17. さよならと言えるとき
そう本気でおもえるまでに
どれだけの日をすごしただろう
若気のいたりで入れたと後悔している
タトゥーのような
消すことはできないし
ひとに見せることもできない
ほこることもできない
そんな一生背負う傷だと おもってた
でも それも
ただ
だんまりきめこんでいた 『時間』 が
それにほころびをつくり、くすませ、あせさせ
その残渣が 幸か不幸か 偶然か必然か
胸の穴を不細工ながらに
ふさいだ
もう何も感じないし
すきま風が不景気な口笛を鳴らすこともない
ふりだしに戻っただけのこと
だけど
その後を、たとえ数日でも手にできるのなら
僕にある残りの時間すべてはたいてもいい、そんな
無から有が生じる、って あるんだね
これがきっとほんとの初恋
今はそう
台風一過の朝
もぎとられた木の枝、やわらかな葉をしきつめた緑の絨毯 一面
散らかった新聞紙、空き缶 どこからか飛んできたポリバケツのふた
そこかしこ 雑然としていて
でも
せかいが朝日にやけにキラキラして
北東へふきぬける風が
夜にぬれた物語をきれいにさらい
あたらしい一ページが
さわやかにはためいている
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