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ショートショート|しゃべる思い出

「ここ、ぼくの秘密の場所なんだ」
「わぁ、素敵ね」 
 海沿いの公園で、二人はベンチに座っていた。海面をはさんで向こう側には、高層ビル群のイルミネーションが見える。
 湿った潮風が由美子の髪を揺らし、茂の鼻先を吹き抜けていった。
「由美子さん」
 茂は汗ばんだ手のひらを握りしめて言った。
「は、はい」
 由美子も緊張している。
「ぼ、ぼくと・・・」
 そのとき茂の耳から甲高い声が漏れてきた。
「懐かしいなぁ。結婚詐欺やってたとき以来だから、7年ぶりか。どんな女でも、この夜景を見せるだけで簡単に落とせたなあ。あいつら元気かな、おれのことなんか忘れて頑張って生きてほしいよ。ナッハッハ」
 茂の顔から血の気が引いた。
「違うんだ、こんなのデタラメだ! いや、デタラメじゃないけど、僕は心を入れ替えて本当に君のことを・・・」
 すると、また違う甲高い声が聴こえてきた。
「ここ懐かしいなぁ。私が殺した元夫たち、まだそこに沈んでいるかしら」


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