その日の昼は餡掛けちゃんぽん、なんと56人前作ってスープが少し余っただけというドンピシャっぷり。
少しといっても大体5人前くらい。

うむ、どうすっかな~
とか考えていたが、キャンプの片付けをしながら食べる事にした。
洗い物を減らしたかったし、もうなんかいける!と思って豚汁の鍋にちゃんぽんスープの余りもいれちゃう。

コレはちゃんぽんのスープ20人前

豚、キャベツ、しめじ、もやし、ニラ、ねぎ、たけのこ、小松菜、コーン、かまぼこ、あさり、えび、いか、、、が追加された。
味付けは中華スープにオイスターソース、醤油、ゴマ油、胡椒、さらにはトロミ属性まで追加。

こりゃあもうカオスだ。
26品目の豚汁だぜ?八宝菜の4倍以上。
出汁だって具から充分出るのに、白だし、中華出汁、オイスターソースまで。

味付けは味噌に酒粕、醤油に七味にゴマ油、黒胡椒まで。
まさに自由型。情報量の多い豚汁だ。

ノリと勢いで合わせたけどこれが意外にも美味くってね。
流石は味噌と酒粕、あんたらの包容力は凄いわよ。

料理を始めた小学生の頃、あの頃はこうやって色々いれてみたり、混ぜてみたり、そういうのをたくさんやっていた。
もちろん失敗も多かったし、酷い料理もたくさん作った。


最近はそれなりに分かるようになったさ。
これにこれをいれたら合うとか、脳内で味や香りをシミュレーションできるようになってきた。
でも、だからこそ挑戦ができなくなってるのかもな。
そんな事を考えたり、考えなかったり。

ま、なにはともあれ失敗を恐れずにいきたいもんですね。
どうしようも無い料理は作りたくないけど、想像つかない物を作る方がきっと楽しい。はず。

包容力のある声、好き。


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