食エッセイｰとっても美味しいありふれた煮物。

人生で一番美味しかった煮物かもしれない。
それほど美味しい物に出会えてしまった。

ありふれたイカと里芋の煮物なのだけど、それにしても美味しかった。

お店で食べる煮物はたいてい美味い。
冷凍だとかパックだとか、そういう煮物だってある程度は美味しく仕上がっている。
だけれども、もの凄く美味い煮物に出会えることは多くない。とっても希少だ。

そりゃ高級料亭とかで食べるとさ、お出汁の効いた色の淡い上品で美味い炊き物に出会える。
そうじゃなくって、ありふれた甘辛い茶色い煮物！！あれの美味しいのに出会える機会って多くないでしょう。

そもそもありふれた煮物は大抵が及第点の美味しさだ。
美味しいけれど特段衝撃を受けることは無い、インパクトのある場合は具材や味付け、組み合わせに特徴があって、ありふれていない煮物になっている。

だからこそ普通の物を衝撃的にするというのは難しい。
もちろん素材も大事よ、けど重要なのは塩梅。
火入れ、具の比率、味付けの濃淡、そこらへんの塩梅が難しいんだぁ～

出会えたのは飯田橋。

3ヶ月ぶり2度目の来店。居酒屋秋刀魚。
前回は武道館ライブの前に1杯呑むだけだったので、今回はしっかり腰を据えて呑む。

この店は名前の通り秋刀魚を推してる店で、和歌山の郷土料理(発祥は静岡？)の秋刀魚寿司が東京で唯一食べられる店である。
日本の古き良き居酒屋。

｢お通しは2種類あるけどどっちにする？｣と聞かれ友人とひとつずつ頼む。

しらすおろし、ほたるいか。
なんっって粋なお通し！！
季節の魚介をシンプルに最高に美味く食べさせてくれて、なによりチビチビ食べて酒が進む！！！！

この日は不在だったが、糠漬け担当はおばあ様。
良い糠漬け。絶妙に癖を残しつつもあっさり。良い塩梅。
きゅうり、人参、かぶらってのもいいよね。

名物！秋刀魚寿司。
こりゃあ美味いわよ。
しっかりめの塩と酢で締められた秋刀魚、甘めのシャリ、そして挟まっているシソ。

サバの棒寿司とテイストは近いのに別物。
あっさりしてるけど旨味と塩気は濃いめ。しみじみ酒に合う。

斉藤哲夫さんの名曲”さんま焼けたか”を口ずさんでしまうのは仕方ない。
さ～んま 焼けたか 粋な親父の声がする。

そしてびっくらこいたのがコチラ！！芋とイカの煮物。

友人が食べたいと頼んだ。
正直そこまでの期待をしてなかった。美味いだろうけど知ってる範囲だろう。ってね。

見た目は想定通りの物だった。
イカの胴体がなく下足と頭回りだったので、刺身で使わない部分かな～とか思ってた。

けど食べると衝撃。
これほど完成度の高い煮物はそうそう無いであろう。
しっかり染みた里芋、イカはしっかり煮込まれた柔らかさ、煮汁は甘すぎず辛すぎずでイカの良い味がでててアテに飲めるギリギリの塩味。
芋は角が少し崩れはじめたくらいの絶妙な煮込み具合。

僕だったら柚子の皮とか三つ葉とか、ほうれん草とか、そういう色味や香り物を仕上げにいれたくなるが
これほど完璧な煮物にはなにもいらない。邪魔なくらい。

あぁなんでこんなことできるんだ。。。

きっと作り慣れている人からしたらそんな難しい事じゃないんだろう、いつもの感じに作っているだけなのだろう。
日によって味のムラもあるだろう。たまたま美味い日だったのかもしれない、けれど美味かった事に変わりは無い。

そこまで期待してなかったからってのもあるのかもしれないけど。
でも美味かったなぁ～
料理人の友人と2人で目を合わせて驚きを共有した。

その日はホルモン焼き、秋刀魚、シュークリーム、鶏鍋。という大満足コースだったが一番印象に残っている。

刺身も美味かった。
秋刀魚寿司を頼んでるのに刺身でも青魚を選ぶのは俺と友の趣味。
青魚が好きすぎる。

サバのレアな〆加減、コハダに挟まれたシソとガリのアクセント、旬ど真ん中のアジはそのまま。
シソの下には海藻でツマ、こういう所も素敵。なんて良い刺身～～

で、アジフライも食べちゃった。
さくさくふわふわ、居酒屋のアジフライ大好き。
青魚重ねますね。美味し。

芋の煮物が美味すぎて肉豆腐も追加してみた。
うん！！これも美味い！！
芋の煮物ほどインパクトはないけど美味い！！

期待しすぎたからかしら？
ま、いいわ。日本酒が進む進む。

あ～～良い店だった。
こういうお店が地元にあったら通うんだけどなぁ～

近所の人や、近所の会社(だと思う)の人達がわいわいしてて、すっごい良い店だなぁと。
人気になりすぎないように、けど儲かって存続してて欲しいなぁ。

あぁまた行こう、嬉しい事にまた行きたいと思う店がどんどん増えている。
幸せな美味しさ。

ジンジャーエール飲みたくなる季節が近づいてきましたね。