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69.読書を通して考えた「いのち」のこと

私の読書意欲には波がある。
本を読み進めていて、どんどん内容が入ってくる、もっと読みたい、早く読みたい、と読書欲100%の時もあれば、今ちょっと活字入ってこない、疲れた、眠い……なんて時もある。大体、その波は数日間の間でコロコロ変わっていくから、結局のところ読書が習慣化されていることに違いはないのだけど、体調とか気分で左右されることもある。

割とこの二月、三月は読書欲が70~100%を推移しながらも読み進めていた。物語、エッセイ、ノンフィクション、怪談、ジャンル問わず手に取ってみたり、兼ねてから読みたかった本を開いてみたり。それぞれの作品を読むには、タイミングがとても大事。その時々で感じ方や捉え方もガラっと変わっていくので、いくつになっても読書とは付き合っていきたい。

最近読んだ本を振り返ると、「いのち」というテーマが共通していることに気が付いた。もちろん、それぞれ切り口は異なるのだけど、色々な人の生き方や選択を通して「いのち」について深く考える作品であったこと。

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吃音 伝えられないもどかしさ|近藤雄生

以前、私が通信大学で講義を受けていた一科目の講師を務められていたのが著者である近藤雄生先生。講義の中で自身の著書について紹介されていたことにより、本書を手に取る機会となった。

「吃音とは?」という知識から読み始めて知った、当事者の気持ちや関わる人々の思い。胸が詰まりそうになりながらも読みきり、読了後しばらく考えた。吃音の特徴である、原因や治療法、改善や症状など全てにおいての「曖昧さ」、そして他者とのコミュニケーションに関連して生じる「他者が介在する障害」は、理解がされにくい故に当事者が孤独に陥り、本書にもあるよう自ら命を絶つほどに追い込まれ苦しめられるものであるということ。

吃音への理解が広がりさえすれば、吃音のある人だからこそいまの時代に果たせる役割があるのかもしれない、と。

私も本書をきっかけに、吃音について知った一人である。当事者にとって「吃音にとらわれない社会になるように」という著者の願いや、多数の関係者の取材を重ねて綴られたこのノンフィクションが、より多くの方に届くように私も願っている。

夏物語|川上未映子

2020年本屋大賞7位として話題になった、とても有名な作品。
AID(非配偶者間人工授精)という重くて深いテーマについて、関西弁やユーモアを交えながら、決して軽々しくも重々しくもない絶妙なバランスで描かれている。家族観や生殖倫理について考えさせられる繊細な物語。結局、何を決断し、何を諦め、どう覚悟して、どのように生きていくか、というのは、性別問わず自身で選択していくということで、その選択に間違いなどないし、結果論ではないけれど、ちゃんと形になっていく。内容はとても壮大なのだけれど、読み進めている内に自分の悩みや迷いにも向き合ってみよう、という気持ちになれた。

人生の旅をゆく|よしもとばなな

言わずと知れた、よしもとばななさんのエッセイシリーズ第一弾。
著者が世界各地を旅して感じたことや、この毎日が既に旅であるという視点から描かれた日々のことが細やかな感性によって綴られている。何事もなく毎日を送っているけれど、この時間は有限であるということを気付かせてくれる内容は、読んでいてちょっと切なくなる。だけど、悲観的に終わらないのがばななさんの素敵な文章で、気付きと同時に朗らかな気持ちにさせてくれるのだ。

人生は自分のもので、そして思い出を……絶対に人にはゆずることのできない、自分だけのものすごい、でっかい、たくさんの、かけがえのない、びっくりするような、お墓に入るときににんまりしちゃうような……思い出を作ろう!

そうそう、いつかお墓に入る時、何も持って行けないんだよなぁ、そんなことに気が付いた。その時に自分の大好きな人たちや、今まで関わってくれた多くの人の笑顔を覚えていたいなぁ、と思ったし、ばななさんの書かれる通り、思い出だけはどこにでも持って行ける。今更だけど、とても素晴らしいエッセイに出会えた。

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異なる視点から考えさせられた、それぞれの生き方や選択。こうしてまとめていると、心がずん、と重くなるような感じがして、だけどそれだけ素晴らしい作品に向き合えたような、深い読書ができたのだと思う。次月も頭をあちこち動かせるような本に出会えますように!

おわり

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