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突撃!初見の昼ごはん(生姜味噌編)

カウンター椅子の座面はボロボロ
内装は決して清潔とは言えない


調理場はセンターに配置され
それを取り囲むように
カウンターや座席がある。

厨房のダクトは油まみれ
カウンターのベタツキも
気になるところだ。

この時期は半袖を
装備していることが多いので
カウンターに手を下ろしたときに
腕に「ペタァァ」とくるのは
我慢ならない。

ところでさっきから
尻が落ち着かないのだが
何故かね?君。
わかっているだろう
座面が破れているからだよ。

店内の客はほとんど男性。
幹線道路に面し、住宅地を後ろに構え
コンビニが目の前、斜め向かいに
モ〇バーガー様。

年齢や性別にかかわらず
ウケそうな立地だが
女性客の姿が見当たらないのは
完全に店内の汚さにあるだろう。

何処で勝負するのか

ここまでの段階でラーメン店としての
あるあるネタはクリアしている。
こういった、店内を気にしないような
ある意味、無骨さをもっている店は

味で勝負!いいから喰らえッッ!

などというスタンスのところもあるので
別の意味での期待感はあった。
そうさ、ファミリー層なんていらねぇんだ
ただラーメンが好きな奴が集まれば
それでいいんだ。
俺たちが求めているのは
結局、味だろぅ?
行こうぜ
ピリオドの向こうへ!

店主の心意気を感じ取り
平静を取り戻した私は
ふと、上を見上げた。

見上げてしまった。

カウンターの上には所狭しと
色紙が並んでいたのである。

いや、それが悪いとは言わない
過去にもそういうお店はあったし
広報として取材を受けざるを得ない
状況もあることだろう。

しかし、なんだ、その、

微妙なラインナップ。
それはあれか?本人が「うまい!感動しました!色紙置いてっていいですか?」となったのか?違うだろ絶対。無理やり書かせやがったな?大食いyoutuber?地方テレビアナウンサー?〇部リーグスポーツ選手?知らんのよ!ググらなきゃ絶対わからんだろ!それを貼って何の宣伝効果があるというのか!?ローカルラジオパーソナリティも書くとき恥ずかしかっただろうよ、ほんで達筆かい!!!もえあ〇、は全国区の大食いモンスターなんだからサインはもっと本気出せぇぇい!

色紙をボンヤリと眺め
そんなことを考えながら私は

濃厚味噌を注文した。

味噌ラーメンは3種類あり
生姜と、煮干しと、エビがあるらしい。

震えながらも生姜を選択。
エビエキスがベースに入ってないことを
店員に確認し、オーダーした。

これも後で知ったことだが
どうやら麻婆麺と濃厚海老坦々が
人気のお店らしい。
甲殻類アレルギーの私には
ハードルの高いお店。

濃厚味噌生姜玉葱を添えて

ラーメンに長ネギではなく
玉葱を入れるのは
食感と辛味と甘味を
簡単に足せるので、白髪ネギを
作れない不器用な店主の場合
玉ねぎを安易にブチ込む傾向が高い。

プロセッサーに入れれば
バイトくんでも簡単にみじん切りが
出来上がるのだから。

ほうれん草メンマ玉ねぎすりおろし生姜

確かに濃厚な味噌ではあるが
そこに溶け込む生姜が良い!

リッチな味わいの中に、
クドさを払拭させる生姜のフレッシュ感。
スープを飲めば飲むほど、身体の中に
「・・・スーーーッ」と染み渡る生姜エキスが
全身を温めてくれる。
おかげで麺を食べる前に汗だくだ。

ガッシリ太麺でごわす

麺はモチモチと食べ応えのある太麺。
これに濃厚味噌が絡まり
噛んでしまいたいような
噛まずに啜りたいような
食べる人を悩ませてしまう仕様だ。

意を決して麺を噛んでみると—

「ムチッ♪」

弾力のある麺からは確かな小麦の主張を感じる。麺自体のしっかりとした味わいが、濃厚な味噌と爽やかな辛みを与えてくれる生姜とマッチして抜群に美味しい。ラーメンではスープが命といわれることが多く、各店が精魂込めて煮込む至高のスープは、店主が数多のライバル店に示す完全無欠のアイデンティ。
なのかどうかはわからないが、
この店は麺とスープのバランスが良い。

濃厚味噌(生姜)に偽りなし

今回のお店は再来店リストに入るだろう。

だが、やはり
せっかく美味しいラーメンなのに
店内の汚さで損をしていると思う。

麺上げをしている若い兄チャン
配膳している学生の女の子
両方を行き来するおそらくベテラン
3~40代の美しい女性。
目の前の仕事に手いっぱいで
店内の惨状を気にかける余裕はなさそうだ。

グーグルの口コミや、食べログを見ると
昔は名店として名を馳せていたことがわかる。

今はランチに並ぶ行列もない
アブラマミレで
イスヤブレの店だ。

もし、汚くてもいいなら
「チャレンジしたい」という方がいたら
私は店名を明かすことができる。
だって味は美味しいのだ。

但し、行くときはジーンズを着用するのが
いいかもしれない。ここは、破れた椅子の座面が
初見の客の太ももを遠慮なく突き刺す
オススメの店なのだから。

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