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2021年11月の記事一覧
短編小説|ディープナイトコンビニエンス
隙間からギラリと反射しているそれは、刃物であることは間違いない。数秒だったか数十秒だったかの後、心臓の鼓動が倍になった。
「えぇ、うそだろ…」
おれは自分の意思とは無関係に、顔が引きつっているのが分かった。
「一連の事件の犯人は、いわゆる刺身包丁を凶器として使用しており、警察は現在…」テレビからは、最近起きている連続殺人事件のニュースが流れていた。
※
いつもの時間、いつものコンビニにお
ショートショート|しゃべる思い出
「ここ、ぼくの秘密の場所なんだ」
「わぁ、素敵ね」
海沿いの公園で、二人はベンチに座っていた。海面をはさんで向こう側には、高層ビル群のイルミネーションが見える。
湿った潮風が由美子の髪を揺らし、茂の鼻先を吹き抜けていった。
「由美子さん」
茂は汗ばんだ手のひらを握りしめて言った。
「は、はい」
由美子も緊張している。
「ぼ、ぼくと・・・」
そのとき茂の耳から甲高い声が漏れてきた。
「懐
小説|あの頃のように
茂が休日出勤に疲れ切って帰ると、妻であるリカが悩ましい顔でキッチンに立っていた。
「どうした、難しい顔して」そう言うと、茂は手に持っていた背広を椅子の背もたれにかけた。
「別にどうもしてないわよ?」リカの眉間からシワが消え、いつもの笑顔に戻った。
「どうもしてないのか」
「ええ、どうもしてないわ」
「そうか、どうもしてないんだな」
「どうもしてないわよ」
茂はリカを五秒ほど見つめると、背広