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格闘ヲタ一代⑤

少林寺拳法部編の続きです

まず、関西の大学は一年生、二年生を一回生、二回生という呼び方をします。一回忌みたいなもんですね。縁起悪。

一回生の頃はもうとにかく練習がしんどいですね。通常時は毎日稽古、夏休みは二週間は午前体力強化、午後技術強化で構成される強化練習。そこから一週間の合宿だったように思います。大学の夏休みは二ヶ月間あるんですけど、一ヶ月しかなかった印象ですから。

冬休みも稽古あった気がしますね。

寒稽古という寒い日に川に入ってやる伝統がありました。一回生の時に雪降ったの覚えてますね。雪の降る中、膝までの浅い川に入って基本突き蹴りやって、おんぶダッシュして、その後腹筋や拳立ても普通にやるんですが、想像してる通り、顔がジャバジャバ浸かります(笑) 帰りに歯がガタガタ鳴っていたのを覚えています。

そもそも、裸足に胴着だけで寒いんですから。同期の奴は唇が紫で、顔も血の気が引いてギニューみたいになってました。

そこから部室に帰ると入門式の時に使った清酒を飲むんです。体温下がってるんで。そしたら、みんなベロンベロンだったの覚えてますね(笑)

強化練習もキツいですけど、合宿がキツい。

一日午前、午後の二回練習があるんですけど、何せ一回生は朝早く起きて布団を畳んで宿の飯を並べる手伝いをする。並べ終わったら上級生を起こしに行く。上級生がノソリと起きたら上級生の布団を畳む。失礼しますと合掌礼をして部屋を出て、食堂前に並ぶ。上級生が主将、副将、幹部、二回生の順に入る。全員入ったら一回生も入ってすぐ上級生のお茶とご飯を盛る。上級生は横一列、その向かいの列は横一列一回生。もちろん一、二回生は正座。三回生はあぐら。

まず主将が「瞑目合掌!」と言うと、みんな目を閉じて肘直角の合掌「いただきます!」と言うとみんな「いただきます!」と復唱する。そこから三回生は食べ始めます。「足崩していいよ」と言うと下級生は崩していい。「食べろよー」と言われたら食べる。しかし、食べている間も話はしてていいが、お茶が無くなるかご飯が無くなるか見てないといけない。無くなったらすぐ「注ぎましょうか」と言う。「要らない」と言わない限り「頼むわ」と言われる限り注ぐ。終わったらまた「瞑目合掌!」と言われて合掌。「ご馳走様でした!」を復唱。そして上級生はまた、順番に出て行く。下級生は直立し、下腹部臍下丹田の前あたりでデパートガールのごとく手を結ぶ决手構えで立って見送る。出て行くと自分達の残りを掻き込み片付ける。

昼間も同じ、夜も同じ。夜は練習が終わると同時に幹部の部屋を訪れ、胴着の洗濯物はないか伺いを立てる。夏汗だくなので、まぁ必ずある。それを洗濯して干す。上級生のから洗って行き、最後に自分達のを洗う。田舎だと二層式しかないので、当番は洗濯機の前に立ちっぱなしになってしまう。

ただ、私達の一回生の頃は更にキツかった。何がキツいかと言うと「船木誠勝のハイブリッド肉体改造学」を読んだ先輩があろうことか「下級生全員の肉体を一週間で変える!」と言い出して、下級生には宿の飯は食わさず、デカイ鍋に調味料は味噌お玉に半分だけ、後は野菜と鶏のササミだけという食事を強いたのである。

極限まで体脂肪を削りたいと言い出した。

ボディメイクの大会に出たりする今考えても、めちゃくちゃなメニューである。

極限まで調味料を抜きたい。スポーツドリンクやお菓子もダメ。水だけ飲め。

明らかにエネルギーが足りない。今でもトレーニングするなら炭水化物は絶対抜くなと言っているが、明らかにエネルギー不足でまともに動けないのである。動けないと怒られる。調味料がないから味がない。不味い。毎日だから飽きる。残すとミキサーにかけて飲まされる。まだ鶏肉や野菜の粒々が残った味のないドロドロの液体を飲まされた。おかげで私は飲み物ならばまずくても飲めるようになった。塩を足すのもダメ。

真夏である。よく誰も倒れなかったものだ。エネルギー、糖分、塩分、何も足りていない。それで、真夏に午前と午後練習する。監督である先生は途中から来て練習を監督し、宿やその他は別なので知らない。よく考えたらめちゃくちゃ危ない事をしているが、それがあったから私は大会前の減量がそこまで苦ではないのだろうか。

宿から車で15分ほど離れた体育館で稽古するのだが、全員マイクロバスに乗れないので、下級生は先に行ってモップ掛けなどして、防具を全部並べて上級生を待つ。往復30分で上級生が来る。バテバテの我々は、ダッシュでモップ掛けをして、ダッシュで防具を並べる。凄まじい集中力を発揮する。そして10分ほどで作業を終えると体育館の板の上で大の字になって寝る。20分ほどで車の音がする。起きて直立し、結手構えで待つ。

それを繰り返していた。少しでも休まないと動けないのだ。朝だけパンと卵とプロテインを食べていいとされていて、給食に出るような真ん中をパキッと割るとジャムとマーガリンが出るものがついていた。片付けの時に余りを捨てずにとっておいて、パキッと割ってそれをすすった時もあった。胸肉の皮を剥ぐ時に捨てずにコンロで炙って、塩を振り、みんなで一枚ずつ小さい皮を食べた。脂もカロリーも足りてないのだから、そうでもしないとダメだったのだ。私は肉の脂が好きではないし、鶏皮も鍋に入ってるブヨブヨのとかは好きじゃない。それでもいいから食べたいと思うほど極限でした。 だって練習は一向に緩くならないんだもの。空気椅子してる時にめちゃくちゃ重たい先輩が座って来た時は死ぬかと思いましたが、潰れたら本当に死ぬだろうし、息があったらトドメ刺されるかもしれないので、踏ん張りました。

合宿は最終日に午前に乱捕り大会があります。午後にスーパー基礎体力というアホみたいな回数の筋トレをして、打ち上げです。

打ち上げは、近くの銭湯〜焼肉でした。

とにかく我慢していた我々は爆発します!

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